第3話
あのブライダルサイトの同性婚の記事をきっかけに、私は検索をかける。
LGBTーーレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー。
同性婚、パートナーシップ制度。
カミングアウト、アウティング。
それらの意味と、それらの言葉が注目されるようになったいろいろな事象を。
平々凡々に生きてきた私には知らないことが多かった。言葉だけは知っていても詳しく知ろうと思っていなかったのだと思う。もしかしたら知らずに誰かを傷つけていたのかもしれないな。
私は子供の頃から本が好きで、学校の中では図書室が居心地の良い場所だった。スマホを持てなかった頃は図書室で調べ物をするのも好きだったし、そこで絵本や小説も読んでいた。
今でも本屋に立ち寄ることはあるが、手軽さという点でネット小説を読むことが多い。基本的にデートは週末なので、平日の夜は自分の時間が確保できるから。推理小説やSFものも好きだが、最近はもっぱら恋愛ものに嵌っている。片想いが実り恋人関係となり、いろんな困難を乗り越え結婚というゴールへ辿り着く。ハッピーエンドは自分のことのように嬉しい。だから私もいつかは……と思ってしまうのだ。
その日も何事もなく仕事が定時で終わり帰宅、食事も入浴も終えて平凡な一日が終わろうとしていた。ふと、同性婚や同性愛のことが頭に浮かび小説を探してみる。当事者がどのようなことを思い日々を暮らしているのか、フィクションであることはわかった上で覗いてみたくなったのだ。
「これはーー」
読み終えて思わず口から零れた。目を閉じて余韻に浸りながら心を落ち着かせる。そうしないと叫び出しそうなほど心が揺れ動いて震えていた。
この気持ちを言葉にすれば、感動という二文字になるのだろうか。あぁ、私にもっと語彙力があったなら……声を大にしていろんな人に伝えるのに。
そうして嵌っていった百合小説ーー女性同士の恋愛もの。
今まで読んだことないジャンルというのもあるけれど、どの作品も新鮮だった。繊細で温もりがあってお互いを思いやる関係が美しいと思う、同性だから分かり合えるのだろうか。
もちろん、同性同士ゆえの障害もある。結婚という制度、子供という存在、マイノリティがゆえの孤独、切ない物語にも涙し、この二人には幸せになってほしいと切実にそう思った。
百合小説ファンになった私は、特に気になる作家さんを見つけてしまった。
その推し作家の作品の主人公は、平凡だけど素直で一途な女の子、女性に恋をして戸惑いながらも自分の気持ちに正直に向き合っていく。
情景が浮かびやすいためか、まるで私が主人公のように物語へトリップしていくのだ。
いつしか私は、ネット小説を読むことが日々の生活の中での癒しの時間になっていた。そして、恋愛ものを読もうとした時、百合しか読めないのは何故だろう。もしかしたら……なんてね。
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