ソラと僕の徒然草

桜の木のしたで

2023年3月下旬、

例年より早く迎えた満開の桜の木の下で僕達はお別れをした。

「湊人（みなと）と過ごした7年間、本当に楽しかった。今まで本当にありがとう。私は私の道を進んでいくよ。」

彼女の力強い言葉に意志を感じた。

彼女は最後まで明るく笑顔が素敵な女性だった。

彼女は最後にソラの頭を撫でて、僕達に背を向け歩き出した。

ソラは彼女の背中と僕の顔を何度も交互に見て、

追っかけようとリードを咥えて引っ張ってくれた。

しかし、僕の足は動かなかった。

僕には彼女を引き止められるほどの強い意志が無かったんだ。

あれから1年が過ぎ、

また桜が満開の季節がやってきた。

去年より少し寝坊助な桜も4月最初の土曜日には見頃の時期を迎えた。

テレビからも満開のニュース、お花見の様子が流れてきている。

「ソラ、今日は桜堤公園までお散歩に行こうか」

ラブラドールレトリバーのソラはお散歩の言葉で興奮状態。

リードを咥え持ってきて、ルンルン気分だ。

1年前、彼女とソラと最後に歩いた道。

ソラとのお散歩コースの1つだったが、最後の日から足が遠のいている。

テレビで映る桜を見て、

無性にまたあの場所に、桜の木のしたに

行きたいという思いが湧いてきた。