POETRY
葱と落花生
詩のつもり まったりのんびり何気なく、時々イラッ! っと。 っと。
1
季節 解説
たった一人でいても季節は流れてゆく。
どんなに拒んでも、季節は流れる。
いつだってそうだ。
人の気持なんか関係ない。
そんな奴なんだよ季節って奴は。
『季節』
季節だけが、過ぎてゆく。
心は眠ったままで。
話して下さい、どう生きればいいのか。
今はもう何もかもが、色あせてしまっている。
君の事だけじゃなくて、生きる事の意味でさえ、判らないんだ。
信じられるものが欲しい。
誕生日には、赤い花とおめでとうのカード。
君は何も話さないけど、 何かを話しかけてほしい。
昨日の夢のつづきでもいいから。
季節だけが、過ぎてゆく。
心は眠ったままで。
2
逃げた飼育係 解説 只今捜索中です
短すぎるから何処におけばいいのかわからないから、とりあえずここに置いておきます。
『どこへ逃げたんだ』
イルカの水槽にサメが紛れ込んで大騒ぎになった。
サメの飼育係が水槽の仕切りを入れ忘れたのが原因だ。
このチョンボ飼育員。
サメの水槽横に長靴を片方だけ残して、サメに餌もあげずに行方をくらましている。
誰も君を責めないから帰ってこい。
サメのエサ食いが悪いんだよ。
治せるのは君だけだ。
何か変な物でも食ったのか?
3
モグラの恋 解説
モグラは卵で子供を産むと思っていた。
それはカモノハシだった。
あっという間に読んで終わる詩。
短か過ぎる程に短い詩。
短いだけがとりえの詩。
これを読む暇があったら、それより先に読んだ方が早いほどに短い詩。
読まなくてもいい、広げるだけでもいい詩。
心に残らないかもしれない詩。
星を見る度に思い出してしまうかもしれない詩。
『モグラの恋』
ある晩、モグラが星に恋をしました。
とっても、とっても、星を愛したのです。
毎晩、何日も何日も、モグラは、星に語り掛けました。
でも、星はただ瞬くだけ。
それでも、モグラは星を見ていました。
でも、星は黙っているだけ。
「ねえ、どうして何も言ってくれないの」
モグラは星に聞きました。
でも、星は揺らいでいるだけ。
ある朝、モグラはもう二度と動きませんでした。
遠い遠い空の、星に会いに行ってしまったから。
4
ガラスの靴 解説
彼女は王子様とは一緒にならなかったんだよ。
賢い選択だろ。
周りの女子共は皆いい男の方ばかり向いていた頃に書いた詩だったと記憶している。
いっくらあいつが良い男だって一夫一婦制の日本じゃ誰にも可能性は無いと言ってやりたかった。
絶対に傷つくのが判っていてもキャーキャーやりたい時期ってあるんだよな。
若いから大馬鹿タレなのか、大馬鹿タレだから若いのか。
後者ならば俺もまだ十代なんだけどなあ~。
『ガラスの靴』
波打ち際にガラスの靴一つ。
シンデレラの忘れ物。
波に打たれて、砂に削られて。
王子様は気づかない。
どんどん小さくなって行く。
波打ち際にガラスの靴一つ。
私は眺めているだけ。
波にいじめられ、砂に打ちのめされ。
王子様は拾いに来ない。
もうただのガラス玉。
波打ち際にガラスの靴一つ。
王子様が拾ってくれた。
両手に包み、そっと覗き込む。
ガラス玉の中、映ってる。
シンデレラが、映ってる。
水晶玉じゃなくても見えるんだ。
村のパン屋と結婚し、幸せな笑顔のシンデレラ。
王子様はそっとガラス玉を砂の中。
波に打たれ、砂に削られ。
ガラスの靴は砂になる。
キラキラ光る砂になる。
私に一粒くださいな。
キラキラ光る砂の粒。
5
春 解説
誰だってこんな気分になる時がやって来る
十数年前にYouTubeにアップしたオーケストラ曲。
初音ミクに歌わせた作品。
その曲に後から付けた歌詞。
詩として変な所は曲に合わせた為。
いたしかたない。
