Day.6 死神少女の真相
Day.6-1 少年のやり残したことと想い
レイカの住処に戻った
今日を入れて残り二日しかないのだ。
昨日の満奈美の地獄行きの様子を見てから繋希の中には不安な気持ちが渦巻いていた。
レイカの役目において、そこに私情を挟みそうになったら正してほしい。
それが繋希の役目である。今日に至るまで何度か私情を挟んでいる様子は見受けられたが、いずれも私情で役目の結果を変えていない等により認められなかった。
そもそも、私情で結果、すなわち行先を変える事が出来るのだろうか。
結果が出た時点で扉が出現するのは何度も見ている。故にそこから変える術など存在するのだろうか。
そう自らの内に生まれた疑問について考える繋希。
まぁでも、初めと比べたらレイカも人間だったんだって思えるくらいには感情が見えつつあるし、もしかしたら残りの二日間でそういう事があるかもしれない。
そう自らに言い聞かせて、とりあえずの落ち着きを保った。
「うかない顔ね」
いつの間にかレイカが部屋に入ってきており、繋希の隣で言うと疑問の表情を浮かべた。
「役目の事?」
繋希は答えない。
「大丈夫よ。繋希君がこっちに来てから私には今までにない変化が生まれてるわ。繋希君の役目の達成は私も願うところであるけど、私も私で自分の役目に私情を挟むわけにはいかない。それこそ執行の瞬間には特にね」
「地獄行きだけは勘弁だな……」
気持ちを落ち着かせているとはいえ、やはり昨日のあの光景が繋希を悩ませていた。
「俺にはまだ現世でやり残したことがある。
「気持ちって。あなた、その愛慈って子に惚れてたとか?」
「そりゃ。愛慈は俺の一番の理解者で一緒にいると落ち着くんだ。それに、他のどの女子よりも魅力的なんだ。小学生の時に好きになってかれこれもう十年近い片思いだよ」
レイカに何を言ってるんだか。言ったところでレイカが慈悲を与えてくれるわけがないのに。
そう思いながらも繋希は真剣に語った。
「そう。でもそんなに好きなら向こうも気が付いてるんじゃない? 女ってそんなに鈍感な生き物じゃないと思うけど?」
「そうかもな。でも言葉にしなきゃこの想いは決着しないんだ。言って欲しかったとそう思ってくれていたなら俺は嬉しい。でも逆に言って欲しくなかったのであれば、このまま言わない方がお互いに幸せなのかもしれない。でもこんな事になるなら、あの日に言っておけば良かったよ」
繋希の中に最後に会った幼き日の記憶が蘇る。
「あの時、一緒にいられる時間をもっと作れていたら。俺が勇気を出せていれば今もこんなに後悔をしていなかったんだと思うよ」
繋希が過去を思い返すように空を見上げるも、そこには分厚い暗雲が無風のせいで一切動かずにどっしりと留まっていた。
「ごめんな。こんな事をレイカに言ってもどうにもならないよな。忘れてくれ。ところで、今日は誰も来ないのか?」
「今日はまだね。でもそろそろ来る。そんな気がするわ。でもなんだろう。なんか嫌な予感がするのよね」
「規定の千人まで残り二人ってところで嫌な予感か? それは心配になるな」
「そうね。……私にも達成したら叶えたい事があるの。だから絶対にやり遂げなきゃいけないんだけど、こんな気持ちになったのは初めてね」
レイカも繋希と同じく、空に浮かぶ不穏な雲のような気持ちなのだろう。その顔はいつもと違って覇気というか、元気が無いように見えた。
「そろそろレイカの、その叶えたい事を教えてくれてもいいんじゃないか? 泣いても笑っても俺は残り二日なんだし」
「そうね。ケーキを食べに行くか、疲れたから眠たいわね」
「なるほど。どうせ嘘なんだろ?」
「もちろんよ。ただ言ってみただけよ」
最後まで教える気が無いに違いないと悟った繋希は、まあいいかと椅子に座った。
「……あ。来たわね」
「え、今座ったばかり……」
「関係無いわ。ほら立って。行くわよ」
繋希はいつも通り腕を掴まれると、部屋から引っ張り出されてその場所へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます