女戦士は全てを筋肉で解決する

烏目 ヒツキ

褐色と筋肉と女戦士

過去の戦争

 丸い斧のような形をした大陸があった。

 名前は、ケルゲレ大陸。

 自然に富んだ大陸で、湖や海岸。森林。平原。

 様々な地域が点在し、動植物が盛んな大陸だ。


 人口は2億人といった所か。

 大きすぎず、小さすぎない、この大陸は気候にも恵まれており、春夏秋冬通して温かい季節が続く。


 大陸の至る所では平和な景色が広がり、統治する王国は過去に内戦なども行ったが、年月が経つに連れて安定し、今ではすっかり戦いとは無縁の国となっている。


 せっかく長く続いた平和を脅かすかのように、ある出来事が起きた。


 隕石だ。

 いや、隕石に見える何かが、夜空の向こうから海岸に落ちてきた。


 人々の混乱に乗じ、突如として現れたそれらは、大陸の東から押し寄せ、人間達に襲い掛かった。


 明らかに人間とは異なる飛来者を大陸の者達は、『使族しぞく』と呼んだ。

 見目麗しい女性の姿をした『使者』が、数多の軍勢を引き連れて、ついには大陸の中東部にまで侵略をされた頃。


 隕石の破片が、大陸の中央部に運ばれた。

 破片は赤黒く輝いており、硬い材質。

 ある者が「甲冑を作ればよい」と言った。


 四の五の言ってられない状況の中、やれることは何だってやった。

 隕石は砂糖水で簡単に加工することができて、時間が経てば鋼のように硬くなる。


 甲冑を作ったはいいが、今度は重くて着れないときた。

 そこで、「ならば、我が」と立ち上がった者達がいる。


 森の方で木こりをしていた者達だ。

 王国で重装歩兵をしていた者達なのだが、戦争がなくなり兵役を終えて、力仕事に従事していたのだ。


 体格に恵まれた者達だったが、全員は着こなせなかった。

 着れる者は、身長が2mある者。

 丸太のように太い手足を持ち、のみである。


 たったの三人が、隕石で作られた甲冑を着て、戦地に赴くと戦況は一変した。相手は攻めあぐね、長く拮抗きっこうした状態が続いた。


 甲冑を着る者は、年が取れば引退。

 代わりに、いつでも着れる者を補填できるよう、選ばれた戦士たちはひたすら体を鍛え、食い続けた。


 数年の時が流れる頃には、使族でありながら『穏健派』と呼ばれる者達まで、人間側に加勢。知恵を授けてもらい、甲冑の使を教わった。


 さらに数年が経ち、拮抗は徐々に崩れ、いよいよ相手の親玉と顔を合わせることになる。

 結論から言えば、人間側は負けてしまった。

 だが、犬死したわけではない。


 どういうわけか、使者は東の地域から散り散りになり、大陸の至る所に星が流れるが如く飛んで行ってしまった。


 それからは、大陸の中央にある『ドムナント大町』を除き、全てが支配されたのであった。


 各地域にある町や村は滅び、大勢の人々が大町に集まった。

 村の焼ける姿を見たのは、少年ブナがまだ幼い頃の出来事である。


 

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