白城

海星

白城

第1話 白闇

――――――遠くから靴音が近づく。


白い空間の白いソファに座って頭をもたれさせて、天を仰いでいると女性に声をかけられた。


「来てたんだ」

「うん」

「なんかあった?」


その人は静かに僕の隣に座る。


「…侑海」

「うん?」

「行きたいとこある?」

「特に。」

「ここに来た目的は?」

「匂い」

「匂い?」

「……お前の匂い。」

「あぁ…。」


その女性は僕の膝の上に乗って僕を包み込んだ。


「瑠花…」

「うん?」

「ずっとこうしててよ」

「いいよ。」


甘くて優しい匂い…。

この匂いが僕をいつも救ってくれていた。



「ねぇ…」

「うん?」

「瑠花はこの世界の女神なの?」

「そんなに偉くない」

「でも人消せたりドア開けれたり、凄いこといっぱい。」

「それはあんたも咲さんも出来るでしょ。やらないだけで沙耶さんもできる。」

「俺と咲は腹が立つと手が先に出るから。」

「そうね。だからちょっと『黙ってて』ってことなんだろうね。」


「さあやはなんであんな平和的なの?」

「あの子は多分…いや、あんた達が喧嘩っ早いだけじゃない?よく喧嘩しないよね。」

「うん?うん…咲さんがいっつも我慢してる。だから『ごめんね』っていつも思ってる。」


「咲に会いたい?」

「いつだって会いたいよ。けど…」

「けど?」

「離れられなくなるし甘えすぎる。だからあいつに甘えさせてあげられなくなる。甘えさせてあげたいのに俺ばっか甘えてくっついて迷惑ばっかかける。。だから…俺なんか居ない方がいい。」



『本っ当にムカつく。そういう所嫌い。素直に甘えてりゃいいのに!』


白闇の向こうから咲が歩いてきた。

僕は思わず、体が動いた。


早足で咲の所に行って咲を抱きしめた。


「素直じゃないあんたは嫌い。」


咲は僕の目を見てはっきりと言った。


「……咲さん大好き。お願い。ずっとずっと甘えさせて。もう母親とかそんなのもうどうでもいい。俺、、咲さんじゃないと嫌。咲さんの傍から離れたくない。」


咲は僕を見て微笑んだ。


「バカ…。あんたはそれでいいの。」


でもその直後、白闇の中に咲が消えた。


「咲!?…咲!?……」

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