リンク付けがわからなかったのだが、、、
https://www.youtube.com/watch?v=9rAaiUaclW0
オーケストラは総てパソコンで作った楽器によるもの。
YouTubeでは『野良あおい』の登録となっている。
『春』
揺らぐ岸辺の菜花、真白き舞う蝶。
光映りし水面、たゆまなき流れ。
まどろみ想いはせし、幼き頃の君が戯れし姿。
我が愛しき人。
今君がはらからは集いて君を偲びつつ、幼子に帰りてこの岸辺に座る。
遙かに旅立ち永久となりたる君との時に、光の流れさえ忘れる。
我は心穏やかに、今に生きる。
頬をつたいし雫、めくるめく想い。
何時か君の世に逝き、君に会えし日は、去りたる後の我の切なき日々を、総て告げたる後に君を蹴り飛ばす。
怒りあらわにしたる君の目に流るる物が、再開に喜ぶ嬉しき思いから流るる雫であれと願いながらも、痛さのあまり流したとても、我はいささかも君に謝る気持など無い。
6
黒い雨 解説
業火に消滅した者はまだ良かった。
原爆投下のイメージ。
十代の頃の作品。
幼稚だが、純粋だった時もある。
『黒い雨』
黒い雨との出会いに怯えている。
河は水を失い、人は果て無き灰と、無機質に溶け爛れた世界をさまよう。
烈火に総ては灰となり、風に吹かれ舞い上がる。
もはや、飢えも痛みも無い。
衣服とも皮膚ともつかぬボロボロの体を支え、足を引き摺り歩く人々。
水を求め、河に池に。
そこにあるのは、力尽き果てし者の亡骸。
河は埋め尽くされ。
池は埋め尽くされ。
異臭を放つ。
人々はそれさえかき分け水を求める。
街は、一瞬の光に包まれ消え失せた。
人も犬も猫も、草も木も花も、家も神も悪魔も。
熱波は、何もかも飲み込み、吹き飛ばし消し去った。
さまよう者は己の生を感じない。
地獄に突き落とされたと思いこむ。
この世と思えぬ修羅の絵に、もはやなす術など無い。
暑さに狂った頭を抱え、時計の針を眺めると、時はゆがみ、辺りにうごめく兵士は死肉をあさる。
幾百万の魂が、平和の為の生け贄と成りてもなお。
安らぎの世を見せてくれぬのは、天の所業か地の所業
人の所業であるのなら、人こそ真に地の底よりいでし者。
己を己が裁き、地上より失せるが定め。
己の魂、百億でも食らうがいい。
7
船乗り 解説
余計な事考えないで飲んで食って寝てられたらいいんだけどな~。
ロッドスチュアートを御存知か。
レッドツェッペリンを御存知か。
知らねえだろうな。
知らなくたっていいよ。
こんな感じの事言った人達だ。
なにがしかの音が一緒だといいのだが。
波の音がいいかもしれない。
何か発見が在るかも知れない。
『船乗り』
覚えてるか、港の夕日を。
いつも、いつでも、船を出して魚獲り。
疲れ果てて、帰って酒を飲む。
そんな毎日の繰り返しがいやになり、一度は街を出てみたけど。
やっぱりおれは、船が好きで。
海が好きで。
今でも、覚えていてくれるか、俺のこと。
海の朝日は、海の風は、港の灯台は。
疲れ果てて、帰って酒を飲む。
港外れの飲み屋が忘れられなくて。
一度は街を出てみたけれど。
やっぱり俺は、船が好きで。
海が好きで。
人生なんて、大洋に浮かぶ棒っ切れ。
浮いて、沈んで、波にもまれて、カモメが乗って一休み。
流れ着く岸辺は、必ずこの街。
こんな港の何処がいいんだか。
友を飲み込んで連れていった海。
そんな奴の何処がいいんだか。
それでも。
やっぱり俺は、船が好きで。
海が好きで。
帰ってくる。
何度も、出て行ったり、帰って来たり。
岸に打ち寄せる波の様に。
俺は船乗り、海で生きるだけ。
俺は棒っ切れ、海に漂うだけ。
それでも。
やっぱり俺は、船が好きで。
海が好きで。
8
あうん 解説
【あ】開かれた宇宙【ん】閉じた宇宙。
