キセキにのって

Athhissya

赤鬼

赤髪の鍵屋のじいちゃんは夜でも元気

びゅがああん


耳慣れた轟音がトタンの壁や天井に反響する。俺は手袋を嵌めた拳で、依頼人から託された木箱を粉々に砕いた。中に入っていたのはニンテンドーDS。厳密にはニンテンドーDSだったもの、だ。バキバキに割れてただのゴミと化してしまっている。


「これが婆さんの最期のプレゼントか・・・。」


依頼人はまだ小学生1年生の男子だった。男の子が木箱を受け取ったのはつい先週のこと。お婆さんから箱の中身を聞き出すより前に、静かに、そして安らかに息を引き取った。さて、センチメンタルはそこまでにして、そろそろ木箱の鍵の構造を解析しなければならない。なんたって俺は鍵屋なんだから。しかし金属製の鍵部分もろとも木っ端微塵になって、今、俺の手元からは箱も中身も、調べるべき鍵すらも蒸発して跡形もなくなっている。


「はぁー、やり直し、やり直しっとー!」


俺は両手から手袋を外して、さっきまで箱だった「無」の隣にある木箱のオリジンを素手で持ち上げる。そして触れたままで目を閉じて、

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