第6話 義妹とシちゃった

 迷いはもうなかった。

 優しく亞里栖の体をほぐし、準備を整えた。


「…………」


 瞳を潤ませ、俺を見つめる亞里栖。恥ずかしいのか、ずっと視線を合わせないでいる。なんて可愛い。


「……亞里栖」

「うん……いいよ」


 俺はついに亞里栖の中へ……。



 ◆



 呼吸が酷く乱れている。

 夢のような時間だった。


 いつの間にか果て、いつの間にか行為を終えていた。


 必死に腰を振っていたせいか、記憶が曖昧だ。いや、たぶん……亞里栖の顔がまともに見れなかったせいもある。


 はじめてにしては上出来だとは思いたいが、ここまで記憶が飛ぶとは思いもしなかった。



「ふぅ……」



 タバコを吸い、俺は気持ちを落ち着かせていた。

 一方の亞里栖はシャワーを浴び、無言だった。


 気まずいような沈黙が続く。



 それにしても。


 本当にシてしまったんだな、俺。

 全然実感がないというか、こんなもんかという感覚もあった。でも、最高であったことに間違いはない。


 ああ、そうか。


 今はスーパー賢者タイムだから、だから、妙な感情なんだ。



「……両ちゃん」

「おかえり」


「そ、その…………」


「ん? なんだよそよそしいな」


「もう一回しよ……」

「…………は?」



 意外すぎる要望に俺は頭が真っ白になった。


 エ、ナンダッテ?


 そう聞こえないふりをしたいところだったが、しかし、魅力的な提案でもあった。

 俺の真の巨神兵オベリスクは既に回復傾向。二回戦目もいける余裕があるのだ。



「だ、だって……気持ち良かったし」

「お前、ヘンタイだな」

「う、うっさい! いいじゃん。特別大サービスで無料でいいし!」

「無料かよ。気前良いな」

「でもね。今回経験したら、ちょっと立ちんぼ続けるのもアリかな~って思った」

「それは許さん。だったら俺が拾い続ける」

「ホント~? わたし、高いよ」



 お金は要求してくるわけか。まあいいや、副業の稼ぎがそこそこある。

 亞里栖を止める為なら構わない。


 それに一応、女子高生だ。事件になってしまう。



「亞里栖、今回もだけど今後は“合意”で頼むよ。今は世間がうるさいから」

「大丈夫大丈夫。ちゃんと合意の上だし。誰にも言わないよ。それに、本気の恋愛なら問題ないんだっけ?」


「らしいな。――って、え? 本気の恋愛?」


「うん。いっそ両ちゃんと付き合うのもいいかなーって」

「お金を払うのに~?」

「だって困るでしょ」

「それは……そうだけど」



 対策しておくに限るか。

 万が一にも親父や母さんに問われた場合に、本気で恋愛していますって言えれば問題はないだろうし。あと世間的にも。


 その後、ラブホで一泊。

 もちろん、二回戦目も果たして……三回、四回と続いていた。



 ――翌朝。



 起き上がると亞里栖がすでに着替えていて、ベッドを立っていた。



「おはよ、両ちゃん。わたし、もう行くね」

「え、どこへ……?」

「お金稼げたから、さっそく買い物。またお金に余裕あったらお願いねー!」



 笑顔で去っていく亞里栖。

 機嫌が良さそうで良かったよ。


 こんな朝を迎えられるとは想像もしなかった。つい昨日の昼までは他人のように過ごしていたというのにな。


 関係を修復できて嬉しい。

 これからも亞里栖を拾い続けたい。



 俺もホテルを後にして、大学へ向かった。



 適当に講義を受け、その帰りに顔見知りの男に話しかけれた。

 男の名は『永倉ながくら』といった。

 高身長のイケメン。どこかの社長のボンボンらしい。そんな優男がなぜか俺には優しくしてくれた。


 シーシャをプレゼントしてくれた悪友だ。



「おーい、相良」

「永倉か。なんだよ。俺なんかより女の子の相手で忙しいんじゃないか?」

「そんなことはないさ。それより、今日はご機嫌だな」

「そうかな?」

「立ちんぼで可愛い子でも拾ったような顔をしているな」

「――んなッ!?」


 思わず俺はギクッとなった。

 な、永倉はまさか俺の心を読めるのだろうか……!? いやいや、そんな超能力者エスパーじゃあるまいし。



「図星か。いいね、最近可愛い子ばかりいるよな~。でも気を付けろよ、相良。梅毒ばいどくが流行っているらしい。風邪だけでなく発疹が全身に出てヒドイぞ」


「さすが詳しいな」


「まあな。性病は恐ろしい……」



 経験者は語るってことか。

 永倉は女に困っていないようだし、何十人と付き合っているようだった。だから、性病にもなったことがあるんだろうな。



「で、なんの話だっけ」

「相良、ちゃんとゴムはしろよって話さ」


「そんな話だっけ!?」



 よく分からんが、永倉は去っていった。なんなんだよ、アイツ。

 立ち尽くしているとスマホが鳴った。

 画面を見てみると亞里栖からだった。



 亞里栖:今晩もあの場所で立ってるね~!



 なッ!


 亞里栖のヤツ、また立ちんぼをする気か!? まてまて。俺との専属契約のはずだろ。わざわざあの場所で立つ意味が分からない!


 クソ、止めねばならない。

 電話をしてみるが繋がらない。



 なんでだよッ!



 行くしかないのか、あの場所へ。

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