曇天

女のあどけなさ、清楚、純潔、それは目覚める感じであった。それは、たしかに、花である。なんと、美しい犯罪だろうかと俺は思う。まるで、美しいこと自体が犯罪であるかのように思われる。俺は無貞操という訳ではない。たしかに先天的な犯罪者というべきだろう。もしかすると殺人ぐらいも――その想念は氷のように美しかった。鬼とは違う。花自体が犯罪の意志なのだ。その外の何物でもない。

 俺は思想家ではない。でも、自分自身の思想を土台にして、きわめて気分的に、肉体のない、ただ魂だけの恋ということを考えていた。長々それを思い耽り、それが幻想的であり、気分的であることを疑りもしていない。

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