ボッチだった僕は、助けてくれた先輩を好きになった

水都suito5656

第1話 小学校編~僕がボッチになるまで

友達に頼ってはいけない。全部1人でやらなくちゃ

僕はそう考え、これまで生きてた。


でもそれは、はじめから不可能な事だった。


*


小学校の低学年の頃はまだ良かった。


好きも嫌いも簡単だった。

しかし高学年になるとみんな色気づきだした。


誰が好きとか、告白されたとか


そんな話が僕の周りでも飛び交った。

人より成長が遅い僕は、そんな周囲の事に無頓着だった。

別に好きな人もいなかった。


6年生になってすぐ。

ボクは下校中知らない中学生に呼び止められた。


「初めて見かけた頃から好きなんだ。すっごく可愛いって。俺と付き合ってくれないか」


どうやら彼は登校中のボクを見て一目惚れしたらしい。


うーん誰なんだろう。おそらく中学1年生にみえるから1個年上。

でも彼のことは小学校で見たことなかった。


『きっと他所の小学校から来た人なんだろう。

だからボクのことを知らないんだ』


「ごめんなさい。ボク誰とも付き合わないよ」

「うん、いきなりは無理だとわかってたよ。まあおれは焦らないから」


意外とあっさり彼は立ち去った。

正直ホッとしたけど、その後も度々現れては僕に告白していった。


『もうなんなんですか!中学生が小学校に出待ちってどうなの?

中学生って暇なの?』


ボクは彼の行動を担任に相談した。


「なんていうこと!許せませんね」


怒った担任は、その中学校に抗議してくれ、ようやく出待ちは収まった。

けど、今度は家の近くに出没するようになってしまった。

こうなると脅威度がアップする。


僕は困り果てて姉に相談した。

彼女は中学3年生で、男子生徒が通う中学の生徒会長だ。


「相談してくれてありがとう。大丈夫よ。ここからはあたしの出番だから。安心して」


姉はすぐに行動を起こした。

問題の男子はすぐ特定できた。自称イケメンの勘違い男だ。


*


「たとえ君があの子の姉でも、俺の真実の愛は止められないよ!」


「あっそ。じゃあその真実の愛は性別をも超越するのよね」


何を言っているんだというそいつに、彼女は弟の水着姿を見せた。


『もったいないけど非常事態だから』


「!!!」


彼は一瞬水着姿に見とれた。でもすぐにおかしいと思った。


あるべきものが無い


「・・・そんな」


そして彼は沈黙する。


「ま、そういうことなの。良く間違えられるのよ、可愛いから」


じゃあね。そう言って立ち去ろうとした時、不穏な声が聞こえた。


「・・・いや。これはこれでありかも」


振り返ると異様に目が異様にギラついてた。


『やばい、こいつに情は無用だったわね。もう徹底的に潰すしかないわ!』


こうして事態は収束した。姉の手腕によって。

その後、彼がボクの人生に出没することは永久になかった。


*


「はぁ。やっと静かになった。ありがとうお姉ちゃん」


「ううん、これからも困ったら何でも相談してね」


その時姉を見てたら気づけた筈だ。

弟を見るその目は、イケメンと何ら変わらないギラついたものだったという事に。



***


学習発表会(初の舞台)