そう信じて生きて来た。
【あ】で始まり【ん】で終える。
原点の再発見。
『あうん』
あの世この世は一人旅
いつも変わらぬ人の性
怨みつらみを書き綴る
絵巻物にもよく似たり
老いさらばえて朽ち果てる
変わりゆく身の無情かな
消えては映り朦朧と
苦行の果てに浮かぶ夢
実に恐ろしき鬼となり
世の理不尽を焼き食らう
最後の言葉も残せずに
死して屍を野に晒す
好きで生まれたわけじゃない
世間様には嫌われる
俗悪人非の過去しょって
退凡下乗世の習い
知恵に溺れる下乗人
月に看取られ床に伏し
天の恵みの縁遠さ
とうにこの世は闇の中
泣いてばかりでその挙げ句
憎む事さえつい忘れ
縫懸鞘の人切り刃
猫が手頃と戯れる
残る力の微弱さに
廃家となりし故郷を
人目忍びて後にする
不実と叫ぶ事あらば
奇人となされ声虚ろ
仏心が仇となり
魔物ばかりが生き残る
見えては消える陽炎の
無味荒涼に映る影
冥途土産の供え物
持って逃げ出す罰当たり
痩せさらばえし餓鬼となり
生きてこの世を彷徨うて
行き方知らぬ冥府道
縁を貫き心中の
黄泉へ手向けし野辺の花
来世未来を語るれば
倫理叶わぬ腐源郷
流浪極貧数知れず
列を作るは修羅の群れ
ろくな死に方出来ない奴に
分けてやりたや六文を
何時の世にせよ変わらぬは
怨む相手のしぶとさと
絵に描く餅の多き事
鬼の面体曝け出し
落ちて行く日の渡し銭
9
兵士 解説
何時に成ったら帰えれる。
戦いたくてこの国に産れたんじゃない。
戦った国が無いほどに戦争が好きな国がある。
そんな国の中で世代を代表するメッセンジャーとされたのがボブディラン。
ノーベル文学賞までとっちまった。
しかし、実際のところ彼自身はそういわれる事を迷惑に思っている。
特に強く世の中に訴えた気はないのだ。
自作の詩が勝手に解釈され、自分の言いたい事とは全く違う詩になっちまったらしい。
詩とはとかくこんな物さ。
解釈でどうにでもなる。
ノストラダムスの四行詩を見ろ。
大予言になっちまってるぞ。
『兵士』
どれだけの命を捧げれば神に伝わるのだろう。
僕はただ、故郷の村に帰りたいだけ。
おばあちゃんの作ってくれる、パンプキンパイが食べたいだけ。
どれだけの血を流せば、帰してくれるのだろう。
どれだけ人を殺せば、帰してくれるのだろう。
僕はただ、公園を散歩したいだけ。
僕はただ、彼女に会いたいだけ。
何時になったら、終わるのだろう。
誰の為に戦っているの。
何時になったら、判ってくれるのだろう。
人は愚かで身勝手な生き物だと。
何時になったら、教えてくれるのだろう。
何処に向かって歩けばいいのか。
地球と言う鳥かごの中のペット。
僕達は互いに殺し合う神のペット。
ときには可愛がられ、飽きられ。
何千年も眺められているだけの、籠の鳥。
どれだけ歌い続ければ、判ってくれる。
どれだけ歌いつづければ、一緒に歌える。
僕達の想いを邪魔しているのは誰。
僕達の自由を縛り付けているのは何。
どれだけ叫び続ければ、この声が届くの。
どれだけ傷つけば、許してもらえるの。
僕はただ、麦畑を耕したいだけ。
僕はただ、魚釣りをしたいだけ。
誰が僕達の願いをかなえてくれる。
誰が僕達を閉じ込めている。
10
オキナワ 解説
貴方だけが知っている真実を、何故誰にも伝えようとしない。
どれが正義の戦いだったのか。
何が真実かなんて、何時になっても解らないのかもしれない。
20代になったばかりの頃、反戦に走った。
それまでやっていたハードロックの歌詞にして叫んでいた。
でも、世の中は何も変わらなかった。
だいたい、反戦歌歌った位で変わるような世の中だったら、誰も戦争なんかしていないんだよ。
そんな簡単な答えも出せないでいた頃。
それでも走っていた。
バカな自分って・・・偉い!
