世界最高峰に君臨する美少女はモブに興味津々です
月城レン
第一章 イギリスから来た美少女
プロローグ
学校の正門前にある桜の並木道を歩いていたら、突然スマートフォンから着信音が鳴り出した。
「誰だろう?」
僕は生粋のぼっちモブ。友達なんていない。なのに、着信音が鳴った。
まあ、見当は付いている。
「音羽か。何だろう」
画面を操作してメールを開く。内容は――――。
「え!? 転校!!」
保育園の頃まで幼馴染だった女の子・高梨音羽が、僕が通う高校に転校してくる。しかも、明日からだ。これは喜ぶしかない。
「何年ぶりだろう。会えるの」
ドキドキが止まらない。だって、音羽は僕の初恋の人。ぼっちの僕が唯一心を許している相手だ。嬉しくないなんて絶対ありえない。
「よし! あとでお母さんにも教えてあげよう」
僕は学校に向けて走り出した。
*
進級したてで、クラスメイトが変わったばかりなのに教室の中は賑やかだ。幸い、いじめが起こる様子はない。ぼっちは、いじめの対象になると聞くけど、この様子だとなさそうかな。僕以外にもひとりでいる人がいるし、大丈夫だろう。
「立花君、おはよう!」
「あっ、おはよう!」
一年の時のクラスメイトだ。少しでも知り合いがいると安心するな。
「おいおい、立花聞いたか? 転校生がふたりも来るって」
「転校生? ふたりも?」
「そう、ふたりだ。あ~、楽しみだな」
一年の時のクラスメイト・高野君が目を輝かせている。
何がそんなに楽しみなんだろう。ひとりは分かるけど、もうひとりは……。
「皆、おはよう! 早く席に着け~」
「やべっ!」
高野君が慌てて席に着いた。
ん? 担任の先生の様子が少し変だ。そわそわしている。
「えーっと、話は聞いていると思うが、明日からこのクラスに転校生がふたり来る。名前は、アレクシア・クリフォードさんと高梨音羽さんだ」
ほら、当たった。それより、もうひとりのアレクシアさんって……?
「アレクシアさんはイギリスからの留学生だ。分からないことがあったら、色々教えてあげるように」
「はーい!」
クラスメイトがやる気に満ちている。それより、アレクシアさんってイギリス人なのか。興味がわいてきた。
「それと、男子生徒諸君。くれぐれも暴走しないように」
ゴクリと唾を飲む、男子生徒諸君。何を狙っている。
「まあ、何かあったら退学になるから、そんなことするわけないか」
ふたりに関する噂で、美人だという話が上がっている。
もしそうなら、音羽も人気者になるに違いな――じゃなくて、音羽が人気者になったら僕が困る。僕には、ぼっち脱却という夢があるんだ。みすみす音羽を他の男子に渡すわけにはいかない!
「では、始業式に出席しよう。全員、移動開始!」
「はーい」
アレクシアさんのことも気になるけど、音羽とも色々話をしたい。でも、何故か『イギリス人のアレクシアさん』に対してとても興味がある。コミュニケーションがとれるか分からないけど、一度くらいは話ができるよう頑張ろう。
「立花、いくぞ」
「うん」
友達ではないけど、高野君は当然のように声を掛けてくれる。本当に良い人だな。
ん? もしかして、僕だけが友達と思っていない?
いや、そんなわけない……か?
「どんな子だろう。楽しみだね」
クラスメイトの女子達も楽しみにしている。アレクシアさんって本当にどんな人だろう。優しい人なら男子が期待するかもしれない。
「おい、聞いたか? 隣に美少女がふたりも転校してくるって」
「それ聞いた。マジでドキドキするよな」
他のクラスの生徒も同じことを言っている。噂とは本当に恐ろしいものだ。ひとりが言えば、十人に広がる。それだけ、話のネタが欲しいのだろう。女子なんか、その話で持ちきりだ。
「皆、体育館では静かにな」
西川先生を先頭にして体育館に入った。いよいよ、始業式だ。
と言っても、この学校の行事はすぐ終わる。校長先生の無駄を省く精神がそうさせているとか。生徒にとっては嬉しいけど、あっけなく終わると戸惑うものがある。
先生たちはどう思っているのだろう。少しは他の学校の様にしてほしいとか?
まあ、コロナウィルスが流行ったから反対はしないだろう。もし、そんなことをすれば指導が入って面倒なことになる。生徒達も巻き添え、ということだ。
『それでは、始業式を始めます。全員、起立!』
マイクを使って始業式の開会宣言が行われた。さて、頑張って耐えるか。
『では、始めに校歌斉唱』
音楽の先生がピアノを弾き始めた。生演奏はここでは当たり前だけど、緊張するものがある。周りが元気に歌っているのが不思議で堪らない。うちのクラスって実は凄い?
まあ、ふたりが転校してくれば、もっと凄くなるだろう。
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