「ええっ、どうして僕が女役するの?」


「あーうん、それは舞台の関係上しょうがないの。一番背が小さい子が適任なんだ。お願い!適任はきみしかいないの!助けると思って」

委員長は手を合わせボクを拝んだ。


「ううう」

たしかにクラスの女子はみんな大柄だった。ボクより小さい子はいない。


「・・・これもクラスのためなんだよね?」


「うん!ありがと!」


こうして僕のジャスミン役が決まった。


*


『魔法の絨毯を人手で動かすため軽い方が良いのよ』


そんな理由で引き受けたけど。


「・・・よく考えたら、アラジンも絨毯に乗るんだよね」


そんなボクの独り言を聞いて、みんなは思った。


『今頃気づいたの!もうこの子ちょろすぎ!』


僕は知らなかったけど、実は最初から僕がジャスミン役だったらしい。


「衣装は可愛いんだけど、露出が多すぎてやりたくない」


これが女子の総意。


「じゃあ、彼にやってもらうしか無いか」


「あー彼ね。一応男子だから露出多くてもいいわよ。先生も見てみたいわ」


まさか舞台裏でこんな密約があったなんて。

ボクは同窓会の時まで、知る由もなかった。



*


舞台は大成功だった。

苦しくて辛いこともなく、みんなが頑張ってくれたお陰だ。

空飛ぶ絨毯は、校長先生に大変素晴らしいと高評価を得た。


でもやっぱり主役はジャスミンだった。


小さな体で舞台の上を走り回り、観客に、役者に終始笑顔を見せ続けた。


そのあまりの可憐さに。

人々は劇だということを忘れた。


時に少女のように愛らしく。そして小悪魔のように妖艶に。


観客は老若男女問わず、彼の演技に心酔した。

原作とは大分違ったけど、これもジャスミンだった。


担任曰く、

「理屈は良いのよ。だって可愛いんだから!」

その感想が全てを表していた。

こうしてボクの初めての劇は大成功した。


そのあまりの反響に、数年間、橘小学校には天使とがいると語り継がれたほどに。



*



「最近クラスの子から視線を感じる?」


「そうなんだよ」


「うーん、気のせいじゃない?」


そう言って慰める隣の子は、何故か顔が赤かった。

こうしている時も視線を感じる。


見るとさっと顔を背けるし、みんなの様子もなんだか変だ。


でも。その時は普通だった。

まだボクの世界は平和的だった。


*


決定打はクリスマス会に起きた。

クラス1のイケメン男子が僕に告白してきた。


「好きなんだ!」って


怖い。それになんだか目も血走ってるよ。


「僕が男子ってこと知ってるよね」


「もちろんさ。でもこの思いは止められないんだ」


「無理、無理、絶対無理だから!」


ボクは秒で断った。

僕の返事に、彼はひどく落ち込んでしまった。


そんな僕らのことを遠巻きに見ていた集団があった。

彼目当てにおしゃれしてきた女子たちだ。


あわよくば彼から告白されたい!

・・・そんな妄想に胸膨らませて、

少しばかり浮かれてた女子たちが。


そんな時に事件は起きてしまった。

お目当ての彼が他の子に告白する大事件が。


そして愛しの彼が振られるところを見て心が傷んだ。

嬉しいやら悲しいやら。乙女心は複雑なのだ。


「もうこうなったらやけ食いよ!」


誰かが言い出した一言で、急遽大食い大会が始まった。

彼女たちは食べながら涙を流した。


もうこうなったらやけである。美味しいもの食べて、嫌なことを忘れるしかなかった。


*


誰が音頭を取ったわけでもないのに

次の日からボクはクラスの女子からハブられた。


大好きな彼に告白され羨ましい。

そんな彼を秒で振ったことへの怒り。


あとみんな認めたくないけど、

クラスのどの女の子よりも彼が可愛いくて悔しかった・・・


女子がそんなだと、男子も腫れ物を触るように僕とかかわらないようになった。


まさに地獄。

誰か助けてよ


*


「ごめんな、俺が考えなしだったばかりに」


学校からの帰り道。

ボクに告白したイケメンが謝ってきた。


「・・・うん、大丈夫」


嘘です。ちっとも大丈夫ではない。

今でもとても辛いです。


ひとりはさみしいよ



*



それから卒業までの3ヶ月、ボクは1人で過ごした。

お陰ですっかり陰キャになってしまった。

女子とは互い意地を張って、とうとう卒業まで話すことはなかった。


あの時

ボクは一体どうすればよかったのか。

その答えは今も出せていない。

でもボクは小学校を卒業するしかなかった。


「中学では友達できたらいいな」


もうすぐボクの中学生活が始まる



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