『オキナワ』
遠くからの呼び声にうなされて、街に出て視る。
密やかに人々が話すのは、貴方自身におきた哀話。
嵐の夜を貴方は、いまだ忘れられないのか。
それとも、数知れぬ人々の涙をあざけり笑っているのだろうか。
狂ってしまった街。
狂ってしまった人々。
流された血の波に、砕かれ崩れ落ちてゆく愛。
言うまい。
貴方達は判っているはずだから。
忘れてはいけない言葉を。
オキナワ。
11
国境の橋 解説
時代が変わったから、この詩は消されない。
命も消されない。
イマジンという歌がある。
作者は殺された。
でも、イマジンを歌いながら壁を壊した人達がいた。
イムジン河という歌がある。
昔、日本で発売中止になったり放送禁止になったりした歌だ。
11
『国境の橋』
彼は訴える、地の底に巣くい己が意のままに生きる、邪鬼どもに。
彼は訴える、天に住まいて、人の世の愚かさをあざけりし神達に。
彼は訴える、地が割れ遥かなおぞましき地底に届くほど。
彼は訴える、天を裂き遥か神を超え宇宙の果てに届くほど。
声を枯らし、涙を枯らし、拳を掲げ、足を踏み鳴らし。
力無き者は彼と共に歌う。
権者は、それをさげすみ愚か者と言った。
人々は、それを哀れみ正気を無くしたと言う。
支配者は、彼を恐れる。
真実を知ってしまったから。
支配者は、彼を抹殺する。
歌ってはならない歌を創ったから。
そして人々は、彼の訴えに天も地も答えない、本当の理由を知った。
彼が愚かだったのではない。
支配者の意のままだった自分こそが、哀れで愚か。
人々は叫ぶ。
支配者が誰か知った時。
人々は歌う。
迷う事が無くなった時。
声を枯らし。
涙を流し。
拳を振り上げ。
真の自由を求めて。
足を踏み鳴らし歌う。
この壁を打ち壊せ。
この河に橋を架けろ。
たとえその橋が、多くの骸の橋であろうとも、人々は悲しみを乗り越える。
人は皆、引き裂かれた日々を取り返そうとする。
人は歌いながらこの橋を渡る。
喜びが彼に届くほどの大きな声で。
骸の魂を讃え、感謝を込めて。
私は渡る。
この橋を。
大声で彼の歌を歌いながら、私は心の橋を今渡る。
12
操り人形 解説
自由だと思えば思うほど、誰かに操られているようで。
十代の頃の作品ですね。
まだ右も左もわからなかったのに、右だとか左だとか。
まだまだって感じの詩です。
『操り人形』
右に行けばはみ出し者。
左にいけば嫌われ者。
恋は何時もうつろ。
雨に打たれても、冷たさが判らない。
生きているのさえ定かでは無い。
叫ぶことさえ出来ない。
操り人形。
たった一つの愛も今は、北の風にさらわれた。
ほんの少し前までは、自由でいたのに。
笑顔を奪われ、涙目のピエロ姿。
悲しみに操られ、右、左。
ただの、操り人形。
13
歩いて帰ろう 解説
歩き続けて、故郷に帰るんだ。
きっと皆が待っていてくれるから。
疲れたら休めばいいんだ。
歩き続けなくたっていいんだ。
頑張りすぎたらいけないんだよ。
誰にだって限界があるんだ。
君の限界は隣の奴とは違うんだよ。
だから立ち止まってもいいんだよ。
何時までだって待っていてくれるよ。
その時まで逃げたりしないよ。
『歩いて帰ろう』
何日歩いただろう。
荒れ果てた農地を横切り、人の居なくなってしまった町を眺め。
兎を撃っては喰らいつき、りんごを袋に詰め込む。
叱る者などもう居ない。
村人は町を捨て逃げて行った。
国境のむこうへ。
それでも私は、故郷へ帰る。
きっと、家族が待っていてくれるから。
私はそこでパンを焼く。
村の皆が喜んでくれた、ライ麦パンを焼く。
何日かかろうと、私は故郷に帰りパンを焼く。
