Quiz with Complex

氷雨ハレ

序章 いつかの夢、いつかのリアル

 初めて見たクイズは、画面の向こうにあった。


 点滅するボタン、けたたましく鳴る正解の音、そして、一喜一憂するクイズプレイヤー達。


 今、それらは私と同じ空気を吸っていた。






問題




1950年代からフランスで始まった新しい映画——






 会場内にボタンの音が響く。私が押したボタンだ。


 さっきまで読まれていた問題を整理する。大丈夫、私なら出来る、そう言い聞かせながら考える。


 フランス、映画、新しい……「新しい波」、そうだ、フランス語で「新しい波」だ。


 そう、答えは——




「ヌーベルバーグ」




 静寂。永遠とも言える静寂が弾き出した答えは——『正解』




「よっしゃぁ!」


「橘君静かに」


「おっと、すまんすまん」


「……」




 会場で鳴り響く拍手、歓声。そっか、クイズってこんなに楽しいんだ。


 司会が問題を読み上げる。






問題


1950年代からフランスで始まった新しい映画運動のことを、フランス語で「新しい波」という意味の言葉で何というでしょう?


解答


ヌーベルバーグ






 会場は一喜一憂。私みたいに喜んでいる人もいれば、後悔を叫ぶ人、応援をする人。多種多様だった。


 安心する間もなく次の問題が出題される。手に汗を握る。油断大敵、緊張が会場を包む。




 これは私とクイズの話である。

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