アンチ・セーラームーン事件!!!

立花 優

第1話 挑戦状

 まず、最初に断っておきますが、この小説は、後でも言いますが、今から約20数年以上も前に書いたものです。某有名推理作家の先生に読んでもらうつもりで、書いた駄文です。いや、結構、本気になって書いた挑戦状だったのです。



 それを、よーく、頭に叩きこんで、読んで下さい。では、良き時間を過ごして下さい。



『拝啓 湊○○○先生様へ




 先生の書かれた小説『K』の大本となった『S』を某社の月刊『小説○○』の新人賞発表作品号で、またその後映画化された『K』も見ました。




 久々に、感動しました!各々の登場者への心理描写の見事さに圧倒されたのです。




 特に、『S』を読んだ時、もし、この後話が進んでいくとすれば、今後どんな展開になっていくのだろうと言う期待感は今でも鮮明に記憶しております。



 ……しかし、私は、敢えて先生に挑戦したいと思います。



 推理小説:命の私にとって、特に映画のほうの『K』を小説より先に鑑賞してしまい、少々、現代の感覚とズレているところがあると思ったのです。



 私が感じた事は、次のような事柄でした。



 それは、加害者の少年Aの幇助者である少年Bが、HIVウィルス入りのミルクを飲んで、精神的に追い詰められていくと言う描写のところです。



 これは、既に時代錯誤の描写です。何故なら、ネットを少しでも開いて見てみれば、HIVウィルスの感染率が出ています。ネット毎の解説にもよりますが、少なく表示されているものでは0.1%の感染率、しかもこれは生(コンドーム無し)で性行為をした時の感染率です。



 HIV感染者の唾液から感染しようと思えば、バケツ一杯分程度飲まなければなりませんとまで、書いてあるサイトもあるほどです。……本当かは分かりませんが。



 ただ、現在では、HIV検査薬は1万円以下でネット通販で簡単に手に入りますし、有料で民間の医療機関、保健所では無料で簡単に検査結果が手に入ります。



 更に、百歩譲って運悪くHIVウィルスに感染したとしても、発症を防ぐ、あるいは大幅に遅らす事ができます。抗ウィルス薬のミサイル療法によってです。




これは、中学生でなくてもネットさえ使えれば、小学生ですら知る事ができます。




 ですから、結果的に母親を殺してしまった共犯者の少年Bも、結構、頭のいい子とされているのですから、どんな事をしても数々の情報を手に入れられた筈です。




 そうだとすれば、あの映画での『K』で見たような少年Bがノイローゼになるような展開には絶対なりえません。…そう、漠然と感じたのでした。



 先生は、多分、主人公が自分の子供が殺されたその復讐のために、HIVに感染した血液を加害者の少年達に飲ませ精神的に追い詰めると言う御自身のアイデアに酔ってしまわれ、そのまま勢いで筆を書き進められたのではないのでしょうか。……とこの時は思ったものです。



 しかし、映画での『K』を鑑賞後、後に文庫本化された『K』を改めてじっくりと読み込んでみますと、さすがは先生、既にこの私の愚問に対し、反論を初めからこっそりと小説内に書き込んでおられました。




 主犯者の少年Aは、極早い段階でHIV検査を受けて陰性の結果をもらっておりました。また、一見エイズ・ノイローゼに罹って母親を殺してしまったように見える共犯者の少年Bが、幼女をプールに投げ込む際に、幼女が気がつき目を開けたにもかかわらずプールに突き落としたと言う記述になっております。




 これでは、少年Bが母親を殺害するまで精神的に追い詰められたのは、単純にエイズ恐怖症だったのか、それとも自分が生きている人間を殺した罪悪感からノイローゼ状態になったのかは、素人では絶対に区別がつきません。





 正に、読む人によってどうとでも解釈できる心理描写によって、この私の愚問に対する回答や反論を、最初から小説の『K』の中で書いておられました。(映画中での『K』では、この点がハッキリしませんでしたが…。)




 完全に、読み手の心を百歩先読みされておられました。……さすが先生です。脱帽するしかありません。「イヤミスの女王」と言われる所以ですね。



 さて、話題は変わります。



 私はある驚愕の事件を知っています。無論、その事件自体、新聞記事は無論の事、公判記録にも一切残っていません(わずかに、母子無理心中事件として警察や検察の記録簿に残っているだけです)が、現実に北陸の某県で起きた事件であります。




 その事件とは、ネット上でのみ噂されていた事件であり、セーラー服の女学生のみを狙った連続強姦事件でした。別名「アンチ・セーラームーン事件」と言われていました。



 私は、湊○○○先生様に敢えて挑戦するつもりで、この驚愕の事件の話の顛末を自分の下手な文章ではありますが、ともかく小説風に書いてみたいと思いました。

 しかも、この小説自体、実は約20数年前の作品なのです。



 私が、この小説を今になって発表する気持ちになったのは、風化していくこの事件を皆に知ってもらいたい思いと、無料で小説を掲載できる「カクヨム」と言うサイトを知り、そこにログインした事がキッカケです。



 ともかく一読されても、とても信じられないでしょうが、この小説は、あくまでX市での実話を元に、私が自分なりの文章で脚色し小説化たものです。



 それ故、多少の誇張的表現や下手クソな表現は随所にありますが……それはご容赦下さい。ただ、一つだけお願いがあります。どうしてもどうしても最後まで読んで欲しいのです。あっと驚く結果となってこの事件は終了したからです。



 ……そして、自慢する訳では決してありませんが、この私こそが、その驚愕の事件の唯一の目撃者であり探求者ですから、尚更のお願いです。多分、この私以外、この事件の真実を知る者はこの世には今は誰一人いません。



 ……哀れな連続強姦犯の犠牲者達ですら知らないままなのです。



 では、先生、健康に気をつけられて、次なる推理小説を心待ちしております。



 湊○○○先生の大ファンより 敬具』




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