家畜が自由に草原を走りまわる。
今は私もお前達と一緒。
誰にも止められはしない。
故郷への道を歩きつづける。
1マイル、10マイル、100マイル、1000マイル。
雪か。
皆元気にしているだろうか。
もう何ヶ月歩き続けただろう。
日の出に向って歩き続けた。
村の人が喜ぶライ麦パンを焼きたくて。
兵士は去った。
それでも、戦いは続いている。
私はパンを焼く。
兵士のためじゃない。
家族のために。
村の人のために。
だから、麦を作っていて。
もうすぐ、故郷につくから。
待っていてくれ。
もう、歩き疲れたから。
14
時 解説
友達にはなれないがきっと何時か分かり合える。
何も考えられなくなった時に言葉を羅列してみた。
時から離れられなかった。
それが良い事か悪い事か。
今となっては何だったんだろうと思う時。
きっと一生分からない時。
『時』
時は不動。
人は時の流れと共に生きていると思い込む。
人は時と時の間を通り過ぎて行くだけの風。
宇宙も時のはざまをさ迷う旅人。
時は総て。
時は永遠。
時は不動。
相対する時と光は無限の距離とただ一つの接点。
人は交差点を無意識に走り抜ける。
人は一人、宇宙は一つ、見える限りは。
何処へ行こうと勝手な事。
見えるのは見たいもの。
聞こえるのは聞きたい音。
触れるのは、時の悪戯。
奇跡はおきない。
終わりは始まり。
今は一瞬で過去。
思い出は現実。
予言は繰り返しの過去。
時は迷い道、寄り道。
まっすぐ、何処までもまっすぐ、宇宙を越えて。
次元を超えて、自分の背中を見つめる。
まっすぐなどない。
真実などない。
時などない。
次元などない。
ひとかけらの欲望。
多くの悲しみ。
多くの苦しみ。
多くの憎しみ。
独り占め。
15
取引 解説
神と悪魔はその昔、人を創るのに一つだけ取引をした。
長い年月に人間は知恵を得た。
何時しか優しさを知った。
神が禁じた知識によって、人は思いやる心を宿してしまった。
悪魔が願った残酷な心を、何処かに置き忘れてしまった。
神と悪魔が最も恐れていた事。
それは、弱き者が勝利する事。
『取引』
吹き荒れる嵐の音に怯える小鳥のように、戦火を逃れる人々はその手を合わせ祈る。
どんな祈りも聞いてはくれない、神は殺戮の悪魔と取引をした。
人間如きの唱える善も悪も、私には同じ事。
力持てる者だけが生き延びるのならば、それが人間。
力無き者が滅びるのであれば、それも人間。
人の体は神に似せて創ると決めた、魂は悪魔に似せて創ると決めた。
神と悪魔は取引をした。
そして、遥かな時の流れは悪魔の魂を持たない弱き者を産み出した。
弱き者、神にも悪魔にも見放されし人々は、何千年も戦火に焼かれ、逃げ惑い。
救いの手を持たぬ神に、助けをもとめ祈りつづける。
怒りに震えるその手を掲げて、自由を返せと、平和を返せと。
涙に曇ったその目で見る。
悪魔の魂がつけた残虐の足跡を。
虚脱と恐怖に聞く、炎の街に飲み込まれ焼き尽くされる人の叫びを。
神は人を救わない。
悪魔は人を陥れない。
己に似せた肉体と魂を永遠にするために。
神と悪魔は取引をした。
互いの複写に触れないと。
人は神。
人は悪魔。
弱き者を、神も悪魔も人とはしない。
ならば、弱き者を消し去るのは人間の務め。
神と悪魔は取引をした。
何時か取引は忘れられてしまった。
16
龍の陽 解説
太陽は無くならない。
沈んだ陽は何時か必ず昇って来る
『龍の陽』
昇った陽は必ず沈む
されど
陽は沈んでも、これからが祭
夕日を従えた神輿が龍の如く天に舞う
暗くなればなるほどに
陽の有難さが増してくる
邪気を追払え!
