第18話 増えていく謎

一通りラミューの持っている情報を引き出した。現時点で分からない事は、全て聞いたと思う。


まず『奴』と言っていた黒幕のことだ。名は『センバルク・ハンブル』と言う。

名前を聞いただけで、誰でも察しがつくだろう。ハンブル国にも王がいたのだ。


つまりその王の子孫というわけである。ハンブル『王国』ではなくハンブル『国』なのかと言う疑問に対しては分からないとの事だった。


ではどうやってノーブル王国に侵入し、色皇魔術師として潜伏していたのか。


番人がいようがいまいが、ノーブル王国に入ろうと思えば簡単に入れるだろう。


しかし魔力の動きで不法侵入者だと勘づかれ、安易に炙り出される。


だがラミューは王国に侵入したあと、「熟蒼マトゥーロ・ブルー」という魔術で記憶を改ざんしたらしい。


元々セライド・ラミューという人間が居たという情報を植え付けたのだ。そんな恐ろしい魔術は今僕の手にある。はぁー怖い怖い。


その後、人型の魔物が現れ、無数の魔物を湧かせる。その流れで、国王は結界を張るのだが、これは作戦のうちだった。


ノーブル王国には国王+レクタル、ラグナム、ラルディの色皇魔術師3人が居る。たった1人では王国を破壊しようにも破壊出来ない。


ラミューの裏で動いていたセンバルクは最初から勝てないことを悟っていたのだ。国王はまんまと作戦に乗っかってしまった。


そしてあの事件が起こった。敵の作戦は上手く進行していたのだ。僕がラミューに触れるまでは……。


◇◆◇◆◇◆


――魔物が襲来してから1日後。


王女カーラルは即位し、王位を父から継承した。


僕と色皇魔術師の3人、そしてラミューは今までの出来事を全てカーラルに伝えた。


王女の判断により、ラミューの処分は1ヶ月間の重労働が課せられた。


で、僕は魔剣士学校の強制退学をカーラルに命じられた。黒の色皇魔術師(仮)になり、魔剣士学校にいる意味が無くなったからだそうだ。


手に持ってたソフトクリームを落とした時くらい、ガッカリした。


セキハやタツヤとは当分会えないのもそうだが、それよりも衣食住無料キャンペーンの終了が1番大きい。


色皇魔術師の主な仕事は、街の見回りだ。現在進行形で街を回っているのだが、これが結構退屈である。


(ああ、学校生活に戻りたいなぁー)


あの生活がどれだけ楽しかったことか。


暇すぎて剣を取り出したり、しまったりを繰り返して歩く。


それにしても、剣を使えるのは何故なのだろうか。剣はスターターセットに付属されていたはずだ。国王が死んだ後も取り出せるし、しまう事も出来る。


それと、自分が色皇魔術師だということにまだ実感が湧いていない。もしかしたら色皇魔術師以外の別の何かなのかもしれない。


というか、思い返してみれば疲れがなかったのも、筋トレが楽だったのも、おそらくスターターセットと色皇魔術師の効果が、重複していたからだろう。


この世界はまだまだ分からないことだらけだ。


――しばらく歩いていると。


「あれ、レイサさん学校じゃないの?」


「……そうだよ」


僕の目は正しかった。レイサは何故か噴水近くのベンチにちょこんと腰掛けていた。僕は恐る恐る横に座る。


「サボり?」


「違うよ。噴水を眺めてるだけ」


レイサは即答した。


「ああ、そう」


(それをサボりって言うんじゃないのか……)


レイサの考えていることはいつも分からなかった。


「ラミューを監視しないの」


「別にいいんじゃない。魔術も使えないんだし」


「へぇー」


一点を見つめながら、棒読みで言うレイサ。根拠は無いが、何かしらの秘密を持っている気がする。


「あの時、ラミューの元へ向かわせたのはなんで?」


「何となくだよ。理由なんてない」


「でもあの催促がなかったら、王国は消滅してた。本当は何か知ってたんじゃないの?」


「んー。直感ってやつかな」


曖昧な回答を続けるレイサ。ただの転生者じゃ無さそうだ。一体何者なのだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る