第18話 その瞳から見えるもの
「ただ住むには良い街だな」
グレニア学園の屋上でログが空を見上げ呟く。そよ風が吹いてログの髪が揺れた時、一瞬視界にピンク色の長い髪が見えた
「フランは優しいな。放っておけばいいのに」
長い髪が見えた先に目線を向けると、ログの背後にいたフランがログの言葉を聞いて驚いた顔をして、肩に乗った
「マオさんとの会話を私の目を使って見ていたんですね」
「フランは僕の使い魔だからね」
「それは、そうですが……」
ログの返事を聞いて不満そうなフランが頬を膨らませる。その様子を横目で見ているログがフフッと笑う
「次はどこに行こうか」
「本当に行くんですか?せっかく学園に通っているのですから、せめて空を飛ぶ術を得てからにしませんか?」
フランの言葉を聞いたログが、肩に乗るフランをつかんだ。ログの手から逃れようとフランがジタバタと動いていると、二人の後ろからまたクスクスと笑う声が聞こえてきた
「どこかに行くのなら僕の家にでも来ますか?」
声が聞こえてきた方にログが振り向く。その時、つかんでいたフランも手放して振り返ると、ユグスがコツっと靴の音をたてながら一歩近づいた
「ホームルームとはいえ、お二人とも、ご飯ばかり食べず、ちゃんと話を聞いて下さいね。さすがに評価に響きますよ」
「見ていたんですか?」
「ええ、君の使い魔がご機嫌でお買い物をしているのを見たので、ちょっと術をかけさせてもらいました」
そう言うとニコリとフランを見る。ユグスと目線が合ったフランが、目が回ったように頭をクラクラと左右に動かす
「お二人して私の目を……」
「同時にかけれたのは、フランの不注意だ」
「それはそうですが……」
フランがはぁ。とため息をつきながら、ログの右肩に乗り座ると、まだ少しクラクラするのか目を閉じたり開いたりしている
「大丈夫か?」
「ええ。ですが、急に二つの術が解かれたのでツラいですね」
返事をしながら、ふぅ。とため息をつくフラン。ログが肩に座っているフランを抱きしめると、ユグスがまた一歩二人に近づき右手を伸ばした
「それで、どうするんですか?僕の家に来ます?」
ニコニコと微笑むユグスを見てログが機嫌の悪そうな顔で顔を横に向いた
「一人暮らしも大変でしょうし、どうですか?」
「遠慮しておきます。住んでいる所から近いですし、旅に行くという感じでもないですから」
ユグスを背にしてそう言うと、屋上から飛び降りた。その直後、ふわりと吹いたそよ風でユグスの髪が揺れ、一人残った屋上で、またクスクスと楽しそうに笑った
「そうでした、旅でしたね。記憶探しも程ほどにしてほしいものですね」
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