滅ぶ世界での3種族クインテット物語
@yuno1109
第1話 今日も一日平和ですが、くたばって下さい
【独白】
【この世界には正義が多すぎる】――そう思った事はあるか?
それはその通りで、戦争、テロ、喧嘩、それら全ては自らの正義があるから起こるに他ならない。
そうだろ? ■■■■よ。
◇◆◆◆
『魔法都市 渋谷』
――そう呼ばれている場所がある。
そこでは、魔法など全てが新しい、日本には無かったありとあらゆる非常識が可能となる時代。
まさに理想郷だ。
…そんな誰もが幸せになる理想郷であるはずだった。
実際には、日本の法律が効かない無法都市。殺人、強盗等の犯罪が起きまくるそんな場所になってしまう。
何故そうなったかと言えば、【日本と異世界が合体した】という背景がある。
何故? やどうして? は気にするところでは無い。正直この発生理由については誰も分かっていないのだ。
という訳で暗い話題は終わり。明るい話題に切り替えよう。
今日はコンビニでバイトが始まる。そんな平和な一日だ。
アスファルトで舗装された道を歩き、ボロボロのコンビニにたどり着く。
主人公:
髪:黒
瞳:ちょっと赤がまじる黒
身長170
好きな物:平和、金、地位、名誉
性格:悪くないが良くもない。ある意味一番人間
「えっと? 暁君ね。下の名前は無し、、珍しいね。まぁいいや、レジに立っててよ。どうせ誰も来ないと思うけど」
「はい店長!」
天国だ。あぁ天国。店長は出張でどこかに行ってしまい、店には俺一人。
店長はすごい形相でこちらを見ていたけど、まぁいいでしょ。
大きめの椅子を事務所から持ってきて、ホットケースのチキンを食べながら雑誌を見る。どうせ誰も居ないんだ。どうしたっていいだろ。
「…本日の異世界モノは、サラリーマンが異世界に行って、平和なスローライフ…ですか。羨ましい。変わって欲しいな」
ペラペラと雑誌をめくる。別に俺はこの雑誌が好きな訳じゃない。用があるのは、巻末にある小説家になれる! というサイトから大賞を取った作品だ。
(なんの代償もなしに、そんなチート能力ですか。羨ましいにも程が有る)
一応言うが、俺は別にこの世界が嫌いな訳じゃない。むしろ好きに値する。だが好きでしかないんだ。
目の前の雑誌にこんな理想的な生活があったら憧れる。隣の芝生は青いってやつだ。
自動ドアが開く。お客さんだ、こんな所に? 珍しいな。
…いや違う。この【殺気は】――
「お客さん、ここ闘技場じゃないですよ?」
「んな事分かってる。俺が持ってるのは【銃】だ。金出せ、一円も残さずにな」
強盗か。目出し帽を被り、ドラマとかによくいるテンプレのような輩だ。目は鋭くこちらを敵視している。
今どき珍しくない。寧ろ清々しいな、こんな表に出てくる馬鹿は。
相手にしてあげてもいいけど、今雑誌読んでるから後にしてくれないかな?
「あぁ、レジに入っていいですよ。適当に持っていってください」
「は? 何で俺がそっちに行かなきゃならねぇ。罠があんだろ?」
「お客さん、もうちょい人を信用しましょうよ。この漫画の主人公なんて、ほのぼのスローライフで異世界制覇しちゃうんですよ?」
頭の上に銃口が置かれる。泥棒の口から舌打ちが聞こえた。どうやらお気に召さなかったらしい、まぁ分かっていたことだけどね。
この世界の人間は、犯罪に慣れすぎていつもイライラしている。
「ガキ、五秒以内に金を出せ。いいな?」
「まだ漫画読んでます」
「五…四…」
「はぁ全く――」
「二…一…」
もういい、漫画も読み終わった。始めようかな。
少し話は戻るが、俺はこの世界が好きだ。何故ならこの世界は【合法的に殺人が認められている】からだ。
正当な理由があれば、ここでは全て合法。汚職に賄賂全てなんでもありだ。全てやったもん勝ちで説明がつく。
「――零」
引き金が引かれる。そこから出る銃弾は俺の頭をスレスレを通る。手に持っていた漫画で強盗の腕を弾き銃口の向きを変えた。
強盗の目が変わる。餌だと思っていたヤツに反抗されたのだ。だが――
「ダメだね。反応が遅い。避けられたのから次の銃弾を撃たなきゃ」
慣れた手つきで俺は強盗から銃を奪い、そのまま脳を撃ち抜く。鮮血が俺を赤く染める。
頬から流れる血が口に入る。舐めると血の味がする。当たり前だ。相変わらず血の匂いを嗅ぐとむせ返りそうになる。
「…とりあえず外に出よう。新鮮な空気が吸いたい」
目の前の死体を蹴っ飛ばして、外に出る。ドアが空くと涼しい空気が…血なまぐさい、あの強盗は何人外で殺してんだ?
