第22話 お菓子を囲んでお喋りしながら

 その頃、マオより先に自分の学園に来ていたミオは屋上で一人、書いた魔方陣の真ん中に立ち、ふぅ。と一つため息をついていた。長い髪がふわりと揺れた時、屋上の入り口の扉が開いて女子生徒が三人入ってきた

「ミオ、どうしたの?」

「んー、別になにも」

 クラスメイト達に声をかけられ、右手に持っていた杖の先をコツンと地面につけると、書いた魔方陣が消えた

「こんな場所で魔術を使ったら危ないよ。まーた怪我するよ」

「そうそう、ミオはもう何度も授業で怪我してるでしょ?」

 話しかけてくる側で、入り口近くに置いていた鞄からお菓子を取り出し食べはじめた

「だって、怪我しても魔術で治してくれるし」

「あのねー、ミオ……」

「魔術の怪我なんてあってないようもんだし。みんなが治してくれるもんね」

 個包装にされているお菓子を渡しながらミオがクラスメイト達にそう言うと、お菓子を受け取り食べながら困ったようにクラスメイト達が笑う

「勉強熱心なのは良いけれど、本当に気を付けないとダメだよ」

「そうそう。いつも治してくれる生徒がいるわけじゃないんだし」

「そーそー、この前だってさ……」

 と、注意を聞きながらお菓子を食べ終えたミオ。生徒達が話をしている途中、ミオが話を遮るように先ほど魔方陣があった場所へと歩きだした

「もー、また練習?」

「今、注意したばかりなんだから、止めときなって」

 背後から聞こえる声を無視して、右手に現れた杖をぎゅっとつかみ、また杖の先を地面にコツンとつけると消したはずの魔方陣が再び現れ、一人呪文を唱えはじめた。その様子に呆れたようにため息をつくクラスメイト達。ミオや周りに、ふわりとそよ風が吹き出すと一人のクラスメイトが残り二人に手招きをして、ヒソヒソと小声で話しはじめた

「ねえ知ってる?グレニア学園に、ミオってそっくりな人がいるの」

「えっ、あの学園に?」

 話を聞いたクラスメイトの二人が驚いた表情で返事をしながらミオを見ると二羽の白い小鳥がミオの周りをクルクルと回って飛んでいた

「そうそう。魔術を習う者として最高峰であるこのグレニル学園に通う人と、最下位のグレニア学園に通うそっくりな人がいるってなんか不思議じゃない?」

「でも、その最下位の学園って最近あった大会で優勝したんでしょ?」

「本当?ミオの術の練習相手をするより、見に行けばよかったかなー」

「もしかしたから、そのミオに似ている人が優勝したのかな?」

「そうかもね」

 と、三人がヒソヒソと話し続けていると、話を遮るように、白い小鳥達が三人の間に現れ、すり抜けていき、またミオの周りをグルグルと周る。三人がミオと小鳥達を呆然として見ていると、また杖の先をコツンと地面につけたミオ。その杖の先についた音を合図に小鳥達が翼を広げ、どこかへと飛んでいった。その時、ヒラヒラと落ちた小鳥の白い羽根を拾うと、三人の方に振り向いてミオがフフッと笑った

「今日はもう使えそうな術がないか。あの子が帰ってきたら、ちょっとだけ休もうかな」

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