第35話 15才。成人の儀~追放へ

「これでお前も15歳になり、大人と認められることとなった。だが、残念ながら魔法の才能がない。アンジェリーナの子ということで目をかけてきたがな。王室法典により、お前は王位継承権剥奪。宮廷追放となる。爵位と領地を授けるから、そこで大人しく暮らせよ」


 目をかけてきた?

 僕はこの人と話した記憶が数回しかないんだけど。

 まあ、やっと晴れてこの日を迎えることができた。


「これで城の空気が良くなるな。今まで臭かったもんな」


「魔法のない王族なんて、ホント恥以外の何物でもないもんな」


「民衆に馬鹿にされてるようで恥ずかしかったよ」


 馬鹿兄弟たちの侮蔑の言葉だ。

 それにしても、馬鹿次男、香水臭いな。


 冷たい視線を感じながら宮廷を退出すると、

 僕はさっそく荷物の準備にかかった。



「とうとうこの日がやってまいりましたな」


「荷物はお任せ下さい。しっかりと旅立ちの準備をいたします」


 ランベルトとフィナも張り切っている。

 彼等には何度も意思を確認したのだが、

 僕についてくるというのは変わらないようだ。



 僕は聖女様に伝える


「3日後の早朝。退出するから、前夜に変身魔法かけとこか」


「わかったで。前にもゆーたけど、賊に注意な」


 うん。計画に入れてある。

 僕は執事やメイドにもそのことを伝える。


「マリアからの注意なんだけど、賊がまちぶせしている可能性が強いんだって」


「くっ、そうまでしてお坊ちゃまを……」


「多分、大丈夫でしょ」


 すでに転移魔法陣が僕らの領地に備え付けてある。

 飛行魔法で現地を一通り視察してきたのだ。

 だから、直接転移することもできる。


 ただ道中の安全のために賊の殲滅をするつもりだ。

 今回はゆっくり領地に向かう。



 荷物の準備にとりかかると言っても、

 マジックバッグがある。

 実質手ぶらだ。

 実際に持つのは、武器とボストンバッグ程度。


「マジックバッグって本当に反則ですよね。引越し業で稼げそう」


「商人が垂涎の目でみてきますよ。私も冒険者時代、獣を仕留めても持って帰れず、地団駄ふんだことが何度もある。下手すると、金貨数十枚を捨てることもあります」


 このバッグ所有者はこの世界に何人いるんだろう。

 僕のは古代魔法だから、ひょっとしたらいない?


「古代遺跡でマジックバッグがいくつか掘り出されてます。金貨数百枚以上の価値がありますね」


 数千万か下手すると億を越えるとか。

 マジックバッグを作れば、すぐに億万長者だ。

 もっとも、僕は金塊掘り放題だからね。

 犯罪っぽいけど。



 セリアにも伝える。

 セリアは変身魔法を覚えている。

 マリアとともに、猫になって脱出する算段だ。

 色々スキルが向上してきたので、

 変身しなくても連れ出せると思うけど。


 城には黙って連れて行く。

 結局、セリアは政略結婚用に準備させられていた。

 連れて行くのは難しいんだ。


「おにいさま、早く連れ出して!そうじゃないとキモい殿方と結婚させられてしまいますわ!」


 淑女はキモいなんて言葉を使っちゃいけないけど。

 ローリア経由で流行語を取り入れているようだ。


 妹は、当然メイドのローリアを連れて行く。

 ローリアも何年の付き合いになるだろうか。

 妹と一緒に魔法の学習に励んだから、

 今では一端の魔法使いになっている。


 セリアと同じラグドールでは畏れ多いとのことで、

 ローリアは色揃いでシャムにした。

 今は「タイ」と呼ばれるようになった、

 オールドスタイルシャム。

 丸顔で愛嬌がある。



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