心を失った人 心を手に入れた悪魔

三奈木イヴ

第1話

「うああああ!!!!」


俺は今日、大切な人を失った。


「なんでだよ…!なんで……」


病だった。治療も虚しく…。逝ってしまった。


「起きてくれよ…!もう一度だけで良いから…!あの笑顔を見せてくれよ……」


「なぁ!!頼むから……。どんな事でもしてやるから…」


彼女がもう一度目覚めるのならば、俺は悪魔にだって魂を売ってやる…。

たとえ…どんなことをしてでも…!


『本当かい?』


!?


俺の頭の中に声が響いた。なんだこれは…!?


「だ、誰だ!?」


『今、悪魔に魂を売ってでもって言ったな?』


悪魔……!?


「なんだよ、本当にいるのか!?」


『ああ……。本当さ』


『代償さえ払えば、願いを叶えるぞ』


『ただし、』


「それなら俺はどうなっても良い!!彼女を蘇らせてくれ…!!」


『そうかい……。まぁ、良いか。代償として、貴様と私の中身を入れ替える』


「どういう事だ?」


『つまりは、私が人間の心になり、貴様が悪魔の心になるということだ。』


「そうか。悪魔の心がどうなるのかは知らないが、とにかくやってくれ」


『契約成立』


* * *


「………」


「やはりダメだったか。」


死んだ人間を蘇らせる秘術──上手く行ったとしても、その者は記憶を失くす。それは、自分が自分であったという事すらもだ。


それでも、という事で契約して秘術を使ったが……やはりこうなったか…。


「これでは、悪魔になった彼に申し訳が立たないな…。」


人の心を宿した事により、私は感情を手に入れた。

人というのは、感情があるんだと知った。そして、その感情に苦しまされるという事も。


「あの彼はどうしてるんだろう……。」


代償を詳しく聞かずに契約した彼の身を、私は案じた。


……私は生きてて良いのだろうか……。


* * *


『悪魔の心か……。』


人としての自分を捨てた。彼女を蘇らせる為に。

だが、生き返らせる必要があったのだろうか?

もう一度苦しませるだけなのでは?

まぁ、そんな事はどうでも良いか。


悪魔になってから、俺は人の時にあった感情というものを失った。


何をしても、虚無 満たされない


なんのために生きてるんだろうな。悪魔って


実際に契約したのは俺だけど。どうでもいいや。


向こうは感情を手に入れてどうなったんだろうな。


まぁ、俺の知った事では無いか。


彼女は蘇ったみたいだし。ならこれ以上は関係ないや。


彼は生きてるのかねぇ……。

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心を失った人 心を手に入れた悪魔 三奈木イヴ @tumugyu

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