無邪気になって戯れろ
それこそがここぞ
それこそが本当の祭ぞ
それこそが生きる証しぞ
祭は始まったばかり
沈んだ陽がまた昇るまで無邪気を続けろ
17
グランドファンクレイルロード 解説
さてどうしたものか
自分一人で歩いて行ったって誰も救えやしない。
『グランドファンクレイルロード』
進むべき道にレールが無かったら俺は作りながら進む。
後から来る列車の為に。
そこに渡れぬ河があったなら俺は橋を造って河を渡る。
対岸で立ち往生している列車の為に。
18
ウツギ 解説
何時か解ってもらえる時がくる
今朝起きて窓の外を見ましたら、もうすぐにでも咲きそうなウツギの蕾を見つけました。
昨夜からの雨に打たれて随分と寒そうにしておりました。
花言葉は古風 風情 秘密だそうでございます。
はい。
ウオッホホホッホー!
『ウツギ』
人知れず 卯の花蕾 冷やす雨
19
揺れる 解説
アジサイは色移ろいて、しっとりと。
『紫陽花』
しとしとと 濡れる紫陽花 乱れ落ち
紫陽花は 濡れ咲き乱れ 落ちてゆく
20
いっぱい 解説
気持です。
御注ぎしますよ。
信じていれば酔えるかもしれない。
(1)
『世の中総て思い込み』
生きてるのか死んでるのか。
何処かで彷徨っているのか。
此の世も彼の世も思い込み。
呑んで食って騒いで寝ちまいましょう。
それが一番ですわ。
思い込みで呑んだ酒で酔えるなら、それはそれでいいじゃないですか。
(2)
『やきとり』
路地裏で風に吹かれて赤提灯が揺れている
一本の焼き鳥が有れば一杯の酒が美味く呑める
そのまま呑まれて路傍で寝ても誰も咎めはしない
鶏の命に串打って家族を養う人がいる
命一本いただいて呑んで管巻く馬鹿もいる
(3)
『どや街の朝』
どや街の寺前で酒瓶抱え雪に埋もれ寝てる奴がいる
酒買う金で暖ったけえ寝床と御飯食えたろ
辛く流れたどや街だけど何時か這い上がってやるって言ってたのに
一番楽な道選びやがった
ふざけんな
テメエに付き合わされた酒が可哀想じゃねえか
(4)
『立ち飲み屋』
カップの一合酒と乾き物
主の機嫌が良けりゃ誰彼かまわず振る舞い酒が出る
儲かりゃしねえ
道楽みてえな呑み屋だ
一升ビンが空に成り『ほーれ一生終わったよー』
俺の人生一升の酒よりつまらねえまま終わっちまう
(5)
『どぶろく』
先まで透けてる清酒より、先の見えねえ濁酒がいい
この先ろくでもねえ事しか待ってねえ
分かっているが見えてたんじゃ先へ行く気になれねえ
先が見えなきゃ神様の手違いで良い事があるかもしれないと思っていられるからよ
(6)
『ポケット瓶』
何時も一緒にいてくれる
寒い日辛い時は有り難い
何時でも俺は此奴に逃げている
逃げてばかりの人生の何がいけない
俺の生き方をとやかく言う前に幸運の女神に言ってくれ
あいつは何時だって俺から逃げて行きやがる
(7)
『生ビール』
うるさい居酒屋の他は覚えていない
一緒に飲めば兄弟分のヤクザな世界
生き下手なのが小便と一緒に怨み辛みを捨ててきた
酔って暴れて2人で捕まった
あいつ誰だったんだ
生ビールの泡みてえに夢一つはじけて消えた
(8)
『ハイボール』
今日は祝い事だって
それでもシャンパンなんて物は出て来ねえ
店を借りてなんてできないしグラスもないし氷も無い
だけどシャンパンみたいだろ
泡がプクプク
何の祝いか判らないけど
とにかく今日は気分がいいよ
(9)
『梅酒』
ガキの頃、梅を全部食ってぶっとばされた
でもよ、酔ってたから痛くなかった
婆ちゃんが爺ちゃんにって毎年作ってた
作ってやる相手がいなくなっても作ってた
今年は梅酒作る人もいない
今頃ぶっとばされた所が痛えよ
21
道化のクラン 解説
僕はクランが好きだ
クランが村にやって来た夏休み
『道化のクラン』
クランは道化
頬に一つ、涙の滴を描いて化粧する
クランは何でも出来る
