魔法では彼らに人権を与えられないようです

谷山クロネ

プロローグ

 空に昼ならいつでもある太陽が地上に落ちてくるかのような灼熱の中で、怯える心を引き締めて声を張る。死なせてはならない。家族なのだから、絶対に死なせてはならない。


「逃げろ!!」


 家族ではないはずの男が誰より声を上げている。通信機の応答のおかげで気が付いた。今自分は怯えていた。


「防御!みんな逃げるよ!!!」


 灼熱がすべてを蹂躙する最悪の戦場に、男は憧れる。




 貼り付けにされた色付きの人外、明らかに人の形をする彼らアウトキャストを彼らはもてあそぶ。


「外すなよ?」


「この距離で誰が外すってんだよ」


 旧式の単発銃を嗤いながら向け、気安く撃つ。


「おいおい、どこ撃ってんだよ」


 狙ったのは頭で当たったのは足、酷い精度だ。対して距離は開いていない。遊んで遊び飽きたら殺す、その程度の消耗品。


「新人も試してみたら?士官校では主席だったんだろ?」


 手渡される拳銃は精度の悪い旧式銃だが、それでもこの距離だったら絶対外さない。当てたら殺してしまう。


 一発を四回放つ。両足の金具、両手首の金具を破壊する。


「すっげぇなお前!」


「・・・これくらいは」


 弾倉は空にした。弾丸も持ってないだろうから、これで終わりだろう。拳銃を返し、帰路に就こうとした瞬間、銃声に振り替える。


 絶望して声も出せない彼女を彼がポケットから出した弾丸で殺していた。




「行ってくる」


「「「行ってらっしゃーい」」」


 やっと二十歳になろうかという男が数十人に見送られる。残り四人を引き連れて。


 楽しいことなんてありはしないはずの最前線、彼らにとっては楽園のように輝かしい。仲間のために、家族のために。意気揚々と出かけたはずだ。


 森の中、少し開けた場所に数十の魔力気配があった。珍しくもない敵の哨戒部隊だろう。だが、魔力量が異常で様子を伺いに来た。


「おいおいヤバいんじゃないかアレ?」


「うるさい。死ぬよ」


 木陰の中から様子をうかがっているのに声をかける、もちろん小声だがそれを制する。


「あなた達は最低限の力を差し上げました。存分に暴れて結構ですよ」


 洒落た服に、金の髪色それがひどく恐ろしい。


 言葉を扱う人型の魔物、他者に権能を与えることができるほどの力を持つ魔物、二つを兼ね備えているのは悪魔だけだ。そして人語を解する悪魔はより高位の・・・。


「貴方たちもいつまで見ているつもりですか?」


 こちらを見られた、そう感じた時には遅い。いくつもの光線が容易く隣にいた家族を穿つ。一人死んでから、迅速に行動する。一つ、二つ程度ではない。10や20の光線がたったの4人を追尾する。当たれば即死の攻撃を避け逃れ、残ったのは一人。

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