その18の2



「何なんですか?


 そのドゥエルランキングってのは」



 そのカイムの疑問にアルベルトが答えた。



「新聞部が作っている


 学校非公認のランキングのことだ。


 生徒の戦闘能力を総合的に格付けして


 勝手に順位をつけている。


 ……あまり趣味が良いものとは言えんな」



「なるほど。


 俺は転校してきたばっかりだから


 きっと最下位でしょうね。


 そもそもランキングに名前が無いかも」



「どうかな?」



 ヨハンが口を開いた。



「え?」



「ラッキーとはいえ、


 ジュリエットちゃんに勝ったんでしょ?


 ジュリエットちゃんは2年生にして


 ランキング9位の猛者だからね。


 目ざとい新聞部が


 ジュリエットちゃんの決闘を


 見逃すとは思えないし……。


 明日になったら


 ジュリエットちゃんを蹴落として


 キミが9位にランクインしている可能性も


 無くは無いと思うよ」



「えぇ……。


 なんとかなりませんかね?


 王家の圧力とかで」



「おまえは王家を何だと思ってるんだ」



「嫌なのか?


 ランキングで上位になるのが」



 マックスがカイムに疑問を向けた。



「身の丈に合わないのはちょっと……」



 実際にはカイムは、ただ目立ちたくないだけだ。



 地味に過ごしていた方が、スパイとしてはやりやすいだろうから。



 ……手遅れかもしれないが。



 だがそんな事情をマックスに話すわけにはいかない。



 そう思ったカイムは、本心を偽ってみせた。



「だったらそれに見合うくらいに強くなれ。


 それが男ってもんだろ」



(マッチョな人だなあ)



「がんばりまーす。


 ちなみに……先輩たちのランキングは


 どんなものなんですか?」



「ぼくは18位だね」



 ヨハンがそう答えると、次にマックスが笑みを浮かべてこう言った。



「ふふふ。俺は5位だ。


 何か困ったことが有れば俺を頼れよ。


 ランキング5位の俺をな」



 マックスの笑みは誇らしげだ。



 順位に拘るタイプなのだろうか。



「はい。ヴィルフ先輩は?」



「2位だ」



 アルベルトはそっけなく答えた。



 彼は生徒の中では2番目の実力者らしい。



 だがアルベルトからは、それを誇った様子は感じられなかった。



 本心からランキングに興味を持っていないようだ。



「なるほど……」



(学生にしては強いわけだ。


 けど、ヴィルフ先輩でも2位なのか)



 アルベルトの実力は、カイムの想像を超えていた。



 彼ならプロの世界でも、それなりに通用するだろう。



 そう思うくらいには、カイムはアルベルトを評価していた。



 そんな彼よりも上の生徒が居るらしい。



 その事実は、カイムを少しだけ驚かせた。



(1位はどんだけなんだ?)



「驚いたか?」



 まるで自分のことを自慢しているかのように、マックスがそう言った。



「まあ、おまえもアルが目をつけるほどの男だ。


 3年になるころには


 俺たちのちょっと下くらいにはなってるさ。


 そうだよな? アル」



「……かもな」



 もう負けた。



 そう言うわけにもいかないアルベルトは、小さめの声でそう言った。



「ところで……。


 ちょっと伺いたい事が有るんですが……」



「何だ? 強くなる秘訣か?」



 カイムを自分より弱いと思っているマックスが、見当外れにそう言った。



「いえ。


 ルイーズ=レオハルト皇女に関して


 知っていることを


 教えていただきたいのですが……」



「おまえ……レオハルトさん狙いなのか?


 チャレンジャーだな……」



 マックスがそう言ってきた。



 どうやら恋の話だと思われたらしい。



「えっ? カイムくんは


 ジュリエットちゃんの事が好きなんじゃないの?」



 ヨハンは驚いた様子を見せた。



 ジュリエットとのデートのために、カイムは彼女と決闘をした。



 そこまでするということは、当然にジュリエットのことが好きなのだろう。



 彼はそんなふうに思っていたのだろう。



「好きとか嫌いとかじゃ無いです」



「有るよな。


 周りの奴らが良いって言ってるから


 とりあえず自分も告っとくかみたいなノリ」



「違いますから」

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