その時スマホが鳴る。電話だ――
「うげ――あーもしもし? あぁ先生ですか? 『提出物は?』と。今からバイトなので後で掛け直しても――」
その瞬間、コンビニが爆発する。そう、俺の目の前のバイト先でありサボり場が一瞬で粉々になった。
なんで爆発したかなんてどうでもいい。そんなの【日常茶飯事】だ。
何でだろう? 涙が止まりません!
「…『今の爆発音は?』と? えぇ、バイト先…無くなりました泣」
2085年 渋谷 天気:爆撃
壊れた世界。色んな世界があるとして、神が採点したら確実に零点の世界。それが俺の現実だ。
あの…誰でもいいので俺を異世界に召喚してくれませんか?
タイトル:「死ねねねね」
◇◆◆◇
「えぇ…爆発するかね? 普通」
ボロボロのコンビニを見ている。火からガスの臭いがするので、ガス爆発か、ミサイル攻撃か。
ミサイル攻撃が来るわけないと思う? この世界じゃ日常的だ。ギャングか、
「嫌な天気だな! 全く!」
空からミサイルが落ちてくる。今日の天気は機嫌が悪いようだ。
この世界では日常だが、一年に二回ぐらいの頻度か? それぐらいで空から【何か】が落ちてくる。
この【何か】は様々だ。ミサイルだったり、山だったり、一回月が落ちてきた事もあったそうだ。
「爆発は小さいが数が多いな」
見た目は本当に雨。何千本ものミサイルが絶え間なく地上に降り注ぐ。だが幸いにも威力は弱く、手榴弾レベルだ。
これぐらいなら避けられるけど、けども――
「もう、勘弁してくれー!!」
その時俺の体に重みがかかる。隙をつかれて体にミサイルがねじ込んでいく。そして爆発、死亡。はいおつかれー! やってられっか!! こんなもん!
◇◇◇◆◆
少し前の記憶。
燃える。燃えている。ガス? 違う。店? 違う。車、そう車だ。
それも【家族だったものが乗っていた】車だ。
ただの事故、それで家族は全員命を落とした。後ろからの激突によりぺちゃんこだった。
震える手で俺はガラス片を拾う。首に当てて斬る。
死のうと思った。罪悪感とかじゃなく、何となく【ここで死ななきゃ、一生会えない】気がしたから。
「死ぬのか?」
声が聞こえてきた。女の声だ。首を切れ、早くしろ、じゃないと――
「ダメですか?」
口から出ていた。俺の口から無意識に。救って欲しかった? なんで?
「いや? 別にダメという訳じゃないさ」
「じゃあさよなら」
「――あぁ! もうちょい待て! これから祭が始まると言うのに」
「…祭」
女は上を指さす。少し遅れて俺も上を見た。
黒い、闇の空。空に墨汁を撒いたかのように漆黒の空が上を支配していた。
声が出ない。いつの間にかガラス片を落として震えている俺がいた。
「何これ…」
「――チッ。【あの法律】が出来る前に叩きに来たか」
いつの間にか女が俺の横にいる。顔が見えない。首の上は素顔の筈なのに、霧のように顔が見えないのだ。
ただそれよりも血より赤い、トパーズのような赤い髪が俺の目を支配した。
「――逃げろ」
「え?」
「聞こえなかったか? 逃げろと言ってんだ。…来るぞ」
上から侵略者が攻めてくる。教科書で読んだことがある。昔日本と異世界が合体した時に、人間を惨殺した生命体。
名を――エルフ
それは雨のように落ちてくる。見える災害だった。
「走れ!」
女の声で俺は逃げる。走る。空から落ちてくる、意志を持った隕石から。
T字路から見える真ん中の道では、既に人が殺されている。いや――食べられている。
ぐちゃぐちゃと音を上げて人間を貪り食うエルフがそこにいた。
こちらを見られた。「ヒッ」ト声を上げてしまった。ロックオンされる。逃げなければ…!!
