第6話 それぞれが微笑む理由
「では、午前の魔術の授業は終わりにします。みなさん、初日から大変でしたね。お疲れ様でした」
授業がはじまってしばらく経った頃、ぐったりと疲れた生徒達にレイカが声をかけた。校庭で各自練習をしていた生徒達が声を掛け合い、校庭や門の方へと歩き出した。マオもふぅ。と一息ついて、ログがいた屋上の方を見ようとした時、肩をポンッと叩かれた
「マオ、一緒にご飯食べよ!」
「う、うん……」
返事をした後、話しかけてきたクラスメイトの女子達と一緒に校舎の方へと歩いていく。途中、ちらりと空を見上げて、ふぅ。と一つ深呼吸をした
「フラン食べ過ぎた。魔術に影響が出る」
「ご主人様こそ食べなさすぎで魔術に影響が出ますよ」
その頃ログとフランは、校舎から出て街にある喫茶店でご飯を食べていた。フランの隣にあるたくさん積まれたお皿を見てログがため息つきながら紅茶を飲む。フランが大きく口を開けご飯を食べようとした時、ふと窓からクラスメイトの女子達と歩くマオを見つけた
「あれ?今日はもう終わりですか?」
フランの言葉を聞いてログも窓を見ると、二人がいる喫茶店にある道路の反対側に楽しそうに話すマオを見た
「いや、まだ午後に授業が……」
ログがフランに返事をすると、マオが二人がいる喫茶店の方に振り向いて、一瞬目が合った気がした
「マオさん!」
フランはが手を振りマオを呼ぶが、すぐに視線を外されて先に進んでいたクラスメイト達の後を追いかけるように早歩きしはじめた
「マオさん、行っちゃいましたね」
人混みに消えていくマオの後ろ姿を見ながらフランがしょんぼりと呟く声を聞きながらログが紅茶を全部飲み干した時、二人の間に突然影が現れた
「ここにいたのか」
声が聞こえて振り向くと、グレニア学園の校長のユグスが立っていた。驚いた顔をするフランに対しログは不機嫌そうにため息をついた
「……お久しぶりですね」
ログがそう言うとユグスがフフッと笑った
「学園は慣れたかね?」
「まあ多少は……」
「いえ、私を理由にして授業を受けないんですよ、ちゃんと怒ってください」
「そうだな、せっかく入学したのに確かに授業を受けないのは良くないな」
ログの返事を遮って怒った声で言うフランにユグスが今度はクスクスと笑う
「今、二人が楽しんでいるみたいなら、話はまた今度にしようか」
そう言うと、二人に背を向け入り口の方へと歩き出したユグスの姿を喫茶店にいた人達がユグスの姿を見つめている。ログも帰ろうとしているユグスの後ろ姿を見ていると、視線に気づいたのかユグスが振り向きログとフランの方を見た
「いつでも話においで」
二人に向かってそう言い喫茶店を出ると、お店の中が一気に静かになった。喫茶店にいた客が再びお喋りや食事をしはじめると、ユグスがいた時とはまた違う騒がしさがお店の中に流れはじめた
「目立つからぼくの前に来るなと言っているのに……」
「ご主人様がまったく会いに行かないからですよ」
「今は忙しそうだからな……」
「誰が忙しいの?」
また二人の間に現れた影と聞きなれた声が聞こえてきてフランが驚いて振り向くと、さっき窓から見たはずのマオが二人の前に立っていた
「あれ?さっき外で……」
「フランの姿が見えたから来ちゃった」
不思議そうに聞いたフランに返事をしながらログに向かい合うように座った
「私もなにか頼もうかなー」
フランの隣にある注文表を取り、フランと一緒に注文表をめくり、何を食べようかと悩みはじめた
「ねえ、フランは何を頼んだの?」
「えーっと、私は……」
フランが指を差そうとした時、三人がいる席に大量の食事を持った店員がやって来た
「おまたせしました、どうぞ」
次々にフランが注文した食事がテーブルに置かれていく。あっという間にテーブルいっぱいに置かれた食事の量にマオが戸惑っている隣でフランが嬉しそうにニコニコと微笑んでいる
「これ全部フランの分だ。ちなみにこれは追加分」
「えっ、じゃあログのは?」
と、向かいに座るログを見ると、一緒に来ていた紅茶を一口飲んでいた。まだ戸惑うマオの隣でご飯を食べるため、フランが大きく口を開けた
「マオさん、私のご飯がたくさんのあるので先にいただきますね!」
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