BOOMER`Z : lamé

BB

プロローグ-仏滅の日-


ある日、上空に死が蔓延した。

"それ"は1人の破壊者により引き起こされた死の歌劇。"それ"は上空で無数の爆弾を撒き散らし、残忍で冷淡な笑を浮かべている。

"それ"は途轍もなく大きな轟音を響かせ、花火のように燃え拡がった。キノコ雲のような黒煙を焚き上空で爆発したそれは、有害な熱の余波となり地上へと降り注ぐ。人々は白く石化し死んだ。

ただその余波は人を殺す為だけのものではなく、人に害する怪物。死のミームを生み出した。そんな死が蔓延する空間のある部屋の一角では、赤子と傍に黒く淀んだ死神のような見た目のものだけが生存していた。



 



それは仏滅の夜だった。孤児院の開き口にノック音が響き、院長が扉の前に立つ。

「こんな夜更けにどなたですか?」

「………」


相手からの返答はなかった。

院長は不思議に思いながらも扉を開ける。数秒後に恐怖が訪れるとは知らずにー。


「ヒィッ!嫌ぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」


院長の悲鳴が館内に響き渡り、悲鳴を聞いた多くの職員がその場へと駆けつける。そして、彼らが目にすることになった光景は異様なものであった。

扉の前で腰が抜け顔面蒼白で地面に這いつくばる院長。その目の前には、雨に濡れ、腕の中に赤子を抱いた、黒く淀みの中からやってきたかのような悪魔とも死神とも呼べるような外見のものが立っていたのである。それは傀儡人形のように何も話さず、動かない。

その場にいる全員がこの状況に困惑と恐怖を抱いていた。恐怖に支配され、張り詰めた緊張が走る中、動きを見せたのは傀儡人形の方であった。

二メートル以上ある線の細く巨大な身体、その一部である細長い腕がゆっくりと動く。

傀儡は背を丸め、抱いていた赤子をこちらへと引き渡すような動作をしていた。

誰もがその光景に驚愕し、恐怖に足がすくみ動けずにいた。

だが、その中の年配の老人が静寂に包まれた空間でただ一人彼らの元まで歩みを進めた。

老人は歳を取ってはいるものの軽く見える足取りで、白髪に似合わず背丈もあった。だが、傀儡の前に立った彼は並ぶと幾分か小さく見える程であり、周りの人々の緊張の糸がより強く張られてしまうだけであった。

老人は傀儡から赤子を受け取った。

赤子はまだ臍のをがついたままであり、生まれたばかりである事が窺えた。老人は何気なく赤子の頬に触れる。


ー冷たい。


赤子は雨に濡れ、体温が下がり冷たくなっていた。生まれたばかりであれば赤く血の巡りが分かるほどの見た目だが、これは白く冷たく、死んでいるかのようであった。少しばかり生えている髪の毛は白く老人と同じ白髪であり、無意識のうちに赤子の鼓動を確かめる。


ートックン……トックン


赤子の心臓は微弱ながらも動いていた。

すぐに産湯につけなければいけない。そう思い立ち目の前の傀儡に視線を戻す。

だが、それの姿は既になかった。

老人は辺りを見渡したが、何も見つからず水滴が垂れ水溜まりとなったものが残っているだけであった。

老人は戸を閉め赤子を連れて中へと戻る。彼の腕で眠る赤子の腹部には黒い紋様が浮かび上がっていた。




ー8年後

ある孤児施設に幼い男児がいた。

7、8歳程の少年はソラという名前がつけられ、幼くして家族と故郷を失った孤児である。

彼は孤児院の中で孤立した存在となっていた。






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