でも一流じゃない
だから空中ブランコはブランコ乘りの仕事
ライオンには猛獣使いが命令する
クランは玉乗りができる
でもたまに落っこちる
落ちても道化だから御客さんが喜んでくれる
ライオンが暴れ出した時、道化が皆で捕まえた
猛獣使いは隠れてた
ブランコ乘りが落ちた時、道化が皆で受け止めた
受ける相手は、揺れる空中ブランコにぶら下がったまま
ボーっと下を眺めてた
道化のクランが今年もサーカスと一緒にやって来た
僕はクランに会いに行く
僕は何時か道化になる
道化のいないサーカスは寂しいから
ブランコ乘りも猛獣使いも、道化にはなれないから
僕もクランのような道化になる
クランは道化
頬に一つ、涙の滴を描いて化粧する
そうしていれば、泣かずにいられるから
22
味噌人文字、、、? 解説
ちょっと前まで本当の意味を知らなかった
味噌人文字って、31文字って意味だったのね
知らなかったのさ
(1)
『カケラ』
夏河に かけた木の実を 乗せた船 流れ付いたる 深き海原
(2)
『幽霊の浜風』
幽霊の 浜風うけて 無き性に すくいようなく 足元見えず
詠み人 陳滓草
(3)
『初詣』
初詣、ノコを小脇に、亭主待つ、鳥居倒れて、御利益初め。
※ ノコとはノコギリの事。この場合、鳥居は木製です。
御推察のとうり、亭主には高額の生命保険が掛けられていました。
勿論、受取人は亭主を待っていた奥様で御座います。
(4)
『えにし』
琴線を、言葉模様に、織る巧、出会えし文に、えにし読み解く。
23
一人 解説 遠くの近く、近くの遠く。 解った様な、解らない様な。
『川に一人』
遠くを見ていると、近くが見えなくなる。
近くを見ていると、遠くが見えない。
何を見たいのだろう、ぼんやりしていると、見えているのに。
じっと見つめていると、消えてしまって。
何だったのか。
背丈ほどに伸びた、砂糖キビ畑を通り過ぎる。
魚は涼しげに、ゆらりゆらり、川遊び。
大きな木と大きな岩が、寄り添って川の側。
川は滝を飛び降り、水しぶきをあげる。
水滴は、天空の雲と一緒になる。
日の光を反射して、キラリキラリ。
妖精、それとも魂。
川は岩を削りながら強く。
しなやかに流れ続けている。
何を探しているのだろう。
きっと川は何も探していない。
ただ流れたくて、流れているだけ。
時にゆったり、時にはしゃいで、時に暴れ、時に冷たく。
流れに意味など無い、ただ自然のままに。
生きるでもなく、死ぬでもなく。
多くの生物を育み、おごる事無く。
自分を押し付けもしなければ、嘘もつかない。
ゆったり、のんびり、はしゃいでみたり、暴れてみたり。
きっと、川は何も見ていない。
だから、魚が住める。
きっと、川は何も言わない。
だから、草木が寄り添う。
何時かは海と一緒になって、世界を支配する。
川は自分のしている事に気づいていないだろう。
私達の、感謝も悲しみも怒りも。
川は自分の想いのままに流れる。
何処へ行こうと、何処から来ようと、有るがままに。
遠くを見ると近くが見えない。
近くを見ると遠くが見えない。
何を見たいのか、判っているのに。
何も見えない。
判るのは川の音。
大きな木と大きな岩。
24
『海鳴り』
今日は何時もより海鳴が大きく聞こえます。
今日ははっきり分かります。
こんな日は脳ミソのちっちゃなアメンボが、白波の中に見え隠れ。
崩れながら立ち上がる波、海に出ては見たものの。
疲れ果てて岸にもどれないまま沈んで逝く。
嵐の季節、海水浴場で無くなった海にライフセイバーはもう居ない。
運良く釣り上げられるのは、抜け殻です。
漁船も出漁しない海、救急車のサイレンが響きます。
POETRY 葱と落花生 @azenokouji-dengaku
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