狂終

「くそが!くそが!死ねよ俺!頼むから死んでくれよ!」



自分を殺せるかもしれない歪んだ希望を見つけてから5日が経った



あの日、眼に映るもの全てを何度も殴りつけた




木に、岩、魔物の亡骸に、地面




拳なんてとっくの前に潰れてて力なんて入らなかった




それでも殴り続けた




不思議とズキズキと燃えるような痛みが心地よかった




それでも、なかなか死んではくれない




どこかで生きたいと思ってしまう俺の脳が殴ることを拒み始めた




全く拳に力が入らなくなった




苛立って叫びながら走り始めた




とっくに喉なんて潰れていたし、声なんて出てなかった




他から見ればどうにか生きた証を残そうとしてるように思えるだろう




俺自身は全くの真逆だったが





そうして、狂ったように走って、走れなくなったら殴り続けてを繰り返して2週間









とうとう限界が来た




逆に今思うとよくやっていたと思う




一歩たりとも歩けない、指先一本動かせなくなり、気づいたら倒れて空を見上げていた




自分がもうどこにいるかもわからないし、誰なのかもわからない




ただ、やっと死ねる、その安堵だけが俺の心を支配していた




ふと、気配を感じて横を見ると狼型の魔物がいた




どうやらそいつも空きっ腹らしくよだれを垂らしてこちらを見ていた





本来なら叫び声をあげたり助けを呼んだりするだろう




でも、気づくと俺は笑いながらそいつを見ていた



両親と同じ死に方が出来るってことがたまらなく嬉しかった



魔物は憎い、この世から全て滅ぼしたくなるほどに憎い




それでも、魔物に殺されるという死に方はその時に限り好ましかった




やっと死ねるそう思い俺は目を閉じた






















「魔物か、散れ」




どこからか聞こえた声と、何かが叩きつけられる音、なかなかやってこない死の瞬間




俺は二度と開けるがないと思っていた目を開けた




俺はこの瞬間を一生忘れない



何度も後悔したこの瞬間を













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