にじのてがみ

菜の花のおしたし

第1話 りんごは皮だけ赤い

覚えてるかな。

小学生の五年だった。


たまたま、仲良しの友達が扁桃腺の手術をすることになったんや。

お見舞いに行った帰り道。

ふと、寄り道したなってん。

冒険気分で学区外にある公園を偵察や。



ごっつデッカい公園やんか。

うちらの学区にはあらへんのに。

めちゃんくそ悔しなったわ。


「あの、お姉ちゃん誰?」

後から声をかけるやん、ピクっとするやんか。

そこは、うちらの場所ちゃうしな

よそもんが入ったら、あかんねん。


「あんなー、お見舞いに行ってたんや。

ほんでやで、迷子になったんよ。」


うちはビビリながら振り向いたんや。

なんや?

このおチビは?

髪の毛伸ばし放題やーん。

痩せてるなぁ。

服もきったないし、ボロや。


「あんた、小学生か?」


「うん、3年、、。」


私はわかった。その子がどんな子なんかが。


「あ。そうや、お見舞い行ったら持って行き

言うてな、りんご貰ってんな。

あんた食べるか?」


「知らん人が貰ったあかんって先生言うてるし。」


「アホか?先生なんか信じてんのんかいな。

大人の言う事なんか嘘ばっかりや。

りんご、半分こしよか?

よーし、ほなら、りんごを空手チョップするわ。

あかんな、割れへんな。

って言うか、こーゆーときな、割れる訳ないやろーってツッコミ入れるんやで!」


「僕、ツッコミとか知らんし。」


「まっ、ええわ。ほな、公園にりんご切れそうなもんが落ちてへんか探そか?

行くでー!えいえいおー!!」


石で平べったくて、包丁みたいなん無いかな、

ブリキの切れ端は無いんか?


「お姉ちゃん、釘あったよー。」


「おう!やるやーん。

錆びてるなぁ。公園の水飲み場で洗おうか。

よしよし、ええ感じやな。

これをな、ざくざくと刺していくねん。

やってみー。」


「うん、うーん、かったいなぁ、、。」


「あほやな。こんな時はな、石でうつねん。

やってみー。そや、上手い上手い!」


「お姉ちゃん、ほら、見てや。

だんだん割れてきたでー!」


「ほなな、手で割ってみ。

そや、力入れてな。ぱかーーんや。[


りんごは二つに割れた。

ふたりで万歳したんや。


「あんた大きい方食べ。」

ふたりでりんご齧り付いた。

蜜入りりんごやから、甘かった。


「あっまーー。たまらんなぁ。ふふふ。[


「うん、あまいねぇ。」


あの日、二人で食べたりんごの味、

忘れられないんだ。




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