異世界で自由気ままにお店を開こう
幟
第1話 孤児院卒業
この世界に転生して早7年、今日俺はこの孤児院を卒業する。
卒業と言えばいいように聞こえるが、七歳になると銀貨一枚を渡されておさらばという淡白な扱いである。まあ孤児院はどこも寄付や領主などから渡される運営費の中でやりくりしないといけないのでどこもいっぱいいっぱいなのだ。
ここで渡される銀貨一枚は日本円で1万円の価値があり銅貨が1枚100円・銀貨が1万円・金貨が1枚100万円・白金貨が1枚1億円となっている。そしてこれはギルドに登録するためのお金であり実質無一文で孤児院を追い出される。
深く考えても仕方がないのでさっそく商業ギルドへと向かう。孤児院育ちの人は役に立つスキルはなく冒険者ギルドに登録して雑用から始めるのが一般的だが、俺は転生ボーナスなのか異界召喚というものを持っていた。
このスキルは異界の物(者)を呼び出すことができる。呼び出したもの格が高ければ高いほど多くの魔力を消費するが呼び出したものは消えずこの世にとどまるので食べ物なんかも呼ぶことができるのだ。この力を使えば楽に商売ができるから商業ギルドへと俺は向かう。
それから孤児院でボッチを貫いたため冒険者になったときのパーティーが組めないからという理由もある。違うぞ!ハブられたわけじゃないからな。自分の意志であいつらから離れたんだ。決して友達の輪の中に入れてもらえなかったわけじゃない。
ギルドに着き受付へと顔を出す。異世界ものだと女性の受付ばかりだがこの世界には男性の受付も多くいるみたいだ。
「こんにちは!登録に来ました!」
「こんにちは。孤児院の子かな?卒業してここに来るのは珍しいね。登録料の銀貨は持っているかい?」
「はい!」
銀貨を手渡すと用紙を渡される。
「ここに名前と血を一滴たらしてくれるかな?この針を使ってくれればいいからね。気を付けてね。」
名前はアルファで血は少し勇気がいるな。えい!
「アルファ君ね。これがギルドカードで再発行には金貨1枚かかるからなくさないように。これで登録話終わりだけど、どんなことをやるか決まっているかい?」
「好きな日に好きなものを売る自由気ままな商売をやろうと思いまして、どこか場所を貸してほしいです。」
「それなら露天商から始めるしかないね。お店を買うお金もないだろうし露店売り場に行けばどこでもタダで開けるからまずはそこから始めるといいよ。頑張ってね。」
「ありがとうございます!早速行ってきます。お兄さんの名前はなんて言いますか?」
「僕かい?僕の名前はリッツよろしく。」
「リッツさん、これはお近づきのしるしです。これからよろしくお願いします。それじゃあ!」
リッツさんに飴玉がいくつか入った木箱を手渡しギルドを後にした。
~~~~~~~~~~~~~
「やっぱり子供は元気がいいな~。それにしても何をくれたんだろうか?」
箱を開けると色とりどりの球が入っていた。
「石かな?それにしてはなんだか甘い香りがするような・・・。」
1つ手に取りなめてみると
「甘い!これは飴か!!」
いや~こんな高価なものをもらえるとは。アルファ君はほんとに孤児院の子だったのだろうか?本人が否定しないのだからそっとしておくに限るな。まだたくさん入っているみたいだし大切に食べることにしよう。
「せーんーぱーい。甘い飴がもらえたみたいでかわいい後輩におすそ分けとかないですかね?」
うぐっ!しまった驚きのあまり声を上げてしまった。
周りを見ると飴を求めるハイエナたちがこちらを凝視していた。
「これは僕へのプレゼントだからね、分けてしまっては彼に申し訳ない。」
「それなら先輩だけではなくギルドへのお近づきのしるしと解釈すればいいのでは?そうすれば多くのギルド員が彼の助けになると思いますけど・・・。少なくとも私は彼の力になりますよ。」
その言葉を皮切りに俺も私もと声が上がり一つまた一つと飴が減っていく。たくさんあったはずの飴はわずか2つになってしまった。
その日のギルドは一人の男性を覗きみんなが上機嫌であったらしい。
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