第10話 立ち止まった先に

「えっ、二人で大会に出るの?」

「はいっ!なので、手続きおねがいします!」

 帰りのホームルームが終わった後、職員室の前でフランを頭に乗せたマオに呼び止められたレイカが驚きのあまり大声で返事をする。その声で付近に生徒達がレイカとマオのいる方に振り向いた

「えーと……。そうね、大会出場の手続きが必要なのね……」

 近くの生徒やマオとフランの視線を感じ、あたふたと答えるレイカ。その様子にマオとフランが不思議そうに首をかしげた

「ごめんなさいね、長らく魔術の大会とかに出ていないから分からないの。調べるからまた後で詳細とか話すわね」

 そう言うと、バタバタと慌てた様子で職員室に入っていったレイカ。バタンと少し強めに職員室の扉が閉じると、マオがはぁ。とため息をつきながら教室に戻るため廊下を歩きはじめた


「それにしても、長らく大会に出てないなんて、そんなにこの学園は弱いのでしょうか」

「そうみたいだね」

「他のクラスの生徒達を見ても別に魔術が弱いとか感じませんが……」

 窓から魔術練習場を見たフランがそう言うと、マオも練習場で魔術の対戦をする男子生徒達の様子を見る。見はじめてすぐどちらが勝者になるわけでもなく終わった対戦に、マオが残念そうにため息をつき、また廊下を歩きはじめた

「ところでフラン。お昼休みからずっと私と一緒にいるけれど、ログと一緒にいなくてもいいの?」

「ええ、ご主人様が生きていれば、一緒にいなくても大丈夫です」

「……そう、そんなもんなの?」

 フランの言葉を聞いて苦笑いで返事をすると、フランがマオの頭を軽く何度も叩き出した

「それよりもマオさん、もうご自宅に帰りますか?」

「そうしようかな、今日は魔術の練習する気はないし」

 うーんと背伸びをしながらそう言うと、フランがエヘヘと笑いながらマオの前に浮かんで止まった

「それなら一緒におやつでもっ!」

 フランからの提案に驚いたマオが少し目を見開く。その間もニコニコとしながら返事を待つフランにマオもつられて笑う

「じゃあ私のおすすめのお店に行こうか」

「はいっ!すぐに行きましょう!」

 フランの返事を聞いてまた廊下を歩き出したマオの肩に、ご機嫌なフランが乗ると一緒にグレニア学園を後にした





「おや、よく会うね」

 マオとフランがおやつを食べに行く少し前、フランを置いて一人で帰ろうと廊下を歩いていたログが偶然ユグスと出会っていた

「そりゃあ近くにいたら会うでしょう?」

「そうか、それもそうだね」

 出会うなりすぐはぁ。とため息つきながら返事をするログを見て、ユグスもクスクスと笑ながら返事をする

「そういえば……」

 と、ログがユグスに話しかけようとした時、女性職員が二人の方に向かって走ってきた

「ユグスさん、今度の魔術大会に出たいと言う生徒がいるそうで、少しお話が……」

 レイカから話を聞いた女性職員が困った様子でそ声をかけると、ログがその話を聞かないように顔を横に向けた。ログの様子を見つつもユグスが女性職員と会話をしはじめた


「では続きはまた後で……」

 しばらく女性職員と立ち話をした後、去っていった職員に手を振り見送ると、少し離れてみていたログがポツリと呟いた

「忙しそうですね」

 ログの言葉を聞いたユグスが、ログの頭にポンッと手を置いた

「君も無理はしないようにね。この大会が落ち着いたらまた話そう」

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