はじめてのクラブ
和田いの
短編
友人と2人でクラブへ行ってきた。2人ともクラブは初めてだ。
夜の10時頃、仙台のART night clubというクラブへ行った。
建物の入り口でチケットを購入し、身分証を見せて地下への階段を降りた。階段の下には分厚い階段があり、開けると廊下があって奥の方の部屋は暗くなっていた。
まだ盛り上がる時間より早いらしく、人が4人くらいしかいなかった。
スタッフにチケットを渡してお酒を貰った。
真ん中にあった席に座ってしばらく2人でお酒を飲んだ。あまり会話はしなかった。大音量で曲が流れているので、本気で声を張らないと相手に声が届かない。相手が何を言っているのかわからないことも多かった。
段々と人が増えてきて15分くらい経つ頃には10人以上に増えていた。
友人は話しかけるのは2人組の女の子だと決めていた。持ち帰りの際、余る人がいると周りに気を使うから女の子を持ち帰りづらくなると、そんな理由らしい。
3人組以上のグループは来るが、2人組はなかなか来なかった。
するとvip席にいたハーフっぽい顔立ちの金髪の美人がなにか話しかけてきた。あまり言葉は聞こえなかったが、様子をみるに一緒にvip席で飲まないかと誘っている。
俺らは頷き、席を移動した。金髪の女性は3つのグラスにシャンパンを入れて乾杯の仕草をする。乾杯をして席に着き話した。
しかし、女性の声が小さくて8割近く聞き取れない。何度も聞き返しながら話して分かったことは、キャバクラの社長している28歳ということくらいだった。
「誰か女の子つれてきて。vip席で一緒に飲もうって誘ってきて」
社長が俺の友人に対してそう言った。友人はすぐに立ち上がり去っていった。あまりにも動きが早かったので社長は笑っていた。
俺は社長と2人になり、何か会話をするが相変わらずほとんど聞き取れない。5分くらい話したあたりで彼女がいるかを聞かれ、いないと答えると「なんでそんなつまらないの」と言われた。
社長が何を言っているか分からなすぎて適当に相槌をうっていたからかもしれない。この声量なのに社長がクラブに行くのが好きなのは、おそらく、慣れている人は声が聞こえなくても動きなどでなんとか相手を楽しませることができるのだと思う。その後友人と同じようにナンパしてくるように言われ、俺も向かうことになった。
トイレの前で友人を見つけたので話しかける。
「なにしてるの」
「さっきスタッフの人に聞いたら、よくvip席にいる女の子2人組が今トイレにいるって教えてもらったから出てくるの待ってる」
数分後それらしき2人組が出てきて、友人が話しかけvip席へと連れていった。
その二人組は顔が似ていて体型は少し太っていた。2人の違いは金発と黒髪という部分だけに感じた。
席に着くとその2人はメニューを指差してシャンパン飲みたいと言い出した。値段を見ると10万。安いのでも3万くらいだった。
俺が断ると友人の方にも同じことを言いに行った。友人は、お前たちに3万の価値はないみたいなことを言っている。
それでも2人は諦めない。まだ買わせようとしている。社長も一緒になってシャンパンコールをし出した。
「シャンパン!シャンパン!シャンパン」
3人は立って手拍子をしている。
友人は諦め3万のシャンパンを頼んだ。
1分後、スタッフが明るい曲と共にやってきてシャンパンを持ってきた。もう1人のスタッフがクラッカーを鳴らし、結構な量の紙吹雪が落ちてくる。グラスの中などにも紙吹雪が入っていく。女二人組はそのシャンパンを混ぜて泡立てて写真を撮っている。
撮り終えたあと黒髪の方が俺に話しかけてきた。
「最近アイコス壊れちゃって、買ってほしい」
「うん」
「いいの?今コンビニで買ってきてくれる?」
「あー、あとで買う」
「そっかー」
そこに社長が話しかけてきた。一緒に踊ろうみたいなことを言っている。
どう踊ればいいのか全然分からないが、見よう見まねでてきとうに体をくねくねさせた。
1分ほど踊り、周りを見ると友人と2人組が消えている。どっかで踊っているのだろうか。
数分後、友人だけ帰ってきた。なんかスマホをいじっている。
俺も座って他の人が戻ってくるのを待った。
しばらく経っても2人組が戻ってこない。席を見ると2人組のグラスはない。
多分別の人のとこ行ったなと思った。
友人は3万のシャンパンを買わされた上に、ほとんど会話もせず2人組に逃げられた。
社長も別の人たちと一緒になって踊っている。
俺と友人は帰り支度を始めた。
すると社長が戻ってきて、友人とLINEの交換を始めた。交換を終えるとこっちを向いてきて頭を撫でてきた。君とはラインの交換はしないけど励ましとく、みたいな意図だろうか。
こうしてクラブを終えた。
ここから先は推測になるが、それぞれの人物の目的について思ったことを書いていく。
キャバクラの社長
vip席にクラブ初心者っぽい人を呼び、ナンパさせてその様子をみて楽しむ。
または
ただクラブで誰かと踊るのが好きな人。
2人組を紹介したスタッフ
男にシャンパンを入れさせそうな女を紹介して儲ける
2人組
クラブと組んでいて男にシャンパンなどを入れさせる役割。
または
シャンパンの写真をインスタに投稿したいとか、欲しいものを誰かに買わせたい人。
真相はわからないがこんな感じだろうか。友人が3万を初対面の悪い女2人に使うくらいなら、その金は俺がもらいたかった。
はじめてのクラブ 和田いの @youth4432
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます