chapter6:scenery

 私はカスミ様とともに3Fへ上がり、通路を歩いていた。



「カスミ様、どちらに向かってるのでしょうか?」



「ん?もうすぐわかるよ。」



 通路を突き当たって左にあるシャッターが開くと広場にたどり着いた。360°見渡す限り宇宙空間が広がっている。



「これは...」



「ホープは宇宙を見るの初めてだよね。一度でいいからあの星を見せておきたくて。ほら、あそこに見える青い星。


あれが地球だよ。」



 地球は人類の母星、宇宙から見る地球はやはり青かった。人間の故郷の星。


 とても美しい...。



「私たちはあの地球から飛び立って今『マリス』に向かっている。でもあんな綺麗な星を見ると、離れたくなくなっちゃうんだよね。

どうして人はくだらないことであんな綺麗な星を汚していくんだろう。」



 確かにカスミ様の言う通りだ。資源問題、環境問題、人間どうし、または機械との戦争。それらがあの青い星を無作為に汚しているのだと思うとくだらなくなってしまう。



「でも、それでも私たちはあの青い地球と共存していきたい。いつか私は傭兵で稼いだお金を使ってもう一度地球に住んでみようと思う。


みんなの実家として、あの地球で宇宙に旅立った人たちや生活が苦しい人やいろんな理由で孤児になった子たちを迎え入れられるようにいろんな問題を解決していきたい。」



 そんなカスミさんの瞳は若干潤っていながらも奥底に炎のように燃える情熱が見える。



 その時私はどうしているのだろう。宇宙にいたままになるのだろうか。



「まもなく、ワープを開始いたします。

乗組員の方は衝撃に備えるよう準備をしてください。」




 そんなことを考えていた中、艦内通信でのアナウンスがされた。どうやらもうすぐワープをしていくようだ。カスミ様がソファまで誘導してくれ隣に座らせてくれた。



 そしてワープが開始されると、まるで太い綱で後ろに持っていかれる感覚だった。一面真っ暗な広大な宇宙から穴が出現し、その中に入ると今度はとても輝く光の空間が広がっていた。まずは後ろに引っ張られる形で



「あはは、ホープ顔がひきつってるよw」



 笑いながらカスミ様は私をからかってきた。そして10分くらい経ち、今度は一気に前に引っ張られる。カスミ様は私を難なく抑えて飛んで行かないようにしてくれた。



 光の空間を抜け出ると、また暗く冷たく広大な宇宙空間へと出て来た。ワープは終わったようだ。



「危なかったなホープ、大丈夫かい?」



「はい、ありがとうございます。いつか私も地球に行ってみたいですね。」


「あぁ、なんだかんだ気にいるよ!」


 そうして私たちは広場を出てエアロックへ向かうことに。



      ーーーーーーー


 エアロックの前まで行くとシャッターの前でアラタ様とケント様が困った顔で話していた。


「うーん、どうしようか。困りましたね...」



「そうですね、早く済ませてくれないものですかね...」



 カスミ様は即座に2人に何があったか聞きにいった。



「おや2人とも、何かあったの?」



「カスミさん、実はエアロックで作業してたのですが途中でツトムさんとミナミさんが入って来てその...。」



「今は恋人の時間を楽しんでまして少し気まずい感じになりまして...。」



 2人はお互い目を逸らしながら何があったのかを言った。



「やれやれ、あの2人はほんとにお盛んだねーwそれにしても2人は女の人と付き合ったことないからどうすればいいかテンパってる感じだねw」



「ちょカスミさん、何言ってるんですか!?」



「え、じゃしたことあるの?w」



「いや、それは...」



アラタ様は気まずくなり黙ってしまった。カスミ様は男の扱いが上手いようだ。



「はぁ。ホープ、今度からはこういう人たちを終身名誉童貞って言ってやりなw」



「ちょカスミさん、ホープに変な情報教えなくていいですから!」



「ごめんごめん、からかいすぎた。とりあえずホープと中に潜入してみるよ。」



カスミ様は私の手を握りシャッターを開けた。改めて柔らかい感触であったため、カスミ様の手はとても傭兵をしているような手ではないと考えた。



      ーーーーーーー


「ちわーす、新しいおもちゃの宅配でーす。」



 カスミ様は気が狂ったのか。ふざけた態度で入室していった。



「え、ちょ...」



「おわぁ!?」



 2人はとても驚いて体の密着を解いた。どうやらキスというものをしていたようだ。



「あぁ、続きは自分たちの部屋でね。今ホープも一緒にいるからさ。」



「え、なんでホープも!?」



「さっきセンチョーが捜索隊に加えるって言ってたでしょ?それで一緒にいたから。ホープに宇宙の景色を見せたり、これから宇宙服を見繕うからさ。」



 一つ一つ丁寧に説明していくカスミ様。さすがは年長者だ。ただキスをしていた2人にニヤニヤしながら言うから説得力がないように見える。



「まぁ無理もないよ。この船を出たら最後、戻ってこないかもしれないと思うと今のうちに肌で感じていたいよね。


大丈夫、船のみんなは私が守るさ。

だから一旦席を外してくれると助かる。」



 今度は優しくミナミ様に諭していた。



「わかりました、ご迷惑をおかけしました。

前にいる2人もごめんなさい。」



「おれもすまなかった。場所考えるんだった。」



「うんうん、これで解決だね。じゃお二人さん、続き楽しんできてねーw」



2人は恥ずかしそうにエアロックを出ていった。だが最後の一言は余計だったとは思った。こうして見渡すとエアロックもまた広い。この赤いボタンは一体何なんだろうか?



「あ、ホープそれはダメ!」


 カスミ様が大声で叫び止められた。


「これを押すとあそこのシャッターが開いて宇宙空間に吸い出されちゃうから気をつけてね。そしたらホープの宇宙服を選んでいこうか。」



 カスミ様は宇宙服をガサゴソと漁り、数ある中からあるものを取り出した。かわいい小熊の宇宙服。子供用の宇宙服で見た目に反していろんな性能が組み込まれている。


 例えば圧力に強い。水圧、気圧、重力などを大幅カットしてくれる。この毛皮がその役目をしている。


 他にも応急処置ができる携帯救急箱も備わっている。サポートをするのにうってつけだ。私はその宇宙服を着てみる。



「ぷっ、あっはっはっはwホープめっちゃ似合ってるよw」



 どうやらとても似合っているようなので私専用として宇宙服に名前プレートを付けておくことにしよう。



「いやーやっぱりホープ最高だよ!じゃ私も着替えよっかな。」



 カスミ様は着ている服を脱ぎ始める。体には無数のキズが見える。銃痕や刃物による切り傷など。こう見ると、いろんな戦場に駆り出されているんだなと。


 こんなに優しく綺麗な人が、戦わなければならない今の状況は変えなくてはならないと感じた。



「ホープ、そろそろ大丈夫かな?」



 部屋の前で待っていたアラタ様たちが痺れを切らしたのかノックなどをせずに入って来た。すると私を見て大きく笑い出した。



「あはははwホープが着てる宇宙服似合うね!」



「ほんとだw可愛いよホープ」



やはり2人も褒めてくれた。カスミ様には感謝しかない。だが奥で着替えているカスミ様に2人は気づいていなかったのか。



「おやおや、今度は覗きをする気?w」



 カスミ様は笑いながら2人をからかう。もう下着を脱ぎ宇宙服で体を隠している。



「え、あ...」



2人は鼻血を出してそのまま倒れた。終身名誉童貞には過激すぎた景色だったようだ。

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