藍ヨリ青ク

・藍ヨリ青ク

1stソロライブの一曲目。どんなライブでも、一曲目は大事。

インタビューで、「ライブタイトルを自分の名前にしたのは覚悟の表れで、自己紹介」と話していた。また、藍ヨリ青クの解説欄で、「この曲を作った時期は棘々していた。僕のそうした部分も見せていこうと最初に持ってきた」とも言ってる。

ライブの始まりを告げる曲としては、暗く重く、難解な歌詞でもある。でも、そういう曲を最初に持ってきたところに、強い意志を感じる。


この曲を初お披露目した誕生日ライブも見てきた。節目のライブで新曲を発表することが多い緑仙だけど、この時は少し様子が違った気がする。新曲をみんなに届けられる嬉しさより、緊張感の方が伝わってきた。けっして明るい内容の歌じゃない。それを、自分のことを観に来てくれている人たちの前で歌うのは、不安だったんじゃないか、そう思った。


「正面突破

共犯外伝にて、ハッピーエンド。

炎上 十代

劣等感は優等生のアイニージュー、アイニージュー


転生のちに霹靂、降下。

あー、燃やしてしまうの、呼吸も全部。

高揚感はまぎれもなく君だけのxyz」


青い照明に照らされた緑仙、スモークが噴射、赤のライトも加わる。振り付けは抑えめ。リリースされた音源での歌い方は作曲したアザミさんに寄せている印象だった(self coverを聴いた)。デモに歌が乗っていたのかな。年月を重ねて、徐々に緑仙自身の歌い方の方が色濃く表れるようになったと思う。


特徴的なピアノリフが耳に残る。ライブのOpeningでもアレンジされたバージョンが流れていた。

自分の読解力もあるだろうけど、歌詞が難解で、いまだにどういう意味なのか、何を指しているのかわからないフレーズも多々ある。ので、自分がわかる範囲の感想を書く。


「正面突破」自分を観てくれる人たちに真正面から向かっていった活動は、「共犯外伝」ここは怪しいけど、後ろの「炎上」とあわせて考えると、自分の活動を悪意ある切り取り方で広める人間がいて、「ハッピーエンド」幸せな配信活動の日々が終わった。「劣等感は〜アイニージュー」は、優等生が誰を指すのかで意味が変わるけど、もし緑仙なら「優等生」というワードは皮肉。人と比べて劣ると感じるから、他人の存在を求める、とか。

「転生のちに霹靂、降下。」VTuberとして活動開始して(生まれて)、霹靂(天候悪化)、降下つまり幸せだった場所からどんどん下に落ちて行く。地の底に。「転生」はおそらく「晴天」にかけてる。

「あー、燃やしてしまうの、呼吸も全部。」

あー、と言ってるのは緑仙。僕のことを炎上させて、呼吸まで燃やす、息の根まで止めてしまうつもりなんだ。

「高揚感はまぎれもなく君だけのxyz」

人を傷つけた君だけが得る高揚感、を指していると思う。「xyz」に関しては難しいけど、アルファベットの最後3文字だから「終わり」の意味を含むと思う。

MVでは教室の床に溺れていく緑仙の苦しそうな表情。はっ、と息を呑む。


「罪もない花を壊して

ひとり浮足立つのは英雄だ

見えもしないいつか会う少女

傷はなめておけば治る」


Aメロは比較的スローテンポな言葉数。スクリーンには真っ黒の水面。擦れて(かすれて)細い、うわずった声色が特徴的。

「罪もない花」は緑仙を指していて、それを壊して浮足立つ「英雄」と批判、皮肉を言う。

「少女」も緑仙のことかと思ったけど、2番の「少年」含めて考えると、花を壊す「誰か」を指す可能性もある。

「傷はなめておけば治る」、人を傷つけておきながら、「まあでも、配信者ってメンタル強いから大丈夫でしょ?」とか、無責任なことを言い放つ人たちはたくさんいる。


「1億と3つの黒を消してって、ダーリン?

「あんたの白もちょっとだけ頂戴」

いらない子ならいらなくて正解よ

そんなんじゃちょっと変わった振りしても

精々

僕も地球も知らんぷりしちゃいそう

落ちてゆけば目は合いますか?」


「1億と」からテンポアップ。「落ちてゆけば目は合いますか?」でバックの演奏とリズムのアクセントが噛み合うところが気持ちいい。

「1億と3つの黒」、日本の人口が1億人、「黒」がかかってるから、自分を傷つける他人を指す言葉かな。「3つの黒」、この曲で「3」をイメージさせるのは「xyz」、「xyz」は「終わり」を意味する、緑仙が他人から焼き付けられた「終わり」の印を消してくれない?ということだろうか。難しい。

「あんたの白もちょっとだけ頂戴」

緑仙の良い部分(白)だけさらっと味わってどこかへ行く人の様子かな。「歌えばほら手のひら返し」という歌詞から考えると、「良い部分=歌」。

白ばかり必要とされるから、「いらない子ならいらなくて正解よ」とか拗ねて不貞腐れたくなるけど、そんなんじゃ自分のことをしっかり見つめてくれる人なんて現れそうもない。ちょっと変わった振りしても、地球(世の中)は僕を知らんぷりするだろうな。

なら、高いところから飛び降り(落ちてゆく)でもすれば、僕のことを見てくれる?高いところ(幸せだった頃)から突き落とされたような現状の気持ちとリンクさせた皮肉、嫌味、諦め気味のヘルプ。


「バイバイ、さあ!