大きく一歩踏みしめたはずだった。右手が動かない。夢中だったからとか、そういうのじゃない。
【掴まれていた】んだ。既にエルフの手が俺の手を握る。
「止め――」
最後まで言えることなく、俺の腹にエルフの刃が刺さる。
…最初から分かっていた、逃げられないって。たとえ逃げた所で安全な場所なんてないって。
あの家族が死んだ時点で、バットエンドは決まっていたんだって――
(…生きてる?)
もう時間の感覚も分からない。俺を殺そうとしたエルフは近くから逃げ出した家族達を殺しに言ってしまった。
腹を見る。出血なんてレベルじゃない。この血なら助からないと判断したんだろう。合理的だ。
事実体は動かないし、徐々に寒くなっている。近くには燃えている家から熱が出ているはずなのに、それすらも感じられないほど、俺は死にかけだった。
「――生きてる?」
ひょこっと俺の視界に女が入る。生きてるって? 死にかけだクソが。痛いにも程がある。逆に女には傷一つ無かった。
「おぉ! 生きてるね! 凄い凄い! ても死にかけだね。これじゃあ――」
「……ない」
「ん?」
掠れる声で俺は叫んだ。結局あの時、ガラス片で首を切る時も、覚悟なんて出来ていなかったんだ。
そう、結局の所。俺は――
「死に…たくない。助けて」
「――そう。凄いね。凄い精神だ。家族全員死んで、あのエルフを見て尚君はこの世界で生き続けたいのかい? もっと幸せな世界もあるだろうに?」
「それでも…生きたい。まだ…死ぬ理由を…見つけて…無い!」
「…いいよ。助けてあげる。それじゃ――」
女は自分の腕を切る。そこから血が滴る。傷口を俺に向ける。血が俺に迫る。赤い鱗片が口に落ちていく。
「――飲んで」
喉に入る。身体を一滴の血が巡る。
なんだこれ、体が…熱い! まるでマグマを飲んだかのように、体が壊れていく。
「今私の血が君を【作り替えている】んだ。この世界でも生き残れるレベルにね。さぁ、手段は与えた。あとは運だよ。あの【法律】が設立すれば――」
女の言葉を待たずに地面が光り輝く。魔方陣のように不思議な模様がここを…いや日本を包んでいく。
そこから声が出る。
【日本の皆さん。私は【渋谷の王】です。これより私が日本を支配します。とりあえず貴女方は死にすぎなので、
なんの意味かも分からない。それでも賭けは俺の勝ちだった様だ。魔法陣から光が放たれ俺を包んでいく。
感覚的に分かる。あぁだから女は俺に【生きるか聞いてきたのか】
「――あはは! 君は本当に悪運が強いんだね! もう分かると思うけど【君は死ねない】。いや正確には
さぁ眠りな。次起きた時には私の血も君に馴染み、強くなれる。そこから更に強くなれるかは君次第だけどね。じゃあね!」
女が去る。待って欲しい。待って――
「待って…」
「ん? 何かまだある?」
「名前を」
「名前? あぁ名前ね。あぁー名乗るとかぁ。決めた【最強】。私の事は【最強】と呼んで。そして何時か私を殺しに来てくれない?」
「…何で?」
「だって、最強を殺せるのは最弱だからね。殺しに来てよ…君の名前は?」
「――暁」
「そう。待ってるからね。いつかきっと最強を殺しに来い最弱。」
女は笑う、ニヤッと。そして振り返らず消えてしまった。俺の意識もそこで途絶える。
そう、このお話は最弱が最強を殺す。この世で最も駄作の物語だ。
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