第14話 クラス替えまたクラス替え
さて、真冬でも積もった雪が昼に融けると言うのは暖かいと言うことだが、真冬だから毎日暖かいわけではない。従って道は氷だらけで非常に歩き辛い。
あまりの氷だらけなのでスケートを出して道で滑ったことまである。
家は鉄道の跨線橋の傍にあり、この橋の上から海が見えていた。まだ幼いから海まで行く勇気がなかった。
跨線橋を渡ると鉄道の敷地の外に沼地があった。これが冬に凍るのでそこでスケートで遊んだ。
多分何10メートルもならない沼だったが子供には十分だった。
そり滑りをする環境はあまりないがスケート滑りをする環境ならあったのだ。
この沼が夏には蒲が生えていてあの焦げ茶色のソーセージ状の穂が印象的だった。この沼で前述のコオイムシを捕獲して飼育した。
昔と言うのはマンガでは空き地に土管と言うイメージだが、空き地なり荒れ地なりに自然の一部でもあると子供の興味をひく。
今ではどれもこれも建造物や道路や駐車場に埋められ味気が無くなったものだの思う。
その空き地で嫌いな夏休みの朝のラジオ体操があったり、子供だけの3角ベースボールなどをしていた。
自然のど真ん中は時には危険があるが、都市圏内の子供の手の届くところに自然の一部があると言うのは都市計画やその管理、自然対策等で難しいのだろう。
無いものねだりではないが、逆に貧しかったからこそそんな時代もあったのだろう。
ただ良き時代だったなどと当時の俺達子供は言っていられないことになるのである。
転校して何ヶ月もならない春3学年に上がった。そこでクラス替えが初めて行われる。
当時のクラスメートもそうだったろう。
俺も転校すること2回、同じ学校にいてクラスが替わると言うのは経験していない。
大人が子供を殴るなどと言う世界は当たり前になっていた。ただ、ここに転校してからは例の粗暴君の件以外では母が俺にする体罰みたいなことは学校では覚えていない。
小学校低学年で、しかも転校したばかりの俺だ、少し気を使っていたのだろう。
教師のする体罰はゲンコツと言うイメージがあったが、大人と言うのは元来理性と言うことに無縁の生き物だと言うイメージの中で生活していた。
進級してクラスが代わり、クラスメートも担任の教師も代わった。
前述の進級前の記念撮影の時うしろに写っている教師かどうかあまり覚えていないが、どちらかと若く見える教師がこのクラスの担当になった。
特に脅威に感じていなかったが、この教師のする体罰はまだ見ぬものだった。
8歳か早い子で9歳の子供の頬を捕える往復ビンタがほぼ毎日目の当たりにするようになる。
先にも書いたが、これを恐れて行動した記憶はない。往復ビンタを避けるために気張った記憶もないし、俺自身それをされた記憶はない。
ただ、それはこの教師に限ったことである。
女子生徒でそれをされた人はいなかったが、男子生徒の半数以上がそれをされていた。
ある者は教科書一冊持参を忘れたことを前もってこの教師に申告したが、そこで往復ビンタ。
殴られて泣き出すと「泣くな」と怒鳴られていた。
しかしどう言うわけか俺には脅威にはならなかった。
母親の折檻に馴れきったのか何なのかはわからない。
俺は教科書をたまたま持っていくのを忘れなかったし、されたらされたでその時と言う感じになっていたのだ。
おそらくはこの教師とは人としての相性が良かったのだと思う。
ある日授業で教科書の中の物語を再現するために俺の鼻を指でつまんで引っ張られたことはあるが、それもどうでも良かった。
そんな学校生活の中でもクラス全体として給食の献立で皆が大好きなおかずだと大変な盛り上がりをしたりしていた。
ある日この体罰の蔓延するクラスに堪えかねて、親か誰かに担任教師を暴力教師と言う言葉で訴えた者がいた。
その話に対してこの生徒も往復ビンタの応報にあって、教師はその暴力の正統性をクラスで演説をしていた。
こんなだから考えてみても異常そのものの空間だとは認識するようになった。
そんな中夏休みに入ったが、夏休み明けにまたクラス替えが行われた。
これが俺をさらに地獄へと突き落とすことになる。
子供心に一学期をやっただけで再びクラス替えとは?とも思わなかった。
代わったのだからそれに従うだけ、ただそれだけである。
その往復ビンタの教師は転勤になり、この学校からいなくなった。後になって考えるといくら昔と言えどもあの体罰は許されなかった。公務員の転勤とは左遷である。
そして校長も代わった。噂では自殺による人事移動と言うとも耳にした。
しかし、それで俺の環境が良くなったかと言えば逆である。
この体罰は学校から少しも除かれたわけではなかったのである。
体罰の蔓延は生徒の中にも浸透し常態化していて、どの教師に訴えれば彼は体罰にあうのだと言うことも生徒の中で行われていた。
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