お茶がなくなるまでに
星咲 紗和(ほしざき さわ)
プロローグ
静かな午後、太陽はやさしく窓辺を照らし、部屋の隅に小さな影を落としていた。小学生のハルトは、いつものように家のダイニングテーブルに座り、前にはまだ冷めていない蒸気を立てる緑茶の入ったコップが置かれている。彼にとって、このコップの中のお茶はただの飲み物ではなかった。それは、ある秘密の鍵であり、特別な能力への扉を開くものだった。
「お茶がなくなるまでに。」ハルトはそっとつぶやいた。この言葉は彼にとって、ただの習慣ではなく、一種の儀式のようなものだ。彼がこのお茶を飲み始めると、世界は静止し、時間は止まる。しかし、ハルトには分かっていた。この静寂の中で、最も大きく動き出すのは、彼の心だ。
彼はこの瞬間を愛していた。周りが完全に静まり返り、時間だけが彼を待っているかのように感じられる。この時間を止める能力を最初に発見した時、ハルトは恐れと驚きに満ちていた。しかし今では、これが彼にとって最も貴重な時間、自分自身と向き合う時間であることを知っている。
この物語は、お茶がなくなるその短いひと時に隠された、無限の可能性と、少年の心の成長の旅をたどる。時間が止まるという不思議な能力を持つハルトが、自分と世界をどう見つめ、どう理解していくのか。それは、誰もが持つ内なる時間と、心が動き出す瞬間の物語である。
プロローグを閉じ、ハルトの静かな冒険が始まる。
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