早乙女皐月の日常
@harapekopannakotta
むしくい
いかん、うとうとしていた。授業中だというのにこの体たらくだ。一応真面目に生きているつもりだが学校で居眠りとはけしからん。学生たるもの勉学に励むべし──◼︎◼︎でも食べて眠気を誤魔化──◼︎◼︎?そう、いつも愛用しているもの。コーヒー味が好きだ。制服の右ポケットに常備しているが、無いな。そう遠くにはいないだろう。うとうとしていた間にやられたと考えると机かカバンかそこらといったところか。
「さて…」
机を覗き込むと、そこにはピーピーと鳴きながら箱を背負っている四つん這いの小人……?いや脚は6本あるし人でも四つん這いでもないのかもしれないが、ナニカがいた。
「悪いんだが、それ、返してもらえると助かるな。こちらから一つ渡す分には構わん。箱は置いていってくれ」
おずおずと箱を差し出してくる。受け取るとともにああ、なんてことはない。ガムだ、そうだ。一つ包みを開けてナニカに渡すと口に咥えて窓から去っていった。換気は大事だな、などと想いながら自分も一つ。
「──くん!早乙女くん!聞いてますか!」
教師に名前を呼ばれている。気が逸れていた。真面目に生きる学生たるもの、問題に当てられたら完璧に回答するのが理想だ。
「授業中にお菓子を食べないでください!」
それは──そうだな。
帰路に着く。今日も出逢ってしまった。『むしくい』というやつだろう。『むしくい』に物を食われると文字通り虫喰い状態に、知識に穴が空く。今回は未遂だったので踏みとどまれたが、失われたものはきっとどこにでもあるのだろう。そういったあまり世間に知られてないイタズラ好きなモノは視えていないだけでその辺に適当にいくらでも存在する。どうやら俺は視えやすく惹かれやすい体質らしい。この体質と付き合っていくことにはもう慣れはしたが──
「急に来られてもそれなりに驚くし困るんだよな」
なんて普通の感想を呟きとぼとぼと歩いていくのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます