立ちんぼに義妹がいたので拾った

第5話 本当の気持ちとはじめてのキス

　俺の指先が亞里栖の胸に触れようとした、その時。急に立ち上がって俺から距離を置いた。

「ちょ……亞里栖」

「や、やっぱり恥ずかしい！」

「ま、待てって。今更逃げるなって」

　亞里栖の右腕を掴んだが、バランスを崩す俺。なんか足元が滑った……！　い、いかん。無理、倒れるッ！

　結果、亞里栖を押し倒す形となり、そのまま倒れた。ざぶんと飛沫（しぶき）が上がって、お湯があふれ出す。

　……痛ぇ。

　ん、なんだこの感触？

　妙に柔らかいものが右手に……って、これは！

「…………りょ、両ちゃん……だめだってばぁ」

「う、うぉ！？」

　この体勢。完全に俺が亞里栖を襲っている感じになっているー！？　しかも右手が亞里栖の胸を掴んでいた。偶然だけどなッ！

　それにしても、な、なんて感触だ――！

　これほど感動したことはない。

　これほど感謝したこともない。

　こ、これが亞里栖の……。

　その時点で俺の理性は弾け飛んだ。

　ついに真の巨神兵（オベリスク）が眠りから覚めたのだ。

　こんなに可愛い亞里栖が悪い。こんなヤらしい肉体で俺を誘惑する亞里栖が悪い。巨乳なのが悪い。いい匂いなのが悪い。声も仕草も俺の心に刺さるから全部悪い。

　くそ、くそ、くそッ……！

　もう止まらねえぞ、俺は。

　このまま義理の妹で童貞を卒業してやらああああああああッッ！！

「両ちゃん……ナニか当たってる……」

「それは俺のおいなりさん、もとい真の巨神兵（オベリスク）だ」

「ほ、本当にしちゃうんだね……」

「もともとその覚悟だろ？　俺はもうやるきると決めたぞ」

「そ、そうだね。……優しくしてね」

　ようやく亞里栖も決心したようだ。

　リラックスして俺を見つめてきた。……大丈夫、俺にはあらゆる知識が脳内に詰め込まれている。失敗はしない。

　俺は改めて亞里栖に触れていく。

　あらゆる部位を優しく、丁寧に。

　亞里栖は、時折甘い声を出して感じてくれた。

　見たこともない恍惚（こうこつ）とした表情を俺だけに曝け出しはじめていた。……な、なんて艶めかしいんだ。

　それから、漢（おとこ）となった俺は、迷いなく亞里栖のファーストキスを奪った。

「…………っ」

「……ん、ぁ」

　これが唇の感触。……脳が焼き切れそうになった。

　これだけでもう天国に行ける気分だ。

　顔を離すと、亞里栖の呼吸は乱れていた。少し苦しそうに、けれども幸せそうに頬を真紅させていた。……くそっ、可愛いな。

　もう一度。

　そう思ったよりも先に亞里栖の方からキスをしてきた。

「…………ッ！」

　予想外だった。

　ずっと人形のように黙ったままなのかと思っていた。

　俺の立ちんぼのイメージは少なくともそうだった。

　サービスの良い風俗店はともかく、こういう個人間の場合は事務的に済ませてオシマイなのが普通。それっぽいエロ動画だとか、大学の知り合いからも、そういう風に聞かされていた。

　だが、亞里栖は違った。

　まるで。

　まるで俺を愛しているかのように振舞ってくれた。

　こ、こんな濃厚だとは……。

「あ、亞里栖。どうして……？」

「嫌いじゃないって言ったでしょ。白状するとね……険悪になった原因ってお義父さんのせいなんだよね」

「え……」

「あの電話はウソだったんだ」

「電話が掛かっていたのか！？」

「うん。両ちゃんは、わたしのこと大嫌いだって……そう言っていた」

「な、なんだって……」

　親父の野郎、そんなウソを吹き込んでいたのか！　だから、亞里栖は俺を嫌っていたんだ。

　あの時の亞里栖は、まだ家にきたばかりで信用できるのも母さんと親父だけだったはず。

「思えばそんなのウソだよね」

「くそっ、親父の野郎。なんてことをしてくれたんだ！」

「多分だけど、ウソが続いたせいでお義母さんは……行方不明に」

「そういうことか。母さんはずっと音信不通で行方不明だ。警察を頼っても分からんという……。もしかしたら、親父のウソに参っていたのかもな」

　あの馬鹿親父は、とんでもないクズ親だった。

　タバコ、酒、ギャンブル……そして、暴力。どうしようもなかった。

　今頃どこで何をしているのか興味なんてないけど、一度ブン殴ってやりたい。てか、なんでウソなんか……！

「ごめんね。だから、今のは謝罪の意味も込めてキスをした」

「そんな。そんなのいいんだよ。俺は亞里栖が好きだから」

「うん。わたし、偶然でも両ちゃんに拾われて良かった。嬉しかった……。知らない誰かと一晩を過ごしていたかもしれない。酷い事されていたかもしれない。……怖かった」

　そうだよな。

　亞里栖はまだ女子高生だ。

　不安でいっぱいだろう。

　でも、これからは失った時間を取り戻す。俺が責任をもって亞里栖の面倒を見る。親父も母さんも頼れない以上、俺がしっかりするしかないんだ。

　そして、亞里栖のことが好きだからこそ……今から最後までする。

「……続き、するぞ」

「……いっぱいしようね」

　そんな風に耳元でささやかれ、俺は真の巨神兵（オベリスク）が激昂（げっこう）した。メキメキとメリメリと音を鳴り響かせ、更にパワーアップする。

　宇宙が膨張しているように、俺の下半身も常に膨張しているのだ。

　まさにフルパワー、100%中の100%なのである。

「いくぞ」

「え……両ちゃん、ちょっと待って」

「ん？」

「ちょっと……それはデカすぎない！？　無理、そんなの無理……！」

「今の俺は究極完全態グレート・モスだからな」

「わ、わたしはホーリー・ナイト・ドラゴンくらいがいいな」

「ふむ……」

　仕方ない。

　100%中の100%では最終的に自滅してしまうしな。パワーを押さえてやろう。

　……ふんッ！