第2話 寒さの只中で
二人は寒さに蓑の下で震えてながら眠っていた。いや、少なくとも巳之吉はまだ眠れずにいた。
そんなときである。
頬にあたる雪風で目が覚めると、戸が音もなく開かれており、向こうからは激しい雪が叩きつけるように部屋に入り込んでいる。その寒さなのに、薄手の白い装束(宮中の人間が婚礼の際に纏うような、美麗かつある種の妖艶さすら湛えた純白のもの)をまとった女性がいた。どうやら、老人に凍えるような白い吐息をかけているようだ。
青年は飛び起き、老人と女の間に腕をさしのべて遮る。
「何をするのですか」
冷たさに腕が凍ってしまいそうだ。
「お前は若いから見逃そう……お前は冷凍保存されたわたしの息子にそっくりだ。だが、今夜見たことを誰にも言うでないぞ。約束をお守りいただけるか? 破られてしまうと、雪女としての私の性質…人の生死を操る程度の能力が失われてしまう。さらに、そのことが大王に知られると、息子の冷凍保存が溶かされてしまうため、にっちもさっちもいかぬ事になってしまうのだ」
と女は静かに、だが暗く語った。見ていると、戸口に後ろ足で進み、すぅっと消えてしまった。
巳之吉は老人を起こそうとするが、-……死んでいる!
茂作は、冷たさのあまり凍死していた。
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