剣士の国 〜剣と少女の物語〜

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プロローグ 剣士の国

大陸の西。砂塵が舞う不毛の土地。そこに、力だけを追い求める国があった。砂塵の国という。

その国は国民の全てを兵士にして、富を他国から力で奪い取った。そうするうちに幾多の国を滅ぼし、大陸を支配した。それは千年も続き、抗う国は皆、滅ぼし、大陸は恐怖に包まれていた。


しかし、奢った砂塵の国に腐敗が蔓延り始めた。王は富に溺れ、国は力を失い、兵は堕落した。それを好機とばかりに、支配されていた国々が一斉に蜂起した。

砂塵の国の兵は皆強く良く戦ったが、腐敗しきった将官の采配は稚拙で、蜂起した国々を相手に敗走をかさねた。そして、とうとう、降伏した。


敗戦処理が始まった。砂塵の国の王は刑場に吊るされ、国民は奴隷にされようとした時、残った清廉で精強な兵達は、家族たちの為にと、自ら志願して傭兵になる事で償いを始めた。

そして程なく、支配から解き離れた国々は、新たな支配者となるべく争うようになった。

戦乱の時代が訪れた。砂塵の国の兵士達は、長い長い間、雇われた国の為に働いた。泥水を啜り、硬いパンを齧り、常に前線に送り込まれる。雇われた国同士で争いになれば、互いに斬り合った。


長い時間が過ぎ、戦後の賠償も終わると、自らの兵力を削った国々は祖国に還る兵たちを大金で引き留めた。砂塵の国は、兵を送り込むことで金を稼ぐ事で存続した。


新たな支配者が現れるのでは。


各国は警戒したが、新しい砂塵の国の王は、二度と過ちを繰り返さない様に、自らの為に力を使わず、戦争に与する事をしないと誓った。国々は、その兵士たちを、尊敬の念を込めて”剣士”と呼び、砂塵の国を”剣士の国”と呼ぶようになった。


剣士達は戦乱の世に戻らぬように。そして、自らが堕落ししない様にと国々に散った。しかし、そんな剣士達にも悪事に手を染める者、姦計を巡らせるものが現れた。


剣士の国の王は、そんな剣士を討つ、最強の剣士の組織を作った。その中に、一人の少女がいた。母を手に掛けたという剣士。剣士の少女は一人、旅をしながら剣士を討つ。自分は何者のか、答えを求めながら。


これは、そんな剣士の少女の物語。

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