この世界は可愛さに満ち溢れている
二月ふなし
プロローグさん
第1話 プロローグさん①
「ふんっ!」
まったく! あのダメリーダー!
急にあんなこと言って!
すぐああやってそそのかされるんだから!
バカなのもいい加減にして欲しいな!
マルチなんとかってなに?
なにかな?
説明されたけど全く分からなかった。
よく分からないけど絶対騙されてるよ!
私は止めたから!
もうどうなっても知らないよ!
「ふんっ!」
──今は時計の針がどっちも真ん中。
ちょうどお昼の時間。
心地よい風、綺麗な青い空、賑わう人たち
たぶん、この中で不幸なのは私だけ。
私、ミチル=アフレンコは今、街中を歩いている。
なんで歩いてるのかって言うと、それは今さっき冒険者パーティを脱退したから。
理由は省略するけど、まあ、方向性の違いかな。
急にパーティの方針が変わったんだ。
いつも通りみんなで集まったと思ったら、急に話を聞かされて……
ホント急だよ。
私だけ反対して、リーダーと口論になって、それで……
あれ? これって、追放?
ううん、そうじゃない。
だって、私から出て行ったから。
私が見切りをつけて、自分の意志でパーティを脱したんだから。
全然違うよ。
むしろ追放したのは私の方。
どう考えてもそうだよ。
ふぅ、とりあえず近くのベンチさんに座ろうかな。
言い合いして疲れたし、落ち着きたいし。
「……はあ」
まったく、ミホちゃんはともかく、なんで皆あんなダメリーダーに……
「……やめよ」
もう過ぎちゃったことだ。
グチグチ言うのはやめるよ。
性格があのダメリーダーみたいに悪くなっちゃう。
「よし!」
ほっぺをパンッ!
はい! これでおしまい!
「……それで、これからどうしようかな」
私、パーティ抜けちゃったよ。
自分でやっといてアレだけど、何も考えてなかった。
「ミホちゃん……」
グスンッ
別に、違うから。
やめてよね。
出た矢先カッコ悪いとか言わないでよね。
ただあんなリーダーがいるパーティになんか戻りたくないだけだから。
全然悲しくないもん。
「とりあえず……うん、新しいパーティを探さないと」
こういうのは早い方がいいってお母さんが言ってた。
入れてくれるところあるのかな。
「それかいっそのこと実家に……ううん、それはイヤ」
お父さんに会うと色々めんどうだよ。
う~ん……
テン、テン、テン、
「……ってダメだよ!」
ブンブンブン
いけない、私また頭を悩ませてる。
ウジウジしてても始まらないよ。
とりあえず何か動かないと。
「よし! なら、さっそくギルドに──」
グウ~
「……あっ」
お腹すいちゃった。
仕方ないよ、お昼がまだだもん。
……周りに聞こえたかな、今の。
チラッ
大丈夫そう。
グウ~
ちょっと待ってよ、胃袋さん。
気持ちは分かるけど急かさないでほしいな
はあ、イライラしてる分余計にそう。
大事なお昼なのにあんな話するからだよ。
そう、全部あのダメリーダーのせいだよ。
うん、私はなんにも悪くない。
はい、というワケで、気を取り直して!
お昼にするよ!
「フフフッ、なっににしよっおっかな~♪」
ルンルンルン♪
──そして、
「う~ん……! 美味しい~!」
お口の中がジュワ~って。
広がる幸せ~。
う~ん!
やっぱり私、食べてる時が一番幸せだよ〜
あっ、ここは私行きつけの食堂だよ。
依頼が終わった後とかによくミホちゃんと行ってるかな。
料理が美味しいから気に入ってるんだ。
特にこの謎モンスターのキモとか。
ちょっと珍味だけど、慣れるともう最高で──
ふう、お腹が膨れてきたからかな。
落ち着いてきたよ。
「う~ん……」
紙を、ピラッ
これは冒険者ギルドのチラシ。
ここに依頼とか色々な情報が載ってある。
さっき外で配ってたから貰っておいたんだ
「えっと、今受注可能なギルドからの依頼は……」
世にも珍しい黒曜蛇の観察、
近隣に突如発生した巨大メカバード討伐、
飼い猫の捜索。
「なんか変なのしかないね。それで、肝心のパーティメンバーの募集はっと、どれどれ……」
腕の立つ海洋職人、
エンジョイ勢のテイマー、
闇に堕ちた僧侶でも可。
「むむっ、魔術師の募集がない……」
どうしよう、モグモグ……私魔術師。
そこら辺にいるごく普通の魔術師なんだけど。
って言うかまともな募集がないよ。
どうしよう。
最近の魔術師って人気ないのかな。
募集を見たの自体、結構久しぶりだったけど、まさかこんな環境になってたなんて
いやでもパーティに一人は必要不可欠だし、そんなことはないとは思うんだけど。
「むむむ……これは困ったぞ」
頑張れば一人でやっていけないこともない。
でもやっぱりみんなの方が稼ぎはいいし、ソロでやるより安全面でも段違い。
私みたいな魔術師だとなおさらそう。
モグモグ
ないならないで、自分で一からパーティを作るのも……
いや、そもそも私がリーダーなんて……
「う~ん、ちょっとタイミングが悪かったかな」
とりあえずギルドには毎日通うとして、募集が来るまでは1人でやっていくしかない、かな。
生活するお金はまだいくらかあるけど、何もしないワケにはいかないよ。
現実さん。
色々大変だけど、仕方ないよね。
はあ……
「こんなはずじゃ……トホホ」
どうしよう……
ご飯は美味しいけど、幸先悪すぎだよ。
それに今日の私、ため息ばっかりついてる。
まだお昼なのに、色々と不安だよ。
ホント、なんでこんなことに……
はあ、ご飯美味しい。
「心に染みる味……って、うん?」
チラシに端の方に何か書かれてる。
「なんだろう……ぼでぃ、がーど?」
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メイル探偵事務所、助手一名募集。
「興味のある方はぜひ。業務内容、詳しいことは後日説明……?」
うーん?
これは、なにかな?
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