平凡な俺と二度目の言葉

 少し歩いてマックで昼食を取る。

 注文をして、席を探す。

 日曜日で混んでいるが、少し早い時間だったこともあり、なんとか座る事が出来た。

 俺はチーズバーガーのセット、上水流さんはビッグマックのセットだ。


「あ……」


 そこで俺は見つけてしまった。

 上水流さんの、後ろである。

 彼女の後ろで、着席して何かのバーガーを食べているルナを見つけてしまったのだ。

 ルナは前回と同じように帽子にサングラス、マスクをしていたのだが、帽子もサングラスも前回のものとは違う。

 ルナは俺の視線に気が付くと手を振って来る。上水流さんの後ろに座ったのはわざとなのだろう。

 そして自分のスマホを取り出して指さした。

 スマホを見ろってことか?

 

「どうしましたか?」


 上水流さんが俺の異変に気が付いたようだ。

 女子と話す時には頭のてっぺんを見ろとどこかで見たことがある。

 そうすると胸を見ていると思われないそうだ。

 しかし、今後ろのルナを見たのはそれに近い事だと思うのだけど、あっさりと視線が変なのがバレてしまったようである。

 

「いや……ちょっとスマホ見ていいか?」

「はい」


 許可を得て、スマホを見るとルナから連絡が来ていた。

 内容は、「服屋は駄目だよ。女の子はね、自分の好みの服を自分の好みのお店で買うんだから。マイナス30点!」だそうだ。

 厳しすぎる。

 ていうか行きたがったのは上水流さんなのだ、俺は悪くねえ!

 あと今見なくてもいい事だった、本当に隠れる気があるのだろうか?


「食べるか」


 俺はスマホを閉じると、律儀に待っていた上水流さんへと声をかけたのだ。


「はい!」


 上水流さんは笑顔で答えたのだ。

 

「マックに来たのは初めて……じゃないよな?」


 食べながら、念のため聞いておく。

 注文は出来ていたので平気だとは思う。選ぶのに時間がかかっていたので怪しいが。


「はい、何度かあります」


 何度か……か。俺は何度もだ。やはりいい所のお嬢様なのかもしれない。

 それから少しだけ話をしながら食事を進め、すぐに食べ終わる。

 

「さて、どこに行くか」


 ルナに減点されないところに行かなければ。

 そんなところがあるのかはわからないが。


「私はどこでも……」


 どうにも上水流さんは消極的というか……遠慮をしている感じである。

 友達を作るなら、もう一歩踏み込むべきだろう。 


 それは、別に今感じた事ではない。

 ずっと考えていたのだ。

 DEAにきた相談として、俺がどうするべきかを。


「友達ってさ、好きな事を言い合えるもんだと思うんだ。俺達が友達なら、遠慮しないで好きな事を言っていいんじゃないか?」


 だから俺は言ったのだ。

 言った後に後悔した。

 少し強く言い過ぎた。


「え……」


 ほら、突然の事に上水流さんは戸惑っている。

 怒ったわけではないのだが、怒られたように感じたかもしれない。


「あ、いや……わ――」

「わかりました!」


 悪かった。と言おうとしたが、その言葉は遮られた。


「え?」


 逆に俺が戸惑ってしまう。

 だが、これは意外にもいい方向に進むかもしれない。

 そう考えた矢先の事であった。

 次に上水流さんが発した言葉は、俺の予想を大きく超えた言葉だったのだ。


「私もDEAに入れてください!」

「え……」


 この台詞を聞くのは二度目である。

 そして、俺は一度目と同じように大きく動揺したのだ。

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