黒いスピリタス

@agi_minato

プロローグ.女

誰だって恋したいお年頃の、ちょっとした好奇心だった。


小さくて幼くて、まだ穢れの知らない恋心に煙草の灰が落ちてきた。灰の残り火がついただけだと思う。ほんの数ミリ。

それが、あっという間に燃え広がって、私を中心にして火を大きくしていった。

身体に収まるべくして小さかったはずの恋の火は、自分独りだけでは決して抑えきれない程に成長していってしまった。

でもその炎はとてもやさしかった。私を燃やしているはずなのに、この世界のどこよりも温かくて、私を必要としてくれて、そっと包み込んでくれた。


私が炎の中心なのに、ここから出て行ってしまったら、この炎は消えて無くなってしまう。だから、どこにも行きたくない。だって、この炎は私達を表しているから。

貴方と一緒にいたいから。


この場所で燃え尽きる。

灰になる。

それが運命。

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