まりい・あんとわねと
紫鳥コウ
上
三毒とは
羅城門から見える朱雀大路は、今が
深い秋の夜風は波のように吹いている。
男の運命は刻一刻と迫っている。人命を盗ったならば、人命を失うのが天が下の摂理である。無論、この男にはconfessio(告解)の相手などいない。救いとなる何者をも持たない。宿命を宿命のままに引き受けなければならないのである。
筆者は先ほど、「不幸にも未だ、追手の姿はない」と言った。しかしそれは、男に同情をしているからではない。
筆者の手元にある記録によれば、
また、同作者の別の記録に拠れば、「まりい・あんとわねと(ママ)は、
又、別の作者の記録に拠れば、「まりい・あんとわねとは、金色の髪、碧色の眼、朱色の唇、純白の肌……それら全て、陽光がなくとも光沢を帯び」ており、「彼女の若かりしときのことを推測すると、天が下でも類を見ない美女であっただろう」という。
そろそろ話題を男のことに戻そう。男は有象無象の若侍の中のひとりである。のみならず、epicurean(快楽主義者)だった。この若侍に関する記録は少ないが、『
その日の夜――それは、月明かりが、
そして、或る一悶着があり、若侍は女を斬り殺したのである。しかし、その一悶着というのは、史料を紐解いても
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