第2話

「いやぁ、良かった! やっぱり終盤に逆転して勝つのは最高だな。今日は祝杯だ」

 負けず嫌いな性格の秀吾は勝った時は上機嫌で飲む。負けた時はあそこで打たれたのが痛かったとか、全く打てない打線を嘆いてみたり、あーだこーだ愚痴りながら反省会と称して、まぁ結局飲むのだが。

「そうだねぇ、チャンスもいっぱいあったから応援も盛り上がったしね、楽しかったぁ」

 夜遅くなった日は秀吾の部屋へやってきて、このままお泊まりコースが定番だ。球場でお腹は満たされていたので、軽いおつまみと缶ビールで余韻を楽しむ。


「何それ?」

 秀吾が私の手にしたポストカードを覗き見る。

「これね、秋穂ちゃんに貰ったの。和くんと一緒にブライダルフェアに行ったんだって」

「へぇ」

 秋穂ちゃんは私の同僚で、私と秀吾が出会った会社主催の異業種交流セミナーにも参加していたから、秀吾とも顔馴染みだ。和樹くんは秋穂ちゃんが学生の頃から付き合っている彼で、二人はつい最近婚約した。

「このQRコードからサイトにアクセスしてアンケートに答えるとアイスの引換券貰えるんだって」

「へぇ……なに、ブライダル特集?」

 サイトは大手の結婚式場が運営しているらしい。

「こういうの、興味ない?」

「んん、ないことも、ない」

 そう言いながらも、私がアンケートに答えている間は興味なさそうにチマチマ飲んでいた。

 結婚前提で付き合っているとはいえ、具体的になってくると尻込みする男性は多いと聞く、私もそれほど焦っているわけではないからせっついたりはしないけど……少しだけモヤる。


「あぁ、アイス食べたくなってきた。コンビニ行ってくるわ」

「あぁ、うん」

 さっき私がアイスって言葉を言ったからかな、まぁ飲んだ後は食べたくなる気持ちもわからないではない。

 私はアンケートを終えて、タブレットを何度かスワイプし手を止める。

「なにこれ!」

 もやもやした気持ちが一気に晴れるような一枚の写真。

 青い空と海、一面の白い砂浜に佇む純白のウェディングドレスの女性。

 ブライダル特集なのだからこういう写真もあるだろうが、この写真にはドレス姿の女性が二人だったのだ。

「同性婚?」

 私は特集記事を夢中になって読み始める。なぜなら、写真の二人の笑顔が素敵だったから。すました笑顔ではなく、心から滲み出ているようなそんな幸せそうな顔をしていたから。

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