翌日~終業式20分前~
――― 結局、ハルは家には帰って来なかったーーー。
教室に入ると、ハルは自分の席に座り机の上で顔を伏せて眠っていた。
「あ、ハ…ル…」
『昨日はどこ行ってたの?』って、もしも教室に入って、ハルが学校に
来ていたら、聞いてやろうと思っていたけど、あまりにも無防備で、
幸せそうなハルの寝顔を見ていたら、何も言えなくなって、私は自分の
席に静かに腰を下ろした。
「えーっと、明日から冬休みに入るけど、くれぐれもケガや事故のないように。
これから受験や就職を控えている者は病気や事故、ケガのないように…」
相変わらず小早川先生の話は長いーーー
っていうか、ケガや事故って…2回も繰り返し言ってるし…
「それじゃ、体育館で終業式を行うので速やかに移動してくさい」
「はーい」
めんどいなあ…
教室をゾロゾロと出て行く足音はだるそうに体育館へと向かっている。
私は隣で寝ているハルに視線を向けると、
「ハル、起きて」と体を揺さぶり起こす。
「んー?」
ハルは寝ぼけた目をこする。
「体育館だって。終業式だよ」
「ヘイ、ヘイ」
そう言って、ハルはフラフラしながら教室を出て行く。
「ハル君、大丈夫?」
那波が青葉に近寄り声をかける。
「んー」
心配そうにハルの後ろ姿を眺める二人のとこへ
千里が合流する。
「私達も行こうか」
「うん」
三人は教室を出て行く。
「わざわざ修業式を体育館でやらなくてもいいのにね。
めんどくさい――」
「アオはそういうの嫌いだもんね」
「だってさ、話聞いてるだけで眠くなるんだもん」
「ああ、アレでしょ。終業式が終わった後にさ学園祭の説明があるからじゃないの。
ねぇ、千里、今年の学園祭は何するの?」
「さあ…?」
「さあ…って」
「だって、清野君が全部一人で決めちゃって何も言ってくれないし…」
「え…?」
ハルが一人で? まさか…その準備で毎日遅く帰って来てたの?
「ねぇ、アオはさ…何か聞いてる?」
「え…別に…」
「ねぇ、去年はさ、つまらなかったよね。わけの分からない漫才師が来て
笑えない漫才ネタ永遠やっててさ…めっちゃシラケてた」
「う…ん」
不安気な表情を浮かべ、上の空で千里が答える。
「今年は誰か呼んでるの? あー私はさ、Be happyに来て欲しいな」
「そんな、有名なアーティストを呼べるほど、この学園にそんな予算なんか
ないわよ」
「まあ、確かにね。Be happyってさ、ウチの学園が母校なんでしょう」
「え?」
「母校の縁で来てくれないかなあ…」
「それはナイはね」
「だよね、、、あー、ユウジの歌声、生で聴きたーい 」
「え、やっぱり、私は…亨かな…」
「へぇ…千里って亨みたいなのがタイプなんだ。秀才はやっぱり頭がいい人を
選ぶんだね…」
「え…別に…」
「Be happyも4月にメジャーデビューするんだよね。ユーチューブで言ってた。
私さ上京したら絶対、Be happyのライブ行くんだ。ねぇ、千里も一緒に行かない?」
「あっ…那波…」
千里は那波に視線を送ると、青葉の方をチラホラと気にしながら話を中断した。
「あ、…そうだね」
那波も千里の言動に気づいたのか、青葉に視線を向け気にする。
二人にそんな風に気を使わせているなんて、青葉は全然気づいていなかった。
――というより、二人の会話など殆ど聞いていなかったのだ。
青葉の頭の中にあったのはハルの事だけだった。
ハルはどうして私に何も言わないの?
昔はさ、くだらない事でも何でも話をしていたのに……
最近はすれ違いも多く、言葉数も減ってきた………
多分、そう、距離をとっていたのは私だ……
その空気が、ハルに距離をとらせてしまった、、、、、
ごめんね、、、ハル、、、、
ハル…… ごめん、、、、、、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます