第4話

「なぁ、最近忙しいん?」

 週末、今回は私の部屋へ秀吾が遊びに来ていた。

「そうでもないけど、なんで?」

「いや、メッセージが素っ気ない気がしてさ」

「あぁ……実はね、ネット小説が面白くて、夢中になってた」

 そういえば、途中で遮られるのが嫌で秀吾とのメッセージのやり取りを放置することもあったっけ、ごめん。でも良い場面は一気に読みたいんだもん。

「そんなに面白いん? 京香が読書好きなのは知ってるけどさぁ」

「そうなんだよ、百合小説なんだけど知ってる? 女性同士の恋愛ものね」

「え、レズ?」

「うん、レズビアン」

「へぇぇぇ……」

 秀吾の反応は、拒否的ではなくて。逆になんだか……

「えっ、なにその顔」

「いやあれだろ、綺麗なお姉さん同士の絡み? うん、いいよなぁ」

「はっ、なんかいやらしい想像してない?」

 AVの見すぎじゃないの?

「え、でも付き合ったらそういうこともするんだろ?」

「それはそうかもしれないけど……あくまでフィクションだから。それにね、百合は尊いんだよ」

 なぜか馬鹿にされた気がして悔しいから力説してしまう。

「百合っていう花はね、純潔とか純白とか女性的なイメージでしょ、さらに凛とした佇まいがこう、威厳を感じるし母性の高貴な感じがするでしょ?」

「あぁはいはい、じゃあさ、フィクションじゃなくて京香も経験してみなよ」

「え?」

「俺は相手が女性なら全然気にしないから」

 なんで、俺って心広いだろ! みたいにドヤってるんだろう。

「そっか、そうしてみようかな。はは」

 単なる掛け合いで、秀吾も私も本気で言っているわけではない、筈だ。

 その後は普段通りに過ごしているし、普通に致しているし、ただまぁなんとなくしっくりこないってだけ。

 鬱々とした気持ちを晴らすために、秀吾が眠るベッドを抜け出し、私はネット小説の世界へトリップした。

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