第3話 捜索
この私自身が、あの狂気のユーチューブの犯人扱いされて、この、私の気分は最悪であった。
しかし、警視庁がそう思うのも、理解できたのだ。
一体、何処の誰が、私の愚作『狂気のユーチューバーⅠ:一年後、僕は、愛犬を食べます』を読んだのだろう。そして、どうして、あのような異常な行動に出たのか?
私は、「カクヨム」で、知り合った知人もいるが、共に、詩人、及び、推理小説で天才的な人物だけである。
二人とも天才的な人物だけに、そのような危険な行為を犯す筈が、絶対無いのだ。このまま、「カクヨム」で頑張れば、書籍化や、メジャーデビューは、直ぐ、そこにまで来ている二人だからなのだ。
何で、危険な橋を渡る必要があるのであろうか?
ここで、最大の問題は、一体、何処の誰が、では、この私の駄作の小説『狂気のユーチューバーⅠ:一年後、僕は、愛犬を食べます』を読んだのだ?そして、あのような狂気に近い動画を、UPしたのであろうか?
しかし、直ぐに、警視庁から、連絡はあった。
どうも、例の男とは、大阪のミナミにある、ネット・カフェから、フラッシュ・メモリーを持ち込み、そこで、ユーチューブをUPし、その後、即、削除している。
「○○さん、これは、誠に、不思議な話ですね。
本気で、ユーチューブでお金を稼ぐには、最低でも、数十万件ぐらいの閲覧が無いとスポンサーは付きません。で、この動画の閲覧数は、わずか五百件にも満たない402件で、ユーチューブの動画は削除されています。しかも、見る人にとっても危険な画面なら、ユーチューブ側で削除されます。この男が入店したのは、午前10時11分、退店したのは、11時15分です。このわずか一時間のみの動画UPだったのです。これでは、本気で、お金稼ぎが目的だったのでしょうか?」
「と言われると、警察では、どう見ているのです?」
「例のネット・カフェも既に突き止めてあります。しかし、この男の目的が、全く不明です。事前に、○○さんに、誰かから、この時間帯に、そのような題名の、ユーチューブを見ろと言う連絡はあったのですか?」
「これが、不思議なのです。全くありませんでした」
「では、○○さんが、この動画を発見したのは、偶然の一致だと言われるのですね?」
「そうです、まさか、私の小説の題名を真似る人間が、出てくるなどは、思いもしませんでしたが、妙に、気になり、似たような文字を検索していたら、偶然、ヒットしたのです」
「では、この○○さんの小説を知っていて、○○さんに、恨みを持っている人間は、誰か思い当たりませんか?」
「全く、無いです」
「そう言い切って、私は、電話を切った」
そして、再度、例の動画を見直してみた。
これは、明らかに計画的な犯行だと、分かった。
何故なら大きな包丁を、バスン!と、振り下ろされたその下には、青いブルーシートが敷いてあるのが分かるのだ。これは、その後、このブルーシートをキチンと処分すれば、血だらけの床等の証拠が簡単に処分できるのを想定したのに違い無いのだ。
しかし、このようなユーチューブの動画を瞬間的に流して、一体、何の得になるのであろうか?
「純粋に、犯罪心理学的に考えれば、自分の犯罪を、ほんの少しだけ、自慢したかったものと考えられるのだが……、ただ、それは理解出来なくも無いが、何でここに私の下手な小説が出てくるのであろう?」、この一点が分からない限り、この謎は、警察ですら解けないであろう。
私は、推理小説世界一と言われる、アガサクリスティの『そして誰もいなくなった』を思い出した。
登場人物が全員死亡して「そして誰もいなくなった」と言いながら、本当の真犯人は、あまりに完璧な完全犯罪だっため、自分から、ロンドン警視庁に、謎解きの手紙を出して、この謎を解決しているのだ。
この私は、気分が悪くなった。
確かに、私が投稿している「カクヨム」には、今までに既に約100万編弱に近い数の小説や、誌、エッセイ等が投稿されているのだ。数学的確率論によれば、私の愚作にヒットする確率は、1,000,000編分の1×300PV=つまり0.03%なのだ。この確率では、私の小説にヒットする事は、ほぼ不可能なのである。
ああ、本当に分からない!!!
しかし、事実、そのようなキチガイじみた動画が、UPされた事だけは、事実である。
近いうちに、幼児殺害事件の犯人が捕まるのであろうか?もし、誰も、捕まら無かったら、結局、迷宮入りになって、しまわないのか?
せめて、アガサクリスティの『そして誰もいなくなった』の小説のように、真犯人が名乗り出てくれればよいのだが……その、可能性は、ほぼ、不可能だろう。
ここで、警視庁サイバー犯罪対策課の新たな動きが、私に、連絡があった。
あまり詳しい事は言えないがと前置きされて、実は、殺人を扱う捜査一課に相談したものの、この動画があまりに、「上手く」作られている事から、この動画自体が、故意的に作成された物ではないのか?と、言う意見が強かったと言うのである。
かって、警官の前で、ワザと、透明な袋とその中には砂糖が入っている物を落とし、ダッシュで逃げた人間がいた。当然、警官が後を追いかけたのだが、何と、その一連の行動を、別の人間が撮影したと言う事件があった。これも、実はユーチューブがらみで、単に登録者数を増やすために、そのような行動を、取ったのである。
この男は、その後、「偽計業務妨害罪」に問われた筈だ。警視庁捜査一課の刑事は、直接に幼児が殺害されている場面が全く映って無い事、編集も主演者の声が音声変換器で変更してあるなど、相当に高度な技術が使われている事から、トリック動画で無いか?との意見が多かったと言うのである。
しかし、では、一体、何処の誰が、かような動画を作ったのか?
仮に、この動画が、本物の幼児殺害では無くて、百歩譲って、トリック撮影だったとしても、結局、この私のみが、迷惑を被る事は、間違い無いでは無いか。
一体、何処の何奴だ?この私を、陥れようとしている人間は?
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