第76話 ハンバーガーフランチャイズ
「皇帝、こんなものもありますよ。美味しい食べ物で攻勢をかけるのです」
僕は、国にとらわれず、チェーン店やフランチャイズ店をどんどん他国に進出させることを提案した。
武器は、ハンバーガーとフルーツサイダーである。コーラといきたかったが、コークを見つけられていない。そこで、ベリー類や果実類のエキスをサイダーに混ぜたものを作った。
ハンバーガーのパンズはフワフワ、エールではない炭酸飲料はここだけだ。成功が約束されている。
「まずは、屋台形式で進めてみましょう。オシャレな屋台なら、若い子が飛びつきますよ」
形式はフランチャイズ。各地区に直営店を作り、そこから食材を供給した。
屋台は、キッチンカー。魔道具で4輪を動かす仕組みとした。速度は歩くより少し速い程度。それでも、馬なしの車馬ということで、ポップな外観とともに食材以上に話題となった。
動力源はおなじみ、永久魔素機関。各地から問い合わせが殺到している。だが、生産が追いつかない。
「ハンバーガ・キッチンカーは大成功じゃの。とりあえず首都で始めたが、行列ができて、すぐに売り切れるらしいぞ」
このまま各地域の中心都市を狙い、キッチンカー販売を普及していった。数年後、キッチンカーは大陸中で見られることとなる。
「俺は政治家か商人なのかわからんようになってきたわ。部下に任せたいのだが、面白すぎての。まかせられんのだわ」
もはや、揉み手をしそうな勢いの皇帝なのであった。何しろ、販売戦略室なるものを設け、
「目標1000店舗!」
なんて標語と達成グラフなんかを壁にペタペタ貼ってある
キッチンカーの成功を受け、各地の直営店を拡充した。ハンバーガーだけでなく、ピザも取り入れ、それぞれ種類も増やした。人気は、一番がチーズハンバーガー、2番が僅差で照り焼きハンバーガー。照り焼きについては、ソースも販売することにした。
各領地やギルドは規制をかけたり、圧力をかけたりするのだが、そうすれば住民からブーイングが出る始末。何もそこで商売する必要もないし、全くの売り手市場になっている。
ただし、販売員教育はしっかりと行い、態度の悪い店舗や従業員はどんどん切っていった。ほかからも似た店舗が増えてきたが、追従を許さない。それに、商売敵が増えるのはいいこと。
直営店には当然、製粉魔導装置がある。ハンバーガー店が上手くいったのを見計らい、パン販売を始めた。
パンは全ての人々にとって、大切な食品である。それを徐々に押さえ始めた。隣国の神聖イスタニアンでも展開を始めた。気がつけば、都市圏のパンは帝国パンが担うようになった。
【通貨と度量衡】
ハンバーガーチェーンの拡大に伴い、皇帝に通貨と度量衡の統一を提案した。通貨に関しては、通貨作成魔道具を開発した。金・銀・銅も1トンばかり融通した。
「金(ゴールド)、もらいすぎじゃ」
「皇帝、この世界には金(ゴールド)は溢れるほどあります。ただ、鉱山を見つけられないし、見つけても掘削ができないだけで。僕は魔法で掘り当てることができますから、金(ゴールド)はほぼ無限に取得できるのですよ」
「なるほど、貴様が金(カネ)は不要と言った意味がよくわかったわ」
「通貨の価値が落ちてしまうから、金を掘りすぎることはしませんけどね」
金貨は金90%、銅10%で製造することにした。金だけだと柔らかすぎて使いづらいのだ。
「この割合は不変としましょう。変えてしまうと経済が混乱します」
度量衡の基準は皇帝の腕の長さとした。肩から手首までが約50cmだったからである。ちなみに皇帝は身長が160cmぐらい。この時代としてはやや高身長である。
「そうか。俺の腕が長さの基準か。しかし、2単位1メートルとするのは、どういう基準だ?」
「すみません、僕的に1メートルが使いやすくて」
ぶっちゃけると、皇帝は
「わはは、お前の1メートルに合わせるために、俺をダシにつかったな?」
早くも見破られた。
帝国通貨は帝国内だけでなく、他国でも流通し始めた。何しろ、非常に精密で美術的な価値が高い。しかも、金の割合を絶対変えない旨公言している。帝国の信用ゆえだが、それを支えるのは、帝国の軍事力である。
慌てた神聖イスタニアン首脳陣は、貨幣を鋳造した。しかも水増し貨幣である。経済が混乱し、ますます帝国通貨に傾倒した。良貨は悪貨を駆逐するのである。
規制をかけたりムリをふっかけようとすると、帝国軍が対応する。他国への出兵など戦争案件であるが、帝国軍は非常に強い。旧ジョージャン王国を一方的に蹂躙するほど強い。ロレンツォには負けたが、あれはロレンツォが規格外だからだ。
特に怖いのは、竜騎士軍団である。こちらもロレンツォにはひどい目に合わされたが、100頭もの航空戦力は他国からは驚異でしかない。
しかも、ロレンツォから威嚇だけ、との条件で 500kg爆弾相当の威力のある魔石爆弾を購入している。これをムリを言う都市のそばで爆発させる。名目は、帝国の民の権益を守るため。
これにはどの都市もひれ伏すしかなかった。そもそも自分で播いた種である。無理が通れば道理が引っ込むを地でいく帝国であった。
こうして、神聖イスタニアンは東部から徐々に帝国の強い経済圏に囲いこまれていった。
神聖イスタニアンは渋々、帝国と同盟を結ぶこととなった。同盟とは名ばかりで、体のいい従属契約である。宗教には口出ししない。しかし、宗教が政治・経済に口出しするのを固く禁じた。
「賢者よ。まさしく"そふとぱわあ"というやつじゃの。軍隊は従じゃ。経済だけで他国を蹂躙しとる」
「軍隊は大事ですよ。経済を支えていますから。それから、悪貨の例も見ましたよね」
「ああ、水増し貨幣か。あれは経済を混乱させるの。部下もこのことは良く知っておったわ」
部下にも経済に明るい人材がいるらしい。
財務大臣を努めているんだと。
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