第二十話『誠実なパワーストーン-small change-』
壁面にツタの這って幻想的な雰囲気のする、昔の映画かアニメで見る様なおまじないの品々を取り扱う小さな小間物屋があった。
「つまり、これは雑誌の広告でよく見る様な一種の幸運のパワーストーンと言う奴で、あなたが言うところに因ると本物のパワーストーンだと」
店の中では、客の男性が
「いいえ、それは少し違うわ。これは誠実な紫水晶なの、これを持って願い事をすればそれは何でも叶う……そんなパワーストーンなの」
店員らしい女性は客の男性の言葉を否定するでもなく、
「本当ですか?
「
店員らしい女性はそう言って、件のパワーストーンの装身具を客の男性に半ば強制するかの様に握らせた。
これに対して客の男性は未だ
だってそうであろう、何でも願い事が叶うパワーストーンなんて物が売っていると言うのは虫が良すぎると言うか、それが
「そう言われても全然信じられませんね、それだったら僕に一生かかっても使いきれない程の富でも降って来て欲しいところです」
そう言った瞬間、客の男性の懐で携帯端末が振動音を立てて動いた。
「あら、お電話かしら?」
「おっと失礼、ただの通知です。どうぞお気になさらず」
店員らしき女性の言葉を受け流す対応をした時、店内でカウンターの傍らに所在するテレビの報道番組が、二人にとって興味深い内容を流し始めた。
『それでは株と
「あ? あ、あ……」
「どうさかれましたか?」
店員らしい女性は楽しそうに尋ねる。それに対して、客の男性は携帯端末を片手に、涙目で今にも顔面筋が崩壊しそうな有様だ。
「失礼、ああああ! やっぱり、やっぱりです! これを見て下さい、これ僕の買っていた落ち目で腐りかかっていた株なんです! 信じられない勢いで
客の男性は顔から涙や鼻水やその他さまざまな汁の数々を漏らしながら半狂乱の様になりつつ、今にも踊り出しそうな勢いで喜びながらそう言って、店員らしき女性に自分の携帯端末を見せた。
「あら、それは素敵だわ。ところで誠実な紫水晶が本物だったって、そう信じてくれるかしら?」
「ええ、信じますとも! ああ、それにしても笑いが止まらない!」
客の男性はパワーストーンの装身具を握りながら、そう言った。
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