社会不適合者様
@amaiyumedake
第1話
今日、私は見知らぬ男に身体を許した。
久しぶりのこの感覚。感情。やっぱり虚しい。
空虚だった。
今年20歳を迎えたばかり。誕生日の1週間前に元彼に別れを告げられたばかり。あぁ、でも誰かに必要とされている感覚は仮初だろうとあった。
「きんも、、」
隣で寝ている男のことか、それともこんな意味のないことに無理に意味を見出している自分にか。わからないけれど言葉をこぼさずにはいられなかった。
翌日
「最近どうなの?」とLINEを打っては消した。前好きだった人に連絡をとろうとしたけど付き合った報告を受けるのはわかっていたからだ。ため息をついて昨日のことを思い出す。誰かに必要とされている感覚。今の私にはそれだけが必要だった。3年前、私は自分のことが大事にできずに、来る者拒まず去る者追わずで生きていた。その後落ち着いて出会えたのが元彼だった。彼とも結局依存して依存して妊娠して育てて堕して捨てられたけれど。
男っていつもこうだ。熱のあるうちにあることないこと都合よくいい、言ったことは何も守らず飽きたら捨てていく。今の私は群がってくる男たちを下に見て抱かれることで生きる価値を見出していた。
正直私は顔がいい。だから顔しか見ずに好きだとかなんだとかいうやつは山ほどいる。けれど、ほんとに私を好きになってくれる人はいない。仮初の世界だ。
今日もまた新しい男に会う。そこで抱かれて彼の関係は綺麗さっぱりバイバイするんだろうなと考える。彼との待ち合わせ場所に向かう途中、3年前のことを思い出していた。
3年前
私はその時じゅんという男が好きだった。私のことをよくわかってくれる人だった。頑張ってアタックをしてデートの約束をした。でもその日の夜私は彼に処女を捧げた。付き合ってもいないし半ば無理やりやられたようなものであったが私は彼が好きだったが故きちんと断ることはできなかった。当時の私はもちろん付き合っていない男女がそういった行為をするということに抵抗があったし嫌悪感も抱いていた。だがその時のことが一瞬の間だけは私にはいい思い出として残った。最悪だったことはその後じゅんには彼女がいたことを知ったことだ。
「話さなきゃいけないことがある」
彼にそう言われた時私はなんとなく悟った。
「好きな人が2人いるの?」
「彼女がいる。でもみくも好きで2人とも手放したくないし手に入れたいと思ってる。」
何を言ってるんだこいつ。そう思った。
私は苦渋の決断だったが彼と連絡を取ることをやめた。
今でも毎年年末年始にあけおめLINEはくるけれど。
私がどんな思いで連絡を絶ったのか彼は知らない。
現在
「みくちゃん?」声をかけられてビクッとした。
いつの間にか待ち合わせ場所に着いていてボーっとしていたみたいだ。私はニコッと笑顔を作って無邪気な女の子を演じる。バカだと思わせれば勝ち。バカなふりをして騙される男は自分よりもバカだ。でもそのことに男は最後まで気づかない。身体を交えたあとも。
「あ!たくやだー!」と笑顔を見せつける。
何も考えずに生きてる女に見えるように。
「はじめまして。」彼は少しはにかんだ。いい人そうだ。手を出してくるようには全く見えなかった。
なーんだ、いい人に当たっちゃったよ。今日というこの1日は最初、ただ知らない人とご飯を食べて帰るだけの1日になろうとしていた。
「じゃあ、ありがとうございました!ご馳走さまでした。また!」そう言って手を振る私の手を彼は真剣な手で取った。
「俺の家に住まない?」彼はそう言った。
「え??」
ありえない。そもそも今日会ったばかりの人に。
「なん、で、、」
言葉を詰まらせる私と言いにくそうにしている彼。
「君、このままだと死んじゃうよ」
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