第20話 小鳥の忘れ物
「すぐにやられたの?」
ログと離れてすぐ戻ってきた傷だらけの小鳥を見て困ったように呟く。人差し指に乗せた小鳥にふぅ。と息をかけた
「私の中で、一番強い子だったのに。弱いお姉ちゃんにあの使い魔が側にいるなんて、もったいないね」
息をふきかけた場所に合った傷が消えた小鳥がバサリと翼を広げた
「もう一度、頑張ってね」
そう言うと、窓から小鳥が乗る人差し指を出すと、小鳥がバサバサと翼の音をたて飛び立っていった
「ただいまー!」
部屋の静けさを打ち消す大声とバンッと勢いよく部屋の扉が開いた。窓から出していた手を引き振り向くと、マオが両手を上げうーんと背伸びをしていた
「ミオ、何してるの?」
窓際にいるミオを見て、マオが不思議そうに話しかけると、ミオの長い髪が窓から流れるよそ風でふわりと揺れた
「別になにも……」
ミオが小声で返事をすると、机の上に雑に鞄を置いたマオがニコニコと微笑みミオを背後からぎゅっと抱きしめた
「ミオも授業サボったの?暇なら一緒に遊ぶ?」
ミオの頬にスリスリと顔を寄せながら聞いているマオ。ミオはマオの動きに慣れている様子で、マオに抱きしめられたまま、開けたままの窓を閉めた
「お姉ちゃん、今度の大会って出るの?優勝したから出れるんだよね」
「まあね、でもまだ出れるか分かんないんだ」
「そ、残念。私、出ようかと思っていたのに」
「なんで急に?」
「ただの気まぐれ。お姉ちゃんが出ないのなら今度の大会は私の圧勝かもね」
そうミオが返事した瞬間、閉じたばかりの窓がバンッと勢いよく開いた
「えっ、なに?」
マオが驚いて抱きしめていたミオを離す。部屋の中に強い風が吹いて、ミオが離した小鳥がバサバサと羽根を落としながら部屋の中に入ってきた
「ちょっと、なんの術をしたの?」
「今は教えてあげない」
クスクスと微笑むミオの肩に、また傷だらけになって帰ってきた小鳥が止まった
「ちょっとミオ、本当に……」
マオが心配そうに小鳥を見ながら問いかけると、肩に乗る小鳥をつかんで、ふぅ。と息をかけた。ミオの手のひらの中で、小鳥がバサバサと羽根を動かし、姿を消した
「さてと、魔力を回復するために甘いの食べに行こうっと」
ミオがうーんと背伸びをしながらそう言うと、ミオを険しい顔で見ているマオに気づいてフフッと笑った
「お姉ちゃんも一緒に行く?暇なんでしょ?」
「暇だけど、おやつは遠慮しておく」
「そ、つまんないの」
マオの返事を聞いて、ミオがベッドに置いていた鞄を取り部屋を出た。家の中をパタパタと歩く足音が遠ざかり、開けたままの窓からミオが外に出たのを見届けると、マオが机に置いていた鞄の上に落ちていた小鳥の羽根を拾い、羽根をクルクルと指先で回しながら窓際に戻り空を見上げた
「ミオの魔術のあの小鳥からフランの魔力を感じた気がするけれど……。気のせいかもしれないけれど、後で聞いてみよう……」
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