第二十七話『星立魔神大学―人類滅亡科-World Wily Wonder-』

 大神おおがみ教授は偽学生に対して寛容だった。

 と言うのも、彼女の勤務先は実技で単位を取れる仕組みだった為、怠け学生が少なくなかったのである。

 そんな環境の中、勤勉な学生ならば別に偽学生でも講義を聞くだけ真面目な偽学生の方がマシと考える様になっていたのだ。

 彼女の勤務先は月面にあり、彼女は最後の月の人間。生徒や他の教諭は木星だったり地球の海の底だったりから本学へ通っている。

 あるいは、そんな時間は無いと、月の居住区に住む学生も居るが、その中には専ら部屋にて学生同士で呑んだり遊んだりするばかりで勤勉とは言い難い連中が少なくなかった。

 その一方で、勤勉に実技を果たす学生と座学を受ける学生は全体の半分未満と言ったところか。

 今、教室で嬉しそうに大神教授と話している生徒は珍しく真面目な方だ。

「早く世の為、先生みたいに上手い事、自分の事を賢いと勘違いしている人間共から魂を引っこ抜いて、実技でもテストでもこちらの方が他の生徒よりも上だと証明してやりますよ!」

 深海の様な顔色をしたクラゲの女学生は身体をふわふわさせつつ自信満々に胸を張りながらそう言い、レジュメで自分の顔を扇いでいた。


 この学校が二千年に創立し、卒業者達は堅調に働いているが、地球は一向に良くならない。

 人心を乱したカルト教団の長と言う名目で無辜の血が流れ、神が人類を見る時代は終わり、天国は人類の物となった。

 つまり、それは逆に言えば、悪魔が人を見る時代になり、現世は悪魔の物になったと言う事だ。

 こうして優秀な反人類(私はこれをサタン、あるいはメタヒューマンと呼んでいる)を輩出した我が校だが、どうにも現世の終わりは未だ訪れない。

 人類のしつこさや生き汚さには全く辟易へきえきだが、今はともかく授業だ。

 私の受け持つ真面目な生徒達が泣くような事があってはいけない。

 そんな事があったとしたら、それこそこの世の終わりだ。

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