優も劣悪も10もマイナスも紅も緑も今日で最後さ

歌えばほらさかさまの君

正も謬錯も⚪︎も×も

天もどん底も今日で最後さ

ブレイクダウン 高い、幸せの上」


サビは言葉数も多い、音程の高低変化が激しい、歌詞も鬱憤を晴らすように、吐き捨てるように。「優」と「劣」、「10」と「マイナス」は数字によるもの。「正」と「謬錯」、⚪︎と×、「天」と「どん底」、これらはどれも緑仙に対する他者からの勝手な評価。

「歌えばほらさかさまの君」

2番の「あんたの声はちょっとも欲しくない。」そんな扱いをする奴も、緑仙が「歌えばほら手のひら返し」したように評価を逆さまにする。歌うのをやめれば、また手のひら返したような態度で幸せから叩き落とす。


「この藍ヨリ青クは自分的に一番出来が良くなかった」と話していた。たしかにテンポが走って息切れする場面はあったけど、歌の質そのものは高かった。初ソロライブの一曲目で緊張しないほうが不自然。


「xyz」は「終わり」と捉えていたけど、それだと「君のxyz(終わり)だった」という言葉の意味が通らない。「xyz」は何らかの言葉を隠すための伏せ字かもしれない。それなら「3つの黒」が伏せ字を表してるといえそう。


「積み上げる無駄を壊して

1人になれば守られるような

消えては戻る少年も

傷は舐めておけば治る」


「積み上げる無駄」は、日々の配信活動のことだと思うけど、無駄と言い切るのは、たしかに棘がある。自暴自棄。

そんな無駄と思える日々すら壊される。「1人になれば守られるような」人間に。自分は1人きりで、誰も守ってくれない。消えてはまた現れるそういう人間たちも同じように言う。「傷は舐めておけば治る」。


「必然さ、窮地の上踊ってんだ、ダーティ。

「あんたの声はちょっとも欲しくない。」

漫画みたいな成功はない。

だってそうだろう?

こんな苦い薬も溶かして

粗悪な石使い果たしたって

朝も夜も悪はひとつさ」


踊っているようにみえて、実際は窮地の上、追い詰められた状況で、泥に塗れてる(ダーティ)。漫画調のイラストのMVで「漫画みたいな成功はない」と皮肉。これはMVの存在がそう見せている可能性もある。

「苦い薬」は、配信活動かな。「粗悪な石」は、たぶんソシャゲのガチャを引くことを、かわるがわる姿を現す視聴者に掛けている。


2番サビは「散々だ!」と、より強い口調で、溜め込んだ暗い感情が噴き出てくる。

「伸ばす手も忘れている」幸せの上、高い場所から何度も突き落とされている内に、助けを求めるために手を伸ばすことすら忘れてしまう。心が麻痺するくらいの痛みを受けている。


言葉数も多い、音程の高低変化が激しいサビは、逆に言えば聴かせどころ。高さの離れた音のつなぎ、裏声とか。「ブレイクダウン」できれいな裏声、「高い」で太くてキレのある高音。とてもいい。


「気まぐれな常識に引き裂かれている

犠牲は血へ」


気まぐれな常識、曖昧な世間の尺度で評価をされ、心を引き裂かれた結果、血が青くなる。凍りついた青、つまり4ぬほどの苦しみを味わってるということ。藍より青い血の色になってしまった。緑でなくなってしまった。

後ろを向いていた緑仙が振り返って、赤と青の入り混じった照明を浴びてる姿で言う「バイバイ、さあ!」は、すごい迫力がある。鬼気迫るものがある。


ラスサビの「正面突破〜アイニージューだ。」の時、ダンスがよく見える。緊張取れてきたのか、キレが戻ってる。かっこいい。


「情景描写

共感マニュアルでハッピーエンド

延長、十代。

迷走なんて君臨の眷属?

敗退、アイニージュー。

転生のちに辟易、淘汰。

あー、燃やしてしまうの、未来も全部?

行動なんてあてにしない。

見え隠れ、xyz」


延長、十代は、「友だちをつくる」という目標が先延ばしになった、ということかな。人生に迷走することは、配信者として仕方ないことなのだろうか。辟易とした気持ち、付き合う人がよりいなくなっていく。

他人なんてあてにしたくない、そんな気持ちが増していく。


かっこいいけど、声色が切ない。悲しい曲。

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