4月19日

 麻雀。はじめて生で牌を触ったのはドラえもんドンジャラをノーカンとすると高校生の頃。通っていた塾の塾長に教えてもらったのだ。察しのいい方は気づいておられるかもしれないがワンポコの飼い主です。塾長は賭けカスで毎日パチンコに通うような、その所為で授業も飛んだりするとんでもないオヤジだった。ただそのフォローにはならないし何とは言わないがこのオヤジは遊びを沢山知っていたので数学の時間こそ大体が自習なのに麻雀のルールはみっちり教えてくれた。一応断っておきますが賭けカスに伝授されたからといって俺自身が何かを賭けて打ったわけじゃありません。麻雀で賭博行為に及ぶことは日本の法律で禁じられています。やめましょう。

 勉強を真面目に教えてもらった記憶はほとんどないがあまり聞こえのよろしくないことはよく教えてくれる。人としては終わっていたが当時は懐いていた部分もあり、塾の時間が終わってから俺ともうひとり同学年の友達と塾長の三人でエッチなビデオを鑑賞していたら忘れ物を取りに戻ってきた英語担当の女性の先生に見つかって三人まとめて説教されたなんてこともあった。

 それはさておき初めこそよく分からなかった麻雀とかいうゲームも理解が深まるに連れてその面白さもわかってきた。ただ絵柄を揃えるだけではなく揃え方にも法則性があって、一見似たような並びでも組み立て方の難易度によって点数の上下がある。当時はだいたい集まりの関係で三麻といって三人打ちルールでやっていたがオーソドックスなのは四人打ちになる。三人と四人でも少しルールが違って深い話になってくるのでここでは割愛するけれどひと言でいうと俺はすっかり麻雀が楽しくなっていた。

 高校卒業を控え進路も決まっていた俺は塾もやめ、それに伴って麻雀も打たなくなっていった。ハロルド作石の漫画『BECK』を読んで以来これからはロックやでとなっていた俺はどうやってギターを手に入れるかみたいなことだけ考えていた。大学進学後、念願叶って軽音学部に入部した俺はしばらく楽器練習とバンド活動に勤しむことになり麻雀の麻の字も思い出さない日々を過ごす。それも三年近く経った頃、一部の部員の中で麻雀が浸透し始めどうやら毎晩打っているらしいと耳にした俺はまたそれと再会する。麻雀というゲームは不思議なもので割りと如実に人間性が出てしまう節がありそこもおもしろい。打ち方一つとっても人それぞれのロジックがあって奥が深い。


 今もそこそこやっている。専らネットゲームで、実卓で打つなんてことはもう長らくしていないが時折集まって卓を囲む仲の人達にも恵まれた。社会人になって仕事以外に付き合いの広がりなんてありゃしないと感じていた頃の俺からしてみるとありがたい話である。この機会に新たに始めた人達もいて賑やかだ。経験値も多様であれど経験者は親切に教えてくれる優しい世界。そんな優しい世界で俺は今、西日本で一番弱い打ち